狂えるスルタン

狂えるスルタン
狂えるスルタンMad Sultanと呼ばれる人物は17世紀現在もドラストール中部の「腐敗の地Rotground」に住んでいる半神です。以下はこの狂人の由来と、周囲の正気な世界の住民の関わりについての略歴です。

太陽暦1232年(第0ウェイン12年)、クエストに旅立った女神とヤーナファル公を除くトーラン市の七母神たちの防衛が破られ、カルマニア帝国の軍勢が市中に進軍しました。カルマニア軍が七母神のうちふたりを倒したとき、ティーロ・イマーラ、自らの神代の記憶を取り戻した赤の女神は守護獣たるクリムゾン・バットに騎乗し、俗界に戻ってきたのです。

このときの女神の啓発の力、(もしくは混沌の歪曲力)により第七の魂に目覚めた者は多く、その中にはまた衝撃に耐えられず《閉塞occlusion》に陥った者を数多く含んでいました。ひとりが狂えるスルタンです。

(彼が女神の陣営の側だったか、カルマニア軍側だったのかは不明です。両軍とも数多くが永久的な狂気に陥りましたし、その後は前どちらに属していたのかは問題にならなくなりました)

この戦いを女神の陣営は「帰還の戦いBattle of Reparture」と呼び、それ以外の国家は「第一次混沌大戦First Battle of Chaos」と呼びました。

狂人たちの群れは集団となって放浪し、30年前後ペローリアとペントの国境地帯、ジャーストとガースティングを荒らし回りました。太陽暦1262年(第1ウェイン15年)、被害を食い止め、魔術で狂人たちを封印したのがイムサーの放浪者、名をジャニソールと呼ぶ英雄であり、このときの出来事は星座にも影響を与えました。(注1)

ジャニソールが用いた魔術により、狂人たちの群れはジョード山脈とイムサー山脈の間にあるトルクという地域(注2)に結界で封じられ、ジャニソールの名声を大いに高めました。彼が反帝国の諸勢力を糾合できたのもこのときの功績によるものでした。

しかしこの時、ジャニソールが造った結界は不可視であり、状況に応じて伸縮し、変化の速度は時に危険なまでに速くなるものでした。このことが後に災いとなりました。

第4ウェイン(太陽暦1400年代)にルナー帝国はふたたび外敵による危機にありました。中部地方はシェン・セレリス率いるペントの軍勢に蹂躙され、南部はターシュの双子王朝があくまで帝国を認めず、聖戦を「混沌の」帝国に対して仕掛けていました。このとき、赤の皇帝はシェンに領内を追跡される逃亡者であり、ターシュ王オライオスも軍を率いて北に進軍していました。

1448年(資料によっては1449年、第4ウェイン40年)ターシュ軍が結界の速度と広がりを見誤り、結界を破ってしまった理由は不明です。(しかしこの不幸な事故により、オライオスは「痴愚王」と呼ばれるようになりました。王は殺され、ターシュは指導者を失って内乱に陥ったからです。)

赤の皇帝はこの事故を機会と捉え、敢えて狂人たちに身をさらし、殺されて転生し、シェン・セレリスの手を逃れたのです。シェンは犠牲を払って1453年には南方に狂人の群れを追い払いました。この時以来、諸国を荒らし回る狂人たちの主君は「狂えるスルタン」となりました。

狂人たちの群れはラクレーン地方に入り込み、アーナンドル市を破壊し、住民達を喰らいました。このときの破壊は「道化の軍」の活躍によって食い止められました。「道化の軍」は「ボボの」ジョジョというトリックスターの司祭によって率いられていました。「道化の軍」は数年かけて準備し、「幻惑の宴」に狂えるスルタンを招きました。

そのままトリックスターたちは荷船に狂人たちを乗せてエリンフラース川を遡行し、ドラストールへと彼らを導いたのです。狂気のスルタンとその従属民はそのままドラストールの「腐敗の地」に住み着き、今日もそこを支配しています。

Drastor: Land of Doomに記載されている「狂える」スルタンの能力値は以下の通り:

狂えるスルタンは「灰色肌」(注3)の統治者です。彼はドラストールの王を自称しており、自分の王国が繁栄し、豊かな場所であると信じています。明らかに彼は完全に狂っており、どんな出来事に対する反応も予測が付きません。彼は完全な鉄の全身鎧を着ており、彼のシミターと鎌と大斧も鋼鉄です。

スルタンは首の短いブロントサウルスの背中に付いている掘っ立て小屋に乗っています。彼の護衛たちは同乗しているか、ブロントザウルスのわき腹の台にいます。「灰色肌」の群集がつねに周りを走り回っていてブロントザウルスにえさをあげています。武装した者が常に真剣にかつ力を持って、恐竜の周囲に番兵として立っていて、行儀よく振舞わせるため縛られて、奴隷化されたブルーの群れを連れています。スルタンは常に愛する臣民である「灰色肌」を害する者であると判断した者を攻撃します。

STR 27
CON 21
SIZ 21
INT 7
POW (直近の聖祝期の二週目の「荒の日」に連れていた「灰色肌」の人数の二倍。2d100で決定。)
DEX 20
APP 11
移動 3
HP 21
FP 48
MP (季節の最初の日に連れていた「灰色肌」の人数の二倍。2d100で決定。)

シミター SR3 262%/260% 1D6+2+2D6 15
鎌 SR4 255%/260% 1D6+2D6 9
大斧 SR2 235%/245% 2D6+2+2D6 15
混合弓 SR1/5/9 195%/50% 1D8+1 7

《以下略》


注1:この時の星辰の動きについてはGlorious Reascent of Yelm p.87を参照してください。Jannisorについては非公式にHarald SmithがNew Lolon Gospelという同人誌に数多く書いており、いくつかの設定は公式に採用されたようです。

注2:Entekosiad 84ページによると、もともとはジョード山脈とイムサー山脈はひとつであり、そもそもトルクの地ができたのは混沌の群れが「破壊の道Path of Scourge」の道程で山を溶かしたからであるということです。

注3:Grayskins、狂えるスルタンに従った狂人たちの末裔。知性の低い半人間であり、混沌の犠牲者であるが媒介者ではない。「ウロックスの狂戦士たちすら殺すにしても哀れみをもって殺すのであり、怒りから殺すのではない」とのことです。