ジストル教団2

コスターン島と周辺地域は「万物界Everything World」(訳注3)の万物が不均等に混ざり合っていて、起源において極めて魔道的であった。また島は結合主義者たちが言うにはグローランサを覆う広大なエネルギーの格子(グリッド)の上に位置していたのである。

最初に周辺地域に現れたのは戦闘用の機械でできたからくりたちだった。非常に遠くからは、シルフを動力とする綱をつけられた監視の気球が晴れた日に最初に目撃された。「偉大なる昇天者Great Ascender」は強力なあまり台風の時も中空に留まり、(ジストレラの終焉まで)決して降下することはなかった。

教団の最初の業績のひとつは魔術の品の大量生産であり、単純な剣(訳注4)からはじまった。これらの品々の効果はコスターン島内部でのみ働き、期待されたように帝国に益するものではなかった。しかし島はその力で良く防備された。リヴァイアサン(訳注5)がすでに島を周回パトロールしていた。

兵士たちは恐るべき飛び道具と近接兵器で武装していた。この種の武器は剣や鎧のように豊富に大量生産されているものではなかったが、品質は着実に改良されていった。

数台のオーニソプターが出現していた。羽ばたく金属製の鳥のようなもので、5世紀前に「鉄のヴロクの」ファランギオが騎乗していた巨大な鷲に似ていた。オーニソプターは少数の人しか乗せられなかったが、常に最良の武装を施されていた。

多くの異教徒の物語はジストル、動き回り、自分で考え、自意識を持ち、魔術を使い、子を生み出すことのできる(異教徒達は速やかに全ての雛を殺した)巨大な機械の存在について語っている。異教徒達はこの存在が神であったと主張している。なぜならこの存在が島を守っているときは、何十年ものあいだ対抗することは不可能だったからである。

この存在は戦っていないときはしばしば休んでいたが、地表の機械の建設に手を貸すこともあり、ときにはマルキオン教の霊的な儀式をおこなっていた。

異教徒達はこの存在のおこなっていた儀式を決して理解しなかった。異教徒達はこの存在が創造のダンスと魔術をおこなっていると考えたが、実のところその主人である、ザージストルZazistor、またの名を(機械の偉大なる核である)「真のジストル」を礼拝していたのである。ザージストルはジストレラ島の地底にあった。

ある者は機械がジストレラ湾の海底にまで達していて、コスターン島全体に浸透していると主張していた。機械は巨大で、いち都市の民が「世界でもっとも偉大なる機械」に力を与え、維持し、さらに創造をおこなうために献身していたのである。

機械は研究所や生活者の区域もあったが、複雑化した魔術機械や、自動の祈祷輪筒や、複合化した動力もあり、「失われしルーン」、ジストルの機械の力の顕現だったのである。

ジストルの力の究極のつとめはかつて「万物」と化した世界を浄化することであった。このことにより「万物界」は破壊され、万物はリサイクルされて真の原質となり、分類され分配されてコアルーンを強化する魔力と物質に変わるのであった。

そのことでもう一度ダンマラスタンDanmalastanが再生され、全世界が可能な限り「慰め」へと近づくことになるのである。ジストル教徒はしばしば「やがて来たる都」、「第三の御業」の終わりに原初のかたちを喪った「最初の都」の再現について語っていたのである。

この計画は目立って成功していたー失敗するまでのことだが。

訳注3:別名「物質界Material World」、もしくは「俗界Mundane World」、当たり前の世界
訳注4:昔のグローランサブックの設定によるとイビリオスの剣
訳注5:巨大な戦艦なのか、海獣じみた機械なのかは不明