コルダフと十の試練の公子たち2

十の試練の公子たち
十の試練の公子たちは全員「賢者」コルメーシャ(注1)の血を引いていました。それぞれが最古の知られている伝説を成就し、真の太陽を世界に再び呼び戻す者になろうとしていました。この務めは簡単な仕事ではなく、彼らは世界を遠くまで旅し、務めを果たす者となりました。そして公子たちのほとんどが探索の途中で死んだのです。

探索で公子たちはムルハルツァーム帝の古代の通った道をたどり、長いこと死の世界にいた民と言葉を交わしました。星見たちと対話して、公子たちのなん人かは遠く遙かの星を訪れました。公子たちは友人や同盟者を作り、敵も作りました。

十人の公子たちは人間の敵や、霊的な敵、妖魔の圧制者たち、神学上の敵対者と争いました。それでも公子たちは敵を克服し、アナクシアル帝のレガリアを再結集しました。そうすることで公子たちの中の最善の者がもっとも由緒ある儀式を執り行うことができるようにしたのです。公子たちは最古の法に従うことで善良な神々の祝福を受けることを願いました。そうすることは容易ではありませんでしたが成功しました。探索は二十一年を要し、公子たちの内六人が死にました(注2)。公子たちは十の帝装を獲得し、その後も他の者たちが皇帝のみもとにさらに団結と力をもたらしたのです。

この叙事詩は万人によく知られていて、さらに知るために「コルダフの進軍」に耳を傾けることができます。以下は公子たちがどのようにレガリアを獲得したのかについてのあらましです。

・徳の下帯
男性なら誰でも下帯を身につけます。下帯はその男の人の個人的なものごとを隠し、我々の魂が乱されるのを防ぎます。男性は少年時代を終えたときに下帯を獲得し、その後は誇りをもって身につけます。コルダフ様は十歳で下帯をつけるようになりました。

・加護のサンダル
サンダルは不浄から清められたものを遠ざけます。加護のサンダルは氷河が帝国に迫ったときにマナルレイヴァス皇帝(注3)が喪いました。騎馬遊牧民がサンダルを盗み、自分たちの手元に置き、父から息子へと受け継いできていたのです。「聖なるサンダル」は崇められていたものの、実際正体がなんなのかは皇帝「馬の配り手」(注4)が戦利品としてサンダルを勝ち取るまで忘れられていました。サンダルはマシュタサム公子が相続財産の一部として獲得し、十人の公子たちに取引の一部として提供されました。

・開示の祭服
衣服は誰もが目にすることになる人の一部です。聖なる衣はデンデネウス皇子(注5)がパンのかたまりと引き替えに譲り渡してしまいました。聖なる衣はアナクシアル皇帝によって新たにあつらえられ、以後の皇帝の全てが自らのために新たに作りました。大いなる名誉が壮麗な礼服を新たに作ることによって与えられるのです。聖なる衣はデンダーラ女神によって作られました。純白で袖長く、膝まで長さがありました。

聖なる衣はケルヴィヌス公子(注6)が女神の手から獲得しました。ケルヴィヌス公子はデンダーラの女祭と結婚し、自分の妻に、デンダーラ女神に当然受けてしかるべき大いなる栄誉を与えたのです。

・支配の腰帯
支配の腰帯は中心の力が込められています。腰帯の輪は宇宙を囲み、メダリオンの留め金は力の自制にたいする体現が込められていて、腰帯をつける者に力を与えます。腰帯が善良の民(注7)から喪われたことはありません。アルコスに再び住民達が住み着くと、アルコス人は腰帯を神殿で見つけました。腰帯はエウシブス皇帝(注8)のレガリアのひとつであり、十人の公子のため、「若き皇子」コルダフがアルコスの包囲戦のとき獲得したものです。包囲戦のあと、エウシブス皇帝は退位しました。

・統治の弓とメルニッタの冠
「統治の弓」なる武器を最初に持ったのはルカリウス皇帝でした。この弓はすばらしい神聖な武具であり、持っている者は天上に到達することができるし、天上から統治権を呼びおろすことができるのです。この武具はルカリウスに続く全てのアナクシアル皇朝の皇帝たちのレガリアの一部でした。暗黒の時代のあいだ、弓はウルスタムスUrstamus家に保管されていました。ウルスタムス家の家長であるジェラクスは、コルダフの従兄弟にして「軍師」の息子であるダーヴェダルシュDarvedarshu公子に殺されました。ダーヴェダルシュは弓を十の公子たちのもとにもたらしたのです。

コルダフ皇子の賢い相談役のおかげで、十の公子たちは「弓」が自分たちの求めている正しいレガリアの一部ではないと気づいたのです。さらに賢い助言を得て、コルダフ皇子はエルツアストの都の強襲を成功するには弓が必要であることを悟りました。コルダフ様のご兄弟が襲撃を指揮し、都は陥落したのです。征服者たちが戦利品を受け取る中で、コルダフの顧問たちは失われていたメルニッタの都の冠を見つけました。この羽で飾られた冠は皇帝ウルヴァイリヌスの御世から失われていたのです。ウルヴァイリヌスの父帝が戦争のあいだに冠を喪っていたのでした(注9)。

