ゼオタームの対話集

以下はMoon Design公式サイトにあるXeotam Dialoguesの記事の翻訳です。訳の間違いの責任はZebにあります。アスタリスク(*)の箇所は訳注です。

ゼオタームの対話集

グローランサファンの皆さん!

今日の記事は貴重なもの-ゼオタームの対話集の断片である。対話は第三期の後期に西方の魔道師たちに非常に好評を博した。

対話の原本の日付は1480年ごろと信じられている。しかしこの特定の写本は1618年のものである。対話は達人の魔道師であるゼオタームと、彼のラリオス人の若い弟子アーノール(*1)の間で行われた。

三つの都市(アジロス、ダンク、アーンロール)が元々の対話が行われた場所であることを喧伝している。ゼオタームが15世紀後半にこれらの都市に(もしくは付近に)住んでいたからである。最高導師(*2)セオブランクはこれらの対話の写本を収集していることで知られる。(対話はセオブランクが若いときにはじめて人気が出たのである)

ゼオタームの対話集

アーモールが最初に学んだのは自分の精神を制御することであり、いかに自分の身体を構成する元素の種類に焦点を当て、集中を外の宇宙に拡張することであった。そして元素への制御を意志の支配下に保つことであった。アーモールはこれらの仕事が難しく、訓練の終盤まで来ても集中し、元素の制御を保つのに魔力の護符の助けを必要とすることが分かった。

訓練のこの局面は制御していた元素が、低級な人間に信仰されている神々であることを学ぶまで終わらなかった。アーモールは元素のこと、すなわち元素そのものと同一のもので造られている神々について学んだ。:ヒメール(*3)、寒気の神。ナカーラ(*4)、暗黒の女神。スラマック(*5)、水の神。ガータ(*6)、大地の女神。ズレッサス(*7)、天空の神。ローディク(*8)、火の神。

アーモールが後に学んだことは、定命の者が元素を完全に制御することは望み得ないことであり、そうしようとすることはその元素と同一のものになることを意味するということだった。アーモールの導師はある種の蛮族の妖術師はまさにそういうことを試みて、神々の奴隷となるに至ったと言った。

その代わりふさわしい振る舞いをする魔道師は元素の低位の神のひとりである、元素そのものというよりその一部であるスルビュアリ(*9)を制御するのである。スルビュアリが親である元素そのものより有用である理由はこの事実に由来する。全体のほんの一部であることにより、スルビュアリのそれぞれはある一面において特色を持っている。したがって、ナカーラは地上界の上下の暗黒であるにも関わらず、魔道師は夜の暗黒たるスルビュアリのゼンサを呼び出して夜間の目的に使役することができるのである。

ひとつの相に特化していることで、スルビュアリは特定の起源に依存してはいるものの、独自の行動を取ることが可能になっており、有用性が増す。したがってヴィエルトル(*10)は火のスルビュアリであるものの、彼は神々の鍛冶師でもある。各々の元素に個有種のスルビュアリがいる:暗黒のデイホーリ(*11)。冷気のホールリ(*12)。水のトリオリーニ(*13)。大地のリキティ(*14)。天空のワンボーリ(*15)。火のプロマルティ(*16)。

しかしアーモールは元素とは諸力なくしては不活性の質量にすぎないことを学んだ。力の神々とは世界の様々な活動を制御している神々である。愛と豊穣の女神であるティルンタエ(*17)。ヴァマルム(*18)、戦争の神。メソル(*19)、復讐の神。ゲサー(*20)、死の神。など他にも数多くがいる。

力は行使されればされるほど、威力を増していくという点に特色がある。したがってユールマルがフラマルを殺すまで(*21)世界には死というものはなかった。その後の“神々の戦い”における大規模な虐殺により、ゲサーは力を増していき、彼の領域は神と定命の者を問わず、世界のすべての存在を内包するに至った。

