鉄の戦争1

続いて守り手でなく、攻め手の集団の記述に移ります。King of Sartar(邦訳「グローランサ年代記」)にもこの戦争について記述があり、「オーランスと機械の神」の題名で抜粋がまりおん殿の記事にあります。より客観的な記述はHistory of the Heortling Peoplesにあります。以下はHistory of the Heortling Peoplesの53ページから55ページの記事の抄訳です。訳の間違いの責任はzebにあります。


「鉄の戦争」はジストル教団の「機械の神」に対する「新たなる同盟評議会New Unity Council」の十年にわたる叙事詩的な包囲戦である。戦いの十年目に「鋼の陥落の合戦Steelfall Battle」は決戦で広がった力とエネルギー、複雑性により世界を破壊した。神々が到来した−ジストルが立ち上がり、オーランスが降臨したのである。英雄たちは長く続いた抗争にけりをつけ、軍隊は激突した。

ジストルの島が魔道の民である神知者と彼らの「科学的な」魔術と、より伝統的な(ドラゴンの帝国以前の)世界の諸力の争いの焦点となった。強大な者たちが先史時代の「同盟評議会」を呼び起こし、「新たなる同盟の輪」を造り上げた。全ての種族が魂を滅ぼす怪獣であるジストルと戦うために結集したのである。

この地域の政治勢力は概して争いの外に留まった。このような勢力にはアンドロルフィン王の率いるヘンドレイキ部族、ドラゴンパスの「偉大なる龍の輪」があり、ジストレラの小島も中部海洋帝国の意向からして、特別な拠点であった。三つの勢力すべてが戦いから身を遠ざけようとしており、代理の者を通して活動していた。そして古の種族もいたが、彼らは舞台裏で動いていた。

「新たなる同盟評議会」は非政治的な組織で、初めのうちは完全に霊的なものであった。すぐに志願兵や、物資の供給や、資金源、ついのは地主すらこの団体を援助するために集まったのである。しかしこの組織の目的は常に「機械の悪魔」と戦うことであった。全ての他の抗争はこの目的のためにわきにおかれ、全ての者が「新たなる同盟の誓い」を行わなければならなかったのである。

「新たなる同盟の軍」は戦争の間、左腕諸島に存在した軍事力であった。この軍隊は監視帥(Watchlord)によって率いられていた。

監視帥Watchlord
監視帥は包囲軍の指揮官である。908年の「新たなる同盟の輪」が破滅的な「志願軍」の最初の合戦の後、この地位を設立した。

監視帥は「輪」の全体が最高の力を発揮するように導かなければならなかった。「輪」は「同盟評議会」の全ての集団の代表から構成されていた。

「老人」ハランドスが最初の監視帥であった。彼は雑多な寄り合い所帯の「最初の見張り番」たちとスキー島(訳注1)を最初に訪れた。「機械都市を滅ぼす力が現れるまで見張るため」であった。

監視帥の位は報われないものであった。「同盟の軍」は食糧を要し、訓練が必要であり、島は問題が起こった時のために監視する必要があり、襲撃に備えるため情報を集める必要があった。最大の責務はどんな犠牲を払っても自分を発揮したいと望む、利己的もしくは狂信的な全種族の英雄たちを団結させるための外交交渉であった。(訳注2)

最後の監視帥は「男らしき」ハードレッドであり、この地位を終わらせたのはドワーフ族であった。

訳注1:コスターン島と大陸を結ぶ島
訳注2:「切り刻む者」ヴァランコルは911年に「監視帥」の地位に就き、「輝かしき夏の攻撃Brilliant Summer Attack」を行ったようです。彼はEWFであることから考えると、特に監視帥の所属する政治勢力は制限がなかったようです

Excerpt from Greg Stafford's History of Heortling Peoples