シェン・セレリス1

下記はGlorantha Convention Compendium 4に掲載されたグレッグの草稿の抄訳です。翻訳の間違いの責任はZebにあります。

年代表(訳注・111,000YS=DAWN OF TIME(0 Solara Temporis))

111,950年:《海の大閉鎖》
全ての現代世界史は「海洋」の閉鎖より始まる。
全ての以下に引き続く表記された年代はイェルム暦にして112,000年が加算される(訳注・太陽暦(ST)に直すには1000年を加算すること)

クラロレラ
世界を震撼させる出来事がクラロレラで起こる。「古来の存在」が宇宙の秩序を正す為に、「大いなる道」へと駆り立てられる。その宇宙の秩序は、かつて「新龍輪」にいる「神知者」の詐術によって滅んでいた。「太守」達が地方の事件にかかずらっている間に、反響を世界中の者が感じ取った。

51年:龍の覚醒の身震い
「太守」達はおのれの変容を実現する為に力を結集する。一頭の龍が寝返りを打つ。大きな地震がクラロレラ全土を襲う。数百の都市が破壊され、数千の人命が喪われる。

その後、同じ年に、「太守」達はこの力を使用し、数世紀にわたり人々が祈祷の言葉によって懇願してきた通りに、「星を動かした。」ダラ・ハッパでは、ロカーノウスと呼ばれている惑星が、いつもの通り道を遠く離れた場所まで跳躍したことを目撃して、星見達は恐怖の余り死にかけた。この出来事は、「正しき位置」に、宇宙の秩序が正される事をクラロレラ人が願って、果たした世界の矯正である。

120年:「全てのクラロレラ魔術が発動する」
矯正された天体の配列による力は「太守」達に、古代の諸力を回復することを可能ならしめた。「伝統主義者」達は力を溜め、群集は諸都市を荒らし回って、外来のもの全てを破壊した。自分の砦に篭る最後の「新龍輪の異邦人」達が滅ぼされた。

124年:「ゴドゥーニアが神性化される」
「皇帝」が蘇生した。ゴドゥーニアの姿を取った彼のために、クラロレラに「神聖な帝衣と帝章Regalia」が取り戻され、「皇帝」の「玉座」が設けられた。諸天が正しい位置についたので、今や星々は「世界」の中心部に集まり、自らを解放した。そして、「神知者」達より逃れ、殺された古代の精霊の多くが帰還した。

数世紀の後には、古来の東域から、異国の影響は浄化され、神霊的にも回復した。幾つかの永久的な神秘的損傷が癒され、しまいにはクラロレラに、長い穏やかな平和の時代が再び巡ってきたのである。

90年後、ペントの草原地帯で…

220年:アガトゥ=セイAgartuSayが大いなる前兆の元に誕生する。
誰に対する前兆なのか?この年はルフェルザの誕生年と同じである。幾つもの前兆は誤って解釈される可能性があったし、これらの前兆は、ルフェルザの前兆の幾つかと同じくらい、大きなものであったのだ。シェン・セレリス、神となるであろう存在が、人間の両親から生み出された出来事である。

247年:「大いなる競技」が始まる。
偶然の一致か、あるいは「宇宙の運命」か?ペント人の間の状況は、全員飢餓状態にあり、そのため、「大いなる挑戦」が慣習に従って、要求された。彼等は暗黒の諸種族の、血染みで汚れた廃虚に、残酷で陰惨な生け贄を捧げた。最後には、狂乱の儀式の内に、望まれた通りの(血みどろの)前兆が昇って行った:遥か「西方」の「新たな天空の力」である。

我々はこの出来事が「赤の女神」と化した「ルフェルザの神格化」であると知っている。この物理的な現象における、現実的な意味に全く無知な遊牧民達は、その意味を誤解して捉えたのかもしれない。それにも関わらず、彼等は儀式に要求された通りに、誓いを立て、大言壮語した。

アガトゥ=セイはこの「流血の競技会」の参加者であった。また、彼はかの天空の力の表面に歩を占める事を誓約した。他の参加者も、皆似たような誓いを行ったのである。

247年-250年:アガトゥ=セイは己に仕える「志願兵」達を徴募する。
既に飢えた遊牧民達の間で族長として立ちながら、アガトゥ=セイは地方の無法者達や、盗まれた馬を掻き集めるのに数年を費やす。

250年:アガトゥ=セイ、ゴドゥーニアに挑戦#1
アガトゥ=セイは自分の小勢を率いて、馬を走らせ、「鉄の城砦」を真っ直ぐ抜けてクラロレラ皇帝に挑戦する為に向かった。(実際、この時は「皇帝」は消息を絶って発見されておらず、代役を務めたのは一人の「太守」であった。)