アーモールがこのことを学んだとき、彼は導師に尋ねた。「では人類と神々の違いはなんなのでしょう?」

「ほとんどない。」との導師の答え。

「我々が神々と呼ぶ存在であっても定命の者と同じく死に見舞われることはありうる。しかし神々は我々定命の者のような老衰や病気による死は免れている。」

「しかし殺される可能性はあるのでしょうか?」

「偉大な力を持つ武器を用いれば。世界で最初に死に見舞われた存在であるフラマルを例に取ってみよう。彼は神であったが、ユールマルの手にかかり倒れ、死んだ。」

「しかしフラマルはいまでも生きています。すべての伝説が語っているように。」

「その通り。毎年フラマルの魂が地界から地上界に戻るため苦闘したあと、フラマルの肉体は生まれ変わる。イーヒルム(*22)が毎朝転生し、彼の物質的な肉体が黄昏で死ぬのと同じように。」

「では彼らの魂は死んだあとも生命を保全するのでしょうか?」

「その通り。全ての生命ある存在の魂が物質的な形態が死んでも生き続けるのと同じことだ。」

「我々、定命の者も含めての話でしょうか?」

「我々、定命の者も含めての話だ。」

「ではもし人間の魂が地上界に戦って戻ってきたら何が起こるのでしょうか?その魂はふたたび生命と物質的な形態を取り戻すのでしょうか?」

「その通り。ナカーラから逃れたあと地上界にたどり着くことでこのような魂はカエリス(*23)と呼ばれる別種の神々となる。北方のジョナートと東方のハルマストはまさにこのような神性だ。テイロールやアーカットと同じような存在だ。」

「それではもしある人物の肉体が死んでも、その者の魂は再び物質の形態を取り戻し、神になるかもしれない。生前に地界に降りていき、再び地界から出てきた者はどのような存在となるのでしょうか?」

「その論点は本質についてというより意味論となるな。暗黒の世界に降りていけば、その者が地上界で死んだのと同じように、人間の物質的な形態はその者から去ることになり、根本的な元素の形へと回帰することになる。ナカーラへと降りていくことこそが死である。そして地上界へ再び現れることはその人間を、地上界での死の前に神のひとりとすることになるのだ。」

「もし人間の肉体が死で根本的な元素へと戻るのなら、ひとりの人間はどのように転生するのでしょうか?その者は定命の者の母の子供として再び世界に入って来ることになるのでしょうか?」

「“神々の戦い”の前に生きていたゼデイ(*24)のように、そうなることもある。しかしたいていの場合は、再び地上界に現れたときカエリスは以前よりも強力な力を得ることになる。その者はほぼ他のいかなる形態にも姿を変えることができるし、地界に降りていくことなしに自分の魂を、いかなる物質的な形態からも完全に引き離すことが可能な能力を持つことになる。」

これらの神々の種族に加えて、アーノール(*25)はバーテイ(*26)、もしくは混血の神々として知られる神々について学んだ。バーテイの神々は元素の神々もしくはそのスルビュアリが交わったことによる結果である。フーマト(*27)、風の神がバーテイのなかで最強の神であり、ガータとズレッサスの子供である。そのほかにはフラマルとハイキム、スラマックとガータの双子の子供がおり、トラート(*28)とアニーイラ(*29)、イーヒルムとナカーラの双子の子供がいる。

これらの神々と、彼らに似た神々は、元素の神々その者の産物か、もしくはひとりの元素の神々と、第一世代のスルビュアリの産物である。彼らはより属性と機能において元素の神々に似ている。これらの神々は自分のスルビュアリを生み出す能力があるバーテイである。したがってフーマトの眷属である多くの風の神々、コーラーティ(*30)と呼ばれる存在がいる。これらのバーテイは元素のバーテイとして知られ、またその(能力の)制限により、低位のバーテイとも呼ばれる。

高位のバーテイたちは他のバーテイの(直接の)子供であり、すなわちバーテイ同士の子供か、バーテイとスルビュアリの子供である。より複雑な元素の混血により、これらの神々は祖先が何であるかはほぼ重要でないまでに機能においてより広範囲を許されている。彼らの重要性はスルビュアリのように物質的な属性に依存しておらず、より機能に依存している。たとえばユールマルは狡猾で頭の回転の速いトリックスターとしての方が、彼の血統の中に含まれている全ての豊穣や水や大地や、太陽の火の神としての属性よりも重要なのである。


