ペント人の起源

2023/8/30 Jeff Richard氏のWell of Daliathの記事の翻訳です。記事の翻訳の責任はZebにあります。
 
長いこと断片的だったペントの騎馬民族の起源について。またペント人にもイェルマリオが信仰されていることが明らかにされました。
 
神代ペローリア最初期の騎馬民族である星光の祖先たち(1998)(*1)についての記事がGreg Staffordに書かれたのはその疑問に応える形だったかと思いますが、それでもGROYの灰色の時代のダラ・ハーパにおける騎馬民族の争い(*2)やコリマー部族のハイアロールの三ヶ一の氏族(*3)とかの関係が不明確でした。
 
(敢えて煙に巻くところはおそらく生前のGregのTrickster Shaman Arkatiの面目躍如というところだと思いますが)このたびJeff Richard がGlorantha RuneQuest CultBooksの出版に合わせて神知者的な太陽神のイェルムとイェルマリオへの公式的な収束見解に伴う記事でもあります。
 
Six AgesのプレイヤーのHyalor-Berenethtelli氏族(*4)とも少々関係します。
 
ペント人の起源
2023/08/30投稿
ペント人の起源は灰色の時代の2つ(もしかすると3つ)のグループに始まる。
 
最初のグループは「星光の祖先たち」でありアーコス河上流に現れた。馬に引かれた戦車や馬車に乗っていたが、馬に直接乗ってもいたのかもしれない。天空に初めて現れた星である極星に従って進んだが、先駆星(イェルマリオ)(*5)が空に現れると供犠をおこなうようになり、暗黒の中に光をもたらすのを助けた。
 
「星光の祖先たち」は分裂して北に西に東に向かい、さらにその先でも分裂した。トナカイを牧畜したり犬を飼うようになった。ついには「地面を歩む民」、ロウドリルの農民たちと出会い、支配者となった。トナカイの代わりに牛や羊を牧畜するようになった。イェルマリオが主神だったが、極星やアイリーサ(*6)なども信仰していた。しまいには部族のグループのひとつ、HirenMaDorの指導者(*7)がライバンスの古代都市にて荘厳な儀式を行い、ダラ・ハーパ皇帝を名乗った。この出来事は曙の百年以上前であることを憶えて欲しい。
 
一方で純粋なる馬の民と呼ばれる他のグループがドラゴン・パスとセアードにいた。彼らもイェルマリオを信仰していたが、彼らは神々の戦いで倒れたかの神(*8)の子孫であると自称していた。彼らは馬に乗り、馬を遊牧しており、他の家畜を拒絶していた。そうすることによって彼等は失われた神への忠誠を保ち、稀に失われた神との接触を持った。
 
曙が起きた時に純粋なる馬の民もしくはハイアロールの民はHirenMaDorの民と争った。HirenMaDorの民との全ての競争で純粋なる馬の民が勝った。純粋なる馬の民の馬は最良のもので、かつ彼らの魔術は復活した太陽(「皇帝の」イェルマリオ)との繋がりのためにより強力であった。HirenMaDorが純粋なる馬の民の指導者であり、誓約(ギアス)で包まれた神官王であるVuranostum(*9)を王として認めるのを拒絶すると、彼等は戦った。しかしHirenMaDorは士気に乏しく速やかに降伏した。その後新たに征服された民はVuranostumにダラ・ハーパの皇帝の位に就くように説得した。
 
Vuranostumの後継者たち、子たちは内輪揉めして、十の試練を受けようとする者は一人もいなかった。イェルマリオはその後、地界を脱出した反逆の神々と戦うためにVuranostumの子たちを召喚したが馬の神(*10)は打ち負かされ、オーランスに轡をかけられた。その後純粋なる馬の民の部族は解体し、純粋なる馬の民は騎馬民族の各部族の司祭階級になった。HirenMaDorは貴族の支配階級になった。「地面を歩む民」はこれらの貴族や司祭に仕える農夫や船乗りや商人や職人となり、「太陽の子ら」と時には呼ばれるようになった。
 
続く百年間、「太陽の子ら」がダラ・ハーパを支配した。彼等はゼイヤラン人や勢力を強める(イェルマリオを帰還したイェルムの先触れと再定義を目指す)「帰還せしイェルム」のカルトと争い始めた。Glorious ReAscent of Yelmの記述に反し、「太陽の円盤」イェルムは「太陽の子ら」に認知されていた(*11)が、接触することは難しく、純粋なる馬の民の司祭階級にのみ可能だった。しかし221年に「皇帝たるイェルム」が儀式の中で祈念され、新たなダラ・ハーパ皇帝としてコルダフが即位すると、第二評議会の援助もあって新帝は「太陽の子ら」の軍勢を倒した。「太陽の子ら」の司祭や貴族のうちコルダフに降伏しなかった者は東方に逃れることを強いられた。
 
