ヘンドリック王2(自由の主)

ヘンドリックはいつも「夏と冬のフクロウの民(原注1)」にあたかも祖霊であるかのように歌いかけていた。(そのような事実はなかったが)ヘンドリックは「夏と冬のフクロウ」への呼びかけを神々すら知らない頃の若いうちから始めていた。誰もがヘンドリックが夜の狩人になるであろうと確信していたが、「曲がる風」がヘンドリックを奪っていった。ヘンドリックがしばしば言うには、

「私は剣の技の方を好む。」それがヘンドリックの言うこの神の子とひとつになった理由であった。

ヘンドリックは[402年]暗黒の中枢に対する侵攻と包囲戦に参加した。この時、ヘンドリックは自分の民から離れて、[光の]帝国のために働き、キトリ族の土地への道案内をした。ヘンドリックは多くの人間がそれらの村にいることに驚いたし、侵攻軍の巨大な軍勢を垣間見てまた驚いた。

ヘンドリックは「飛翔の領主Lord of Flight」となった。ヘンドリックは自分の氏族に南方の「盗みの森」の野へと移住することを提案した。人はその地には住んでいなかったが、狩人たちは軍隊が自分たちを探しているところでは生きていけないということを知っていた。

ヘンドリックの氏族が未知の森に入っていくと、彼らは「夏と冬のフクロウ」の道をたどった。鳥たちが(とくに非常のときには)道案内し、ヘンドリックの民は三人の道案内に導かれていった:アラとパレンドラ、さらに美しくて野蛮なメレドに。

生活は厳しく、多くの者は途方に暮れた。しかし他の避難民も森に隠れようとしていたし、彼らが見つかったとき仲間として受け入れられたので一行の人数は増えていった。森の中に隠れて、氏族は森の道筋を探し歩き、外の世界でかいま見た妖魔どもから逃れるための方策を練っていた。

偵察や戦闘、逃亡は気違いじみていて、野蛮であり、ヘンドリックと彼の率いる英雄達は命の危険がある仕事がなされるときには一番前にいた。しかし氏族は決して捕まることはなく、「輝く邪悪(原注2)」の怒りを買ったので、「輝く邪悪」はみずから探し、滅ぼすために到来した。しかしヘンドリックは「過酷なる追跡」に「輝く邪悪」を導き、四つの場所で森が焼かれた。追跡は「デッコの裂け目(原注3)」の中にある洞窟へと隠れることで終わった。

「輝く邪悪」が彼の恐るべき輝く鷲から降り立ったとき、彼の光は「裂け目」の古代の反響を呼び起こし、「影」たちは巨大なカラスの群れと化して敵の神に襲いかかった。「輝く邪悪」は恥辱を受けて逃げ出したのである。そのため、カラス達は付近にいた軍勢に代わりに襲いかかり、完全に滅ぼした。それがあまりにも徹底的であったため、軍勢も「輝く邪悪」すら!二度とこの地に行くことはなかったのである。

このように「隠れた部族」の無敵の伝説がはじまった。そして今や全ての支配者や裏切り者の領主たちから逃れてきた避難民の全てが「隠れた部族」のところへと向かったのである。

ヘンドリックはこれらの民を自分の兵団に受け入れることはなかったが、さらに南方に行って望むならば南の地に村を作って定住することは許した。多くの者はそうした。彼らは「異邦人foreigners」と呼ばれた。

原注1:「夏と冬のフクロウ」
私はこの種のフクロウが「コウモリの民」と暗闇の敵であるということを聞いた。その結果、この種のフクロウは夜行性の動物の中で数少ないオーランス人と友好的な動物である。この種のフクロウは羽の色を冬には白に、夏には茶色に変える。

私の情報提供者であるヘナサはこのフクロウがヘンドリックの友人たちの同盟者であったと言ったが、その後、激越にその意見をひるがえすようになった。

原注2:「輝く邪悪」
「輝く邪悪」はフェンダル・グバージと我々が呼びならわす妖魔の称号のひとつである。「ガーラント年代記」ではこの者は「鉄のヴロクの」ファランギオと呼ばれている。

原注3:「デッコの裂け目」
「デッコの裂け目」は「戦長の丘陵Styrman Hills」の高地にあり、ヘンドレイキ族の聖地であり続けていると言われる。私は自分をそこに導いてくれる者を誰も見つけられなかった。そしてなん人かの人に頼んだ後、バラカールは頼むのをやめなければ、「お前を殺さなければならない」と言った。


Excerpt from Greg Stafford's "Durengard Scroll" in History of Heortling Peoples