しかしその一方で、バーテイは混血であるにもかかわらずしばしば強い力に成長する事はない場合もある。このようなバーテイは属しているはずの神々というよりも不老不死の人間に似た生を営む。彼らの魔力はもちろんいかなる人類よりも強いものである。彼らはしばしばルアーサやアルティネーのように群れをつくり、氏族を形成する。そしてルアーサがセシュナや、フマト、スラマックの要求に応じてセシュネギの地を滅ぼしたように、高位の神々の指示の元に地上界で行動する。

イファルドル(*31)と呼ばれるもうひとつのバーテイの階級は二つのスルビュアリの種族の産物である。スルビュアリは元素の神々やバーテイよりも特化しており、力が弱いことから、イファルドルの階級はいかなる神々と比べても最弱である。実のところイファルドルの種族は非常に弱いあまり、病気や老衰による死の犠牲になる。イファルドルは定命の種族である。

イファルドルには多くの種族が存在する。マルキオン人はひとりのコーラーティとトリオリーニの混血であり(*32)、誕生の地であるブリサの地にちなんだブリソス人という呼び名の方がよく知られている。タマール人(*33)はデイホーリとティルンタエの集団の混血である。

「全ての定命の種族、もしくは人類はイファルドルの階級に属するのでしょうか?」アーノールは尋ねた。

「全てではない。」導師は答えた。
「この世界の大部分の住民はスンチェンとして知られる種族である。この世界の野蛮で、獣じみた種族の間で、類似した言語が使われているのはこれが理由だ。イファルドルの血統を持つ種族がいるときのみ言語が異なる。なぜならスルビュアリの各種族は固有の言語を持っていて、彼らのいかなる子孫にもそれが伝わっているからだ。」

「スンチェン族の起源はなんでしょうか?」

「クラロレラ人の言葉だとこの単語は“動物の子ら”を意味する。全てのスンチェンの国々はある種の動物の神性の子孫か、その種族のほかの階級の神を親の一人に持っている者の子孫なのだ。」

「ではこのことが北方のジョナートの民が“熊の民”と呼ばれている理由なのでしょうか?」

「その通り。“神々の戦い”の前は地上界のほとんどがスンチェンの純粋な種族によって占められていた。“山羊の民”や“馬の民”、“猫の民”、“牛の民”、その他多くの民がいた。しかし“神々の戦い”と“混沌との戦い”でこれらの国々は混じり合い、動物との兄弟関係を喪ってしまったのだ。

私の知る限りだと、北方のジョナートの民は熊と交流する能力の大部分を喪ってしまっている。南方のミスラリ山脈にいるバスモルの獅子の民は獣との兄弟関係を保っているようだが、野蛮状態に堕落している。南方のプラロリの民は獣との兄弟関係を保っているが、過去の時代ほどではない。そして極東のヴリーマクの民(*34)は鳥の王の兄弟たちとの親族関係を保っている。

彼らが血統を汚染されておらず、直系の獣からの血統を主張することができる生き残っているスンチェン族と言えるだろう。しかし私が聞いたことのない他の種族もこの世界にはいるのかもしれない。」

「このような親族関係の利点は、時に獣と直接交渉することができるということ以外に何でしょうか?私には種族が混じり合う事は、元素の神々同士が混じりあって、より強い神の血統を生んだのと同じように、人類の種族を強めることになるように思えるのですが。」

「この場合はそうではない。ある民が獣と会話できるということは、彼らが自分の神である祖先とより容易に会話できるということを意味する。したがって容易に自分の神々から“力”を得ることになる。その民の魔力は自分の血統を純粋に保っているときに最強になる。」

「このことは今でも、ブリソス人やタマール人に明らかなように、彼らの血統はブリソス人のように孤立によって、もしくはタマール人のように他の種族と交わることへの恐怖によって、時代の変遷においても比較的純粋さを保ってきた。そして彼らは祖先との交流を行ううえでは地上界で最も強大な種族となっている。」

