コルダフと十の試練の公子たち6

大いなる反撃
イェルムの後継者の再昇天は世界じゅうに深刻な反響をもたらしました。[遊牧民の]将軍たちの皇朝は東方から大軍を呼び寄せて、「十の公子たち」の生き残りの三人を滅ぼす助けにしようとしました。将軍たちは妖魔の祖霊や、神話上の獣や、特殊な精霊や、荒ぶる神々を召喚しました。これまでダラ・ハッパで見られたことがないほどの規模の兵力を集めたのです。

この当時の新しい「帝国」にとって、問題は少なからずありました。この時には南から新たな軍勢が国に侵攻していたのです。南からの軍勢は「反逆の神々」の子孫や奴隷であり、シャーガーシュが束縛されたとき(注1)に牢獄から解放されたのです。彼らの多くは人間ですらありませんでした。

南の軍勢に「将軍たち」以上にダラ・ハッパの民は怯えました。なぜならダラ・ハッパの民はこれらの非人間の敵についてほとんどなにも知らなかったからです。しかしコルダフ皇帝陛下は恐れませんでした。そしてこの予測していなかった問題の簡単な解決を思いつかれたのです。コルダフ様はこれら異邦人たちに近づくことにためらわず、何者であるか教えよと命じました。

平和的に調べたあと、コルダフ様はこれらの民が皆(オーラナトゥスとこれらの民は呼んでいましたが)「反逆のテルミヌス」の信者であることを知りました。彼らは自分達を長いあいだ憎んできたダラ・ハッパの国を滅ぼすために派遣されたのだと言ったのです。

コルダフ皇帝陛下は南の軍勢の民が、意図において誤っており、ダラ・ハッパを滅ぼすことを彼らが望んではおらず、[騎馬遊牧民の]「将軍」たちの邪悪な皇朝を滅ぼすことを望んでいるということを証し立てました。

コルダフ様は彼らの神々が地界で皇帝イェルムに臣下の礼をおこなったことを証明し、皇帝たる太陽の帰還のために世界の備えをおこなうため、自らの役を果たすために派遣されたのだと教えたのです。これらの民の神々は天上の戦いで、カルグザントが打ち破られたとき(注2)にいた者達でした。議論のあと、これらの新たなる侵略者たちは自分達が悪を放逐し、皇帝の帰還に備えるための仕事を完成させるために来たのだと宣言しました。

コルダフ皇帝陛下はその後敵を呼び出しました。そして「不良の神々Bad Gods」と「邪悪な神々Evil Gods」が出現したのです。コルダフ様はふたつの軍勢が戦うように仕向けたのです。怪物の軍勢が「人肉喰らい」どもを滅ぼしました。(注3)コルダフ様を倒すために、世界のもっとも遠くから到来した騎馬将軍の半神たちの部族は滅ぼされたのです。ついに勝利を得ることはなく、将軍たちは全滅し、その子供の一人たりとも奴隷の身となり、許されることはありませんでした。

この戦いのあと、怪物の軍勢はコルダフ皇帝陛下のところにやってきて降伏しました。コルダフ様は彼らが自分たちの神々の命で来たことを認め、この時アンティリウス神と和解したことを認めました。

そしてコルダフ様は玉座の上に立ち、怪物たちの軍勢を分解して誰かを害することがないようにしました。コルダフ様は怪物の軍を種類によってそれぞれ分けて、異なる四方に向かうようにしました。コルダフ様は夜の民、すなわちディジジェルム族を北に送りました。彼は地下の民、すなわちモスタリ族を東方に送りました。コルダフ様は樹木の民、アルドリアミ族を西に送りました。そして南にはドラゴンの民を送ったのです。

コルダフ皇帝陛下はその後、怪物たちの軍とその指導者達に「世界友邦評議会」の名誉ある称号を認めました。その後軍勢は去り、故郷へと向かいました。彼らの多くはダラ・ハッパの美しい土地を愛するために留まり、コルダフ様の法の下に暮らすことに同意したのでした。

[コルダフと十の試練の公子たち 終わり]


注1:「台の上の馬Horse on the Table」帝の治世(110,993年〜111,018年)に起こった天文上の出来事。シャーガーシュが光を失い、南道に縛られた。アルコス人以外のダラ・ハッパ人(プレントニウス等)は遊牧民の「誤った太陽神」カルグザントにシャーガーシュが敗れたとみなす
注2:ジェナロング朝ヴラノストゥム皇帝の死後に起こった「馬轡の合(Bridle Conjunction)」の前の天文上の出来事。カルグザントが黄道に縛られ、「合」でアンティリウスに呑み込まれる。この時、カルグザントにくつわをはめたのがオーラナトゥスであるという説がコルダフに採用され、後の第二評議会にとって真実とされた
注3:Battle of Silver Flame。111,230 年のアルゲンティウム・スリーリー(Battle of Algentium Thriile)の戦い