この「挑戦」は「格闘」、「(将棋)の対局」、「声によるUtter(訳注・訳に自信なし)召喚術」、「元素創造」 のいずれかからなっていた。(この技比べは、個人対個人の戦闘というだけでなく、「三つの技芸」、(「物質的」=チェスの対局、「宇宙論的」=声による召喚、「神秘的」=元素創造)に対する挑戦をも内包していたのである。)ゴドゥーニアは「神秘的」挑戦を選んで受け、自らの古い叡智と構成体を、蛮族の相当するものにぶつけたのである。ゴドゥーニアの手腕はアガトゥ=セイの手管を圧倒し、アガトゥ=セイはその時、その場において、挑戦の代価として奴隷の身となる事を受け入れた。

250年から252年:「一般奴隷」
クラロレラにおける奴隷の境遇は、過酷なものであったが、なお悪い事に、屈辱的であった。彼は従ったが、その辛酸は彼のような者の自尊心には余りにも辛いものであった。それ故に、アガトゥ=セイは最悪の刑罰を自発的に買って出た。「刹那の劫罰の宮Instant Torture Camp」と呼ばれる儀式プログラムに参加したのである。

252年から352年:
彼は「宿営の宮Camp」に100年間奉仕した。

352年:シェン・セレリスの誕生
この儀式に参加を決めた男である、アガトゥ=セイはもはや存在しなかった。代りにシェン・セレリスがいて、ボシャン省(訳注・クラロレラ最南の省)の諸地方を闊歩していた。この敵の心臓を喰らってきたはずの戦の王は、癒し手であり、奇跡的な職人でもあった。この時と場所においては、孤立していなかった上に、高い地位と、住民から大きな受容を獲得した、数少ない異邦人の一人に数えられていた。

352年-355年:シェン・セレリスの帰還
この「新来の者」は幾つかの揉め事に遭遇しつつも、ペントに戻って来た。白い馬に跨り、色々な土地を越えて、自分の民に、自分の氏族に邂逅した。

セレリスは自分の用いる数多くの奇跡で同族を助けた。執り行われていた最新の「大いなる競技」に参加した。「競技」は後半の段階の一つに取りかかっていた。「伝統主義者」達は抗議したが、彼は奇跡を具現化し、自分を参加者と認めさせた。控え目にではあったが、巧妙に立ち回った。

最終段階で、最後の敵が、彼を奴隷であった事から嘲笑した。そして、シェン・セレリスは、「いかなる生命をも奴隷に他ならない。」と言いながら、嘲笑された事を力に換え、その「真実」で弱った敵の足を撃った。シェン・セレリスが勝利した。彼は流暢な舌で、驚愕している諸部族に、自分達固有の部族の慣習がこの真実に由来しており、その上で、忠誠心とは良い奴隷の心構えである事を説明した。セレリスは、この知識が、100年の贖罪の後、彼の神、ジョラーティJolatyにより授けられた賜物であると言った。(クラロレラ語では、ゾー・ラス・エイZho Lath Eyであり、ダラ・ハッパではゾラーシZolathiである。)セレリスは、もし自分の部族の忠誠心を得るなら、自分には全世界に対する権利があると宣言した。彼等が自分に忠実であるなら、「鉄の城砦」を陥してみせると約束した。今までに前例が無い事を約束したのであった。

356年:シェン・セレリスが「鉄の城砦群」を陥落させる。
「鉄の城砦」は大部分の魔術に耐性があり、クラロレラに通ずる山から、そっくり魔力の供給を受けていた。砦に駐屯している「将軍」達は怪物じみた犬や、小さな龍や、「遊牧民」達を効率よくあしらう事が出来る一連の防御魔術を備えていた。

シェン・セレリスは最初の砦に侵入し、門の錠を解いて、この時だけ、番人達に発見された。彼の家来達は凄まじい犠牲を払って突入し、駐屯兵の置かれた砦を屈服させた。他の砦も落ち、そのうちの一基は先に陥落した砦から奪われた龍や犬に敗北した。

357年-62年:クラロレラの劫掠
この数年間、シェン・セレリスは「鉄の城砦」に住まい、この地で、彼に会う為にペントから来た、志願兵の大群を受け入れた。彼抜きで敢えて侵入しようとする者は誰もおらず、シェン・セレリスは容赦なく七年間、「遊牧民」達にクラロレラを荒らし回らせた。