「それでは自分の民の歴史と起源を知っている魔道師は知らない魔道師よりも強大になるということでしょうか?」

「その通りだ。」

アーモールはしばらく黙っており、そして質問した。

「ラリオスの住民の起源はなんでしょうか?」

アーモールの導師は首を振った。

「それは私には答えられない質問だ。この土地の野生の民は、多くの異なる世界の場所に多くの異なる起源を持っている。この土地の者は特有の結婚の慣習の世代を経過して、非常に血統の混合がおこなわれ、現在の住民たちの創始者であるいかなる神の名前も、挙げることが不可能になってしまっている。」

「では私のような者が強力な魔道師になることは不可能ではないにしても、困難なのではないでしょうか。」

「そうではない。一人の人間は自分の血統を知らなくても神性の力を服従させることができる。そして元素と力を呼び起こすことで、正確にそのことをおこなえば、極めて効率的な威力を出す。アミュレットや魔法図やタリスマンのような術具は一体の神か力に捧げられており、魔道師が集中をより容易に行えるように助ける。もちろんこの方法は欠点もある。」


(*1)原文のまま。ArmorではなくArnor。本文でも入り混じっている。
(*2)セオブランクはロカール派の宗教最高指導者High Watcher。彼が生まれたのはKings of Seshnela Part3(http://moondesignpublications.com/page/kings-seshnela-part-three)によると1470年ごろである。
(*3)Himel。おそらくTroll Godsのトロウル神のHimileと同一。
(*4)Nakala。暗黒の貴婦人。抽象的な暗黒の神。
(*5)Sramak。水の物質の顕現。Wyrms FootprintsによるとDaliathとFramantheの兄弟。
(*6)Gata。抽象的な大地の顕現。
(*7)Zrethus。グローランサ古の秘密によるとDayzatarの別名。
(*8)Lodik。おそらくLodrilもしくは似た神性。
(*9)Srvuali。マルキオン教徒の神話によると、神代のスパイクおよび歴史時代中部ジェナーテラの異教の世界をスルヴューラSrvualaと呼ぶらしい。
(*10)Vieltor。強いて既出の類似の神を考えるとGustbranか。
(*11)Dehori。トロウルの暗黒の精霊の神、Dehoreの眷族。
(*12)Hollri。
(*13)Triolini。Wyrms FootprintsによるとTriolinaの眷族全て(魚人をはじめとする水の生物すべて)を意味するのだが、ここでは意味が限定されている。
(*14)Likiti。おそらくSeshna Likitaに関係する。
(*15)Wamboli。
(*16)Promalti。
(*17)Tilntae。Anaxial's Rosterに既出。
(*18)Vamalm
(*19)Mesor
(*20)Gether。オーランス人のフマクトか。Vamalmと同一の神でないのは興味深い。
(*21)おそらくフレラー・アマーリのあるラリオスの神話に影響を受けている。
(*22)Ehilm。ラリオスの神話で言う太陽神。
(*23)Kaelith。不死性を得た英雄のことか。
(*24)Zedei。彼に関する神話は訳者には不明。
(*25)なぜかここで弟子の名前がまたアーノール(Arnor)に戻っている。
(*26)Burtae。Genertela: Crucible of the Hero Warsで既出。
(*27)Humat。ウーマスもしくはオーランスのことか。
(*28)Tolat。トロウジャンのアマゾンに崇められている赤い惑星の神。
(*29)Anehilla。トロウルの青い月の女神Annillaの別名か。
(*30)Kolati。
(*31)Ifaldor。神々の子孫である定命の種族。
(*32)AerlitとWarera Triolinaの神話のことか。Wyrms Footprintsに既出。
(*33)Tamali。グローランサのどこに住んでいる種族なのかは不明。暗黒の神々の末裔ということからすると、トロウル族なのかもしれない。
(*34)Vrimaki。リンリディの民のことか、シャン・シャン山脈の鷹の民のことかは不明