この出来事が歴史上のペント人の起源となる。少なくとも大部分のペント人の起源である。
 
第三のグループもいるだろう。彼等は太陽暦221年より前に先立ってペントに住んでいた民である。彼等は星光の祖先たちの子孫で東方に移住したと主張する。もしくは(大暗黒で滅びた)Yamsurの子らであると主張する者もいるであろう。
 
シェン・セレリスの後のペントには三つのグループがいる。第一は伝統的な太陽崇拝者であり貴族階級はイェルムを信仰し、騎兵たちはイェルマリオを信仰し、(アイリーサの信仰として)牛や羊を遊牧する民。第二に純粋なる馬の民、彼等は司祭階級でありイェルムを信仰している。第三に大気の神々を信仰する嵐の部族である。
 
私が思うには現代のペント人の世界観において歴史はより単純だ。我々は大暗黒にて極星を追跡した者の子孫であり、イェルムの帰還に世界が備えるためイェルマリオに選ばれた。我々は世界を征服し、トロウルや怪物や氷の魔を滅ぼした。ダラ・ハーパは我々のものであり、我らの王たちは太陽の都にて世界の王として即位した。「地面を歩む民」を正義と知恵によって支配した。しかし地面を歩む民は信頼に値せず怪物たちと手を組んで我々の祖先をHar As Jingに追放したのである。
 
しかし我々は天空の神々の子孫であり、Har As Jingに住むことで我々は強くなった。我々は太陽と、惑い星と、星々の力を、風と精霊の力を、そして我々に仕える家畜の力を呼び出すことができる。高貴な馬こそが我々のもっとも愛する下僕である。
 
以上によりペントとダラ・ハーパの間には強力な宗教的な繫がりがあることが判明する。しかし鍵となる相違点は「皇帝たるイェルム」のカルトである。ペントには「皇帝たるイェルム」の下位カルトは存在せず、全てのペントの部族連合の指導者はイェルムの司祭の援助を支配の上で必要とするのである。
 
しかしながらこの条件はいつも当てはまるわけではないと私は思う。例えばシェン・セレリスは「皇帝たるイェルム」の支配者として認められていた(*12)と私自身はかなり確信を持っている。
 
イェルムとイェルマリオの関係は私には興味深い。曙以前はイェルムを信仰することは誰にも出来なかった。イェルムは死んでおり地界にいたのである。しかしイェルマリオ-先駆星は灰色の時代に姿を天空に現していた。曙とともに純粋なる馬の民は厳格に馬に関する古代の禁制を守っていたがゆえにイェルマリオから帰還したイェルムへと移ることができた。
 
そして天空の出来事についてさらに考えてみよう。青白い「小さな太陽」が暗がりの天に現れて、空は灰色に変わった。小さな太陽は空を徘徊して、呼び出したり対話したりできる存在だった。時が過ぎて小さな太陽の道は安定してより多くの星が空に現れた。そして大いなる前兆として輝く燃える太陽が天空に戻り我々に昼夜をもたらした。太陽は昼であり、小さな太陽は夜である。小さな太陽は小さな太陽の名の通り同じ黄道を辿り、従って二つの天体には明らかに関係性がある。
 
純粋なる馬の民は禁制と厳格な生活習慣により太陽との接触が可能であり、太陽は小さな太陽より多い魔術を提供してきた。HirenMaDor族は純粋なる馬の民の援助がなければ小さな太陽からしか魔術を得ることが出来なかった。しかしながら「帰還した太陽のカルト」は太陽の魔術を全ての範囲において直接受け取ることができるのである。
 
それではペント人はダラ・ハーパ人より伝統的なイェルム信者なのか?その通りである。しかし多くのペローリア人は皇帝たるイェルムのカルトこそがペント人が持たないイェルムのカルトを定義づける主要部分であると言うであろう。このことは宗派の違いと言うよりはむしろ開始点から異なると言うべきであろう。皇帝が皇帝たるイェルムのカルトを聖別する必要があるのだが、221年以来、ペント人は皇帝を持つことができていない。あるいは皇帝を生み出す新たな儀式を持つことが可能かもしれないし、おそらくそれがシェン・セレリスの行ったことであろう。
 
ペント人はイェルム信仰の黄金弓の祈祷師の伝統を持っているが、ペント人の司祭が祭るイェルムのカルトはほとんどペローリアのイェルムの司祭のカルトと同じであろう。
 
ペント人は農夫や遊牧民にイェルマリオが信仰されているという認識はある。小さな太陽は信仰することは簡単である。イェルマリオのカルトの者はペント人の社会の一般構成員である。
 
皇帝の太陽のカルトはよりえり好みする。イェルムの信者の血統の者のみイェルムを直接することが可能である。皇帝の太陽のカルトがペント人の支配層や司祭階級である。
 
皇帝の太陽はペローリアの主神でもあり、ペローリアの皇帝は皇帝の太陽の大司祭である。皇帝の太陽のカルトは赤の女神に誘惑され、女神の息子を皇帝にしたのである。
 
小さな太陽はペローリアの丘陵地帯でも信仰され、その信者は暗黒と戦い、自分の土地の外に住んでいる怪物たちと戦った。小さな太陽は古の原野やその他の森のエルフにも信仰されている。エルフたちは同じ宗教の信者かもしれないが暗黒に立ち向かうときを除けば必ずしも友人や同盟者ではない。
 