362年-3年:大軍がクラロレラに侵攻
この大軍には、「ペントのあらゆる戦士達に加えて、老いも若きも女達も加わっており、バイソンやセーブルに騎乗する男達すら含まれていた」と言われる。彼等はプーチャイ省に、畏怖すべき大破壊を無制限に引き起こした。最後に、シェン・セレリスが「プーチャイ川」を一週間、血で真紅に染めた後に、「皇帝」は行動へと駆り立てられた。ゴドゥーニアはフム・チャン(訳注・驚異の島)に自らに仕える英雄達と、軍隊を集結させた。

363年:シェン・セレリス、ゴドゥーニアに挑戦#2
シェン・セレリスは省全域が空っぽになり、荒れた草地に戻るまで、一日に千人の首を刎ねて川に投げ込んだ。ラオナン・タオの都のみが、住んでいる「巨人英雄」(訳注・クイ・フイ)の御陰で、無事であった。

遊牧民の全ての「橋」(訳注・七本のスアム・チョウに懸かり、フム・チャンとヴァスカ・ロン(大陸部)を結ぶ魔法の橋)に対する攻撃は失敗した。失敗に対する憤懣から、橋の内幾つかは、一マイルもしくはその五分の一が焼き払われた。しかし倒壊した橋は一本も無かった。散発的に、遊牧民の英雄達が橋の中まで突撃して、途上で出会う者全てを倒し、道の終わりに何があろうと略奪した。しかしこれ程の遊牧民の凶行も、「皇帝」にとっては局地的な嫌がらせに過ぎなかった。

軍勢は北方に移動し、ジョーボン(省)における破壊活動を始めた。そして、「皇帝」は「慈愛の源」(「ジェナーテラ・ブック」で、(クラロレラの)デンダーラと呼ばれていた存在。しかし、実際は類似の異なる女神である)の咽び泣きに取り憑かれた。

シェン・セレリスは戦いで獲得したもの(のほぼ全て)を「統治権の競技」、この古代の名称が、他に何の意味を含んでいようと、クラロレラにおける「支配」を授ける宇宙的な試練の儀式、に預けた。全ての前兆は試練が行われる事を示していたが、帰趨については明らかにしていなかった。ゴドゥーニア本人には、揺るぎない自信があったがなおも慎重であった。

「生ける龍の軍」が動いた。巨大な水塞艦隊が、完璧な作戦行動を編成し、「主君なる雲海の龍」が全てのシェン・セレリスの魔術を呑み込んだ。軍団が艦船の上で、陣を組み、上陸する時には完全な指揮の下に動いた。各々の兵士が古代の流儀に従って、亡くなった「太守」や祖霊の存在で輝きを有していた。己が真性である龍の完全な姿で準備を終えたゴドゥーニア自身が、百万の男達を、あたかも自分の思念のように意のままにしていた。

シェン・セレリスは敗北した。誇り高く、儀式の掟に従って、ゴドゥーニアに対する降伏と、服従を約束した。しかし、怒れる遊牧民達は自分達が勝負に預けたものを奪い返し、この戦いの前に行ったシェン・セレリス自身の誓約を完全に否定した。ゴドゥーニアはこの敵の不正から得た邪悪なエネルギーを押収し、「ゴドゥーニアの花」の中に「潜在するPotential呪詛」として貯えておいた。(後にゴドゥーニアはこの力をシェン・セレリス打倒に用いた。我々は皆、彼の言葉について知っている。「朕は、歳月の全ての内に、これを据え置いた。小さな玻璃瓶の内に、朕が娘、露の女神の涙が沈淪する。覗いてみよ。汝は「新しき星」の泣き所を目にする事となろう」)

363年-372年:配下の将軍達による「再征服」
シェン・セレリスの軍勢の将校達が、テシュノス、「忘却王国」、グレーター・プラックス(訳注・大荒野の事か?)を襲撃する。シェン・セレリスが憎悪する敵、クラロレラの「皇帝」に対して使用できる、効果的な奇襲の手段を探し求めていたからである。

同時期に、ボシャン省で、未来に「大いなる叛逆劇」と時々、あるクラロレラ人達に呼ばれることになる出来事が外部からの干渉なしに起こった。シェン・セレリスの略奪軍の攻撃範囲から離れており、以前のセレリスの祝福による恩恵について憶えていた人々が、そこにはいた。この人々と指導者達は、クラロレラの権勢に対抗する、省の独立した政権を始めの内は握っており、後には抵抗して維持した。多くの隣域から攻撃され、いかなる試練に遭っても、彼等は長い間、抵抗を続け、最後には世界から放り出されて、クラロレラ人の地獄のある地域に居住するようになり、不死性を得た。