七層の地獄

以下はBook of Drastic Resolution: Volume Darknessの116ページのThe Seven Hellsの記事の抄訳です。訳の間違いの責任はzebにあります。

ジョンスタウン大鑑39,652号
地獄の第一層は闇の水であり、アズラーナAdzurana、暗黒の娘にして大洋の母に支配されている。(アズラーナを人間はスティクスと呼ぶ。)アズラーナは誓言の守り手として祈願され、多くの種類の復讐の女神たちの母である。黒い泉の近くで双子の影(訳注1)が生まれたのは、黒い泉がその濁った深淵に慰安の水と憎悪の酸の浴槽の両方を秘めているからである。

黒き河の水上を死の渡し守(訳注2)はせっせと漕いで往復しているし、河の上にはまた、いくつもの「死の橋」が架けられている。橋は刃の峰の橋もあれば、骨でできている橋もあり、善良な意図が敷き詰められている橋もある。闇の大洋をコガッグ(訳注3)の黒い艦隊が航行し、永久に混沌や幽霊じみたウェアタグ人と戦っている。この場所はウズ族のヒーロークエストの多くの開始地点である。「渡し守」ジェセットはトロウル族七聖祖のひとりだからである。全てのトロウルがこの水の全てを少なくとも二回は横断する。生まれたときに一度、死んだときにもう一度である。

地獄の第二層は「母なる夜」(訳注4)の領域であり、夜の女神の息子、アーガン・アーガーに支配されている。この地にはデイホーリと呼ばれる闇の妖魔が数多く見られる。この領域にはジオーラ・ウンバーと、「夜」とアズラーナの子供である青い月の女神(訳注5)も住んでいる。

ウズ族からしても、地界を通っている多くの道がこの領域から始まっている。夜の貴婦人の領域は毎晩コモル(訳注6)に流れ出し、「敵」の目が世界を照らす毎朝再び戻ってくるからである。

地獄の第三層は「待機の間」もしくは「灰色の地獄」と人には呼ばれる。そして「子宮の外側」とウズ族には呼ばれる。トロウル族の標準からしても、くすんだ侘びしい領域であり、死者の魂にとってすら到着次第、「忘却の泉」から飲んだ方がましな場所である。転生するまで出て行く機会はないからである。音を立てるものや、働くものや、動くものはよそ者が住んでいる無感覚なたわごとを呟く者どもに強制しない限り、存在しない。

めったに起こらないことだが、「子宮の内側」からこの領域に魂を狩るために非常に強力なウズウズ(訳注7)がやってくることがある。「子宮の外側」は「大地の内なる暗黒」であるズゴルテッグ女神(訳注8)に支配されている。この女神の僕たちがこの領域に数多くいる。大地の奥深くに入り込む者はこの地にいることになるのである。

地獄の第四層は「トロウルの楽園」であり、ウズ族には「子宮の内側」と呼ばれる。この領域はカイガー・リートールによって支配されているが、この女神の元々の故郷ではないので、「不思議の郷Wonderhome」とは呼ばれない。この国は、静かな影や、穏やかな泉や、豊かな食べ物があり、ウズ族が死後、転生を待つために向かう場所である。

この国は、世界の中で見いだすことが可能な、「楽園」にもっとも近い場所である。この領域から呼び出す祖先の霊は強力だが、それはこれまで死んだ全ての「偉大なる者たち」がこの領域にいるからである。全ての善良なウズは死んだ後この領域に行き、聖なるコラスティング女神が生命の地にまた送り返すまで、コラスティング女神とともに暮らすことになる。

地獄の第五層は「灼熱の牢獄」と呼ばれるが、「輝く地獄」という名称の方がよく知られる。なぜなら、この領域は「敵」である「輝く目」(訳注9)が毎晩向かうところであり、自らの黄金の御座船に乗り、従僕と信徒達を引き連れてこの祝福された領域を航行するからである。昼の間、この神の「灼熱の牢獄」は日中天空を旅し、永久にウズ族を苦しめている。

この神が目覚めるところには恒久の光と幸福があり、この神の帰還まで光と幸福は人質として囚われることになる。光と幸福は多くの人間の死者にとって至福の根源であり、アラクニー・ソラーラの網によって地獄に束縛され、死者たちの「君主」によって約束されたものとなったのである。カイガー・リートールは暗黒以前はこの領域を支配していたが、イェルムが最初に死んだときに地表界に追放されたのである。

地獄の第六層は「戦争の地獄」であり、ゾラーク・ゾラーンによって支配されている。この領域にはトロウルであれ人間であれ、ゾラーク・ゾラーン神の信奉者たちが住んでいる。彼らは永遠に襲撃行為や「ボグル族の領域(訳注10)」の向こうの混沌に対する防衛に勤しんでいる。この領域には「光の森」があることで特徴付けられる。この森では死んだ火の精霊たちが「暗黒」が「混沌」を打ち負かすのを喜んで助けている。この領域にはまた、「真の石」でできた巨大なカーガン・トール、天宮Celestial Courtの戦神の彫像があり、この古代の遺物は信徒達に、「宇宙の礎石Foundation of Universe」と呼ばれている。

地獄の第七層は多くの名前で知られる。「ラツラフの岩」、「ボグル族の領域」、「ロコトールRokotor(訳注11)の糞の山」、「無秩序の砦」、「不定の領域」などである。あらゆる種類の[世界の]守護者がこの領域に住んでいるが、この領域の大部分は侵食を受ける恐ろしい場所である。どのような変化でも起こる可能性がある。混沌から一歩離れているだけであるこの領域で、支配したり、秩序を保ったりできる神はいない。この地の最深層はアールクォンArrquongと呼ばれる門であり、今まで二回しか破られたことがない。最初は強大なるボズタカング神(訳注12)が[世界の]外を見ようとしたとき、二度目は忌まわしいワクボスが到来したときである。

地獄の第七層よりさらに下は混沌しかない。

訳注1:ゾラーク・ゾラーンとジオーラ・ウンバー
訳注2:ジェセットJeset、地界の川の渡し守
訳注3:Kogag、ジェセットの息子にしてトロウルの船の神
訳注4:ゼンサXentha
訳注5:アニーラAnnilla
訳注6:Komor、トロウル語で地表界のこと。「痛みの地」を意味する
訳注7:Uzuz、女王種トロウルMistress Race
訳注8:Zugorteg、トロウル族のタイ・コラ・テックに似た女神。エスロリアではこの二柱の女神は同視されている
訳注9:太陽。ダラ・ハッパではイェルムと呼ばれる
訳注10:Boggle Range、第七層のこと。ボグル族は無秩序のルーンの種族。地表界では大荒野の「彫像の台地」に住んでいる。Anaxial Roster参照
訳注11:Rokotor、Uz: The Trolls of Glorantha p.32によるとトロウル族のトリックスター
訳注12:Boztakang、トロウルの七聖祖の一柱にして混沌退治の神。古い設定だと、ボズタカングはヴィーヴァモートの後をつけてアールクォンを見つけたことになっている