イェルマリオが地元のエルフたちにも信仰されていることを憶えていない人がいることを私は不思議に思っている。そして当然のことながら森の民は馬の民と本の全く同じページには現れないものだ。たとえ同じ神々への信仰を共有しているとしても。
 
これらの三つの事例(*13)全てにおいて、小さい太陽は敵対的な環境の中で攻め込んでくる暗黒に立ち向かう民に加護を与える。小さい太陽は人類やエルフや獣の民やグリフィンや-果てはドラゴニュートまでも血筋に関わらず受け入れる。小さい太陽は近づきやすく、二年以上ある部族に戦士として勤めさえすれば小さい太陽の秘儀にすら入信できるのである。
 
グレイズランド人はこれらのグループの(かなり)後の分派ではないのか?その通り。グレイズランド人の祖先はプラックス人と戦うためにドラゴン・パスの王国に雇われた純粋なる馬の民の部族(*14)であった。
 
Jeff Richard
 
(*1)Library of Londarios: Ancestors of Lenshi Kings(1998)、Entekosiadに記載されている非ダラ・ハーパの神話群の繋がりだがEntekosiadには掲載されず後発でIssariesの公式サイトの記事として公開された。
(*2)Jenarong Dynasty。Glorious ReAscent of Yelmに記載されている大暗黒の後の灰色の時代の王朝として挙げられているが実のところ複数の騎馬民族の支配層の権力推移。
(*3)Hyaloring Triaty。第三期にコリマー部族に吸収されたオーランス人でありながら太陽崇拝(Elmal信仰)の独自の文化を持つ三氏族の連合体。
(*4)Bereneth部族の始祖がHyalorの一族であることは公式的にBook of Heortling Mythologyに記載されている。Six Agesでは公式と異なりRedayldaはヴィングコットの直接の娘とはなっていないが馬の女神とされることは共通している。
(*5)おそらくGreg StaffordのEntekosiadやAncestors of Lenshi KingsにはKargzantの名前で言及されている。Jeff Richard氏流には神代のKargzantはYelmalioであり、太陽神はYelmかYelmalioかの二択となる。神のローカル名称にあまり関心がないのはCults Bookの特徴。
(*6) Eiritha。おそらくペント人は家畜の女神をパップスでの呼称とは別の名前で呼んでいる?
(*7) Jenarong。Fortunate Successionでは14代ダラ・ハーパ皇帝。Jenarong 王朝の創始者のようにGlorious ReAscentでは挙げられているが実のところHirenMaDorは騎馬民族の一部に過ぎず、Jenarongの後継者の多くはHirenMaDorではなかった。Jenarongは必ずチャリオットに乗って描写される。
(*8)ジェナートの庭園の神ヤムサーのことか。Yamsur in Genert's Garden。神々の戦いで乗った馬を見捨てたハイアロールの祖先の神。昔から神名録に載っていながら曖昧な神性。純粋なる馬の民は牛や羊を飼わず、第二期のパヴィスのArrowsmith王朝や第三期のドラゴンパスの草飼う民、ルナー帝国に臣従したCharUn族等が挙げられるがこれらが信仰だけでなく血統での同系統であるか否かは不明。
(*9)Fortunate Successionでは16代ダラ・ハーパ皇帝。Hyalorongの出身とされており、Handsome Equestrian(美貌の騎手)と呼ばれていたところを見るとJenarongと異なり戦車でなく馬に直接乗っていた。
(*10)Bridle Conjunction。轡の合。Plentoniusは反逆の神に先駆星が敗れ、軌道周期が安定したことで騎馬民族の神が轡にかけられたと解釈している。繰り返しになるが、ここでYelmalioやHorse GodとJeff Richardに呼ばれている神はGlorious ReAscent of YelmではKargzantとして言及されている。ペント人にとってイェルマリオが馬の神という定義は初かもしれない。
(*11)ペント人は純粋なる馬の民が信仰するイェルムを太陽の円盤Sun Diskと呼び、灰色の時代に信仰されていたカルグザント(=イェルマリオ)とは別の信仰という理解でいいのか。現時点(2023年9月時点)でRuneQuest Glorantha Cult Book: Solarは出版されておらず、ペント人のイェルマリオ信仰や司祭階級のイェルムへの信仰については明らかになっていない。
(*12)Greg Staffordの関心がMysticismと東方神話にかなり傾いていた時期があったとき、Sheng SelerisはむしろMysticismの失敗例として挙げられていた。太陽神信仰とシェン・セレリスが公式に結びつけられたのは初出かもしれない。
(*13)ペント遊牧民、ペローリア人、エルフのことか。
(*14)英雄パヴィスに雇われたジョラズ・カイレムと弓師王朝のことか。