・主権の小冠
この冠は壁のように世界を囲み、外側にある悪から内側にあるもの全てを守護するものです。

この冠は「洪水」の間に失われ、アナクシアル皇帝は損失を大いに嘆きました。ウルヴァイリヌス帝は戦争で冠を奪還しました。皇朝は冠のおかげで祝福されていましたが、ヴァニオラメト皇帝が最初の探索で、再び冠を喪いました。冠の喪失のせいで、敵が「天蓋」に入るのを許してしまいました。冠は蛮族どもが持っていましたが、ジェナロング王によって奪われました。ジェナロングは自分の部族をこの地に導いたとき、冠を持っていました。ライバムス神は理由がわからずに目覚め、冠こそが自分を目覚めさせたということに気づいたのです。そのため、ライバムス神は遊牧民の皇帝を欺いて、自分に冠を譲るように仕向けました。このことでライバンスの都は世界でもっとも強い都になったのです。

若き皇子コルダフ様は、この秘密を知りました。コルダフ様はライバンスの王を呼び出し、もし冠を差し出すならばと、大いなる贈り物と権利を申し出ました。コルダフ様はディンゼレド王に引き渡された都の冠をご覧になり、この冠が実はデューマロス(注10)の古代の冠であることを悟られたのです。都の神も引渡しを認めました。帝国の幸福のため、ライバムス神も同意したのです。

・権威の宝珠
権威の宝珠は全ての真の皇帝たちと神々の頭上に昇る、巨大な輝く宝珠です。宝珠は加護と洞察力、支配権を授けます。

宝珠は「黄金の丘」で喪われました(注11)。皇帝は「冷酷な神Cruel God」に宝珠を奪われ、「冷酷な神」はディジジェルム族(注12)に渡して大事にしまっておくよう命じました。ダーヴェデスコルゴス公子、「軍師」の息子にしてコルダフの従兄弟が宝珠を取り戻しました。ダーヴェデスコルゴスは黄金の丘に行き、取り戻すために自分の魂を賭けたのです。ダーヴェデスコルゴスは賭けに勝ち、宝珠を十人の公子たちのもとにもたらしました(注13)。

・秩序の宝笏
この宝器は純金でできていて、皇帝が神々の注意を自らの望むところに導くことができます。そうすることで光で照らし、イェルムの秩序を拒絶する全ての虚偽を追い払うことができるのです。

「秩序の宝笏」はユスッパの都が放棄される前に、都に隠されました。ユスッパの新しい入植者たちは「宝笏」が都に隠されていることを知りませんでした。数世紀もの間「笏」は見つからず、秘密のままでした。

ついには、「賢者」コルメーシャの娘にしてナヴェーリア女神の女祭である妻、ジェセンテラに助けられて、ウルヴァイラダトゥ公子がユスッパで「宝笏」を獲得しました。

・ソールムの止まり木
この偉大な生き物は皇帝の分身であり、上空の高みから世界のあらゆるものを目にすることができるのです。さらに、鷹ソールムは世界のいかなるところにも皇帝の威厳とともに送り出すことができます。

ケスティノロス皇帝(注14)が止まり木を失いました。しかし止まり木を奪還したのが「雪の鷹」ソールムTholmで、「止まり木」を安全なところに運びました。「輝く鷲の領主」たち(注15)が権力を握ると、彼らは「止まり木」の上に止まって自分の支配の領域を見渡すようになりました。「止まり木」は彼らの帝国が崩壊すると、「輝く鷲の領主」たちの部族によって戦利品として受け継がれました。

「止まり木」はケスティナーディから「賢者」コルメーシャの娘オレステーナとガンバーリ市の僭主の息子であるヘンデストリトゥス、無謬の評判をもつ公子の手で奪還されました。コルダフ様が即位されると、「鷲」は天上から降臨し、「止まり木」に止まりました。

・統治のマント
「統治のマント」は「アンティリウスの外套」とも呼ばれます。もっとも偉大な力と名誉をもつ衣です。「マント」は限界のない正義であり、全ての創造を包摂しているのです。

「マント」はマニマト皇帝の治世に喪われました。細かく切り刻まれて民に配られたのです。マントの切れ端を持っている者は誰であれ、暗黒から救われていたのです。

切れ端を再び集める仕事はコルダフ様の祖父である「賢者」コルメーシャの手で始められました。それ以来、「丈の短い」外套が「イェルムの塔」の光の下に空に舞っていました。多くの年月を費やして、コルダフ様は切れ端の残りを獲得し、ダージーン(注16)からの聖なる行進のもと運び、外套を完全に戻したのでした。



注1:Glorious Reascent of Yelm Ivory Editionによると、「賢者」コルメーシャは預言者アヴィヴァスの孫である。十の公子たちの名前は以下のとおり:

  1. 「兵士Elleden」コルツァネルムKhorzanelm、「賢者」コルメーシャの末子。コルダフの父
  2. 若年で死んだコルツァネルムの兄(名前不明)
  3. 「軍師」Captainと呼ばれる男(名前不明)、コルツァネルムの兄。ダーヴェデスコルゴスとダーヴェダシュの父
  4. ウルヴァイラダトゥUrvairadatu、「賢者」コルメーシャの娘ジェセンテラの夫
  5. ダーヴェデスコルゴスDarvedeskorgos、「軍師」の息子
  6. ダーヴェダシュDarvedashu、「軍師」の息子
  7. ヘンデストリトゥスHendestritus、「賢者」コルメーシャの孫。コルメーシャの娘オレステーナとガンバーリGanbarri市の僭主の息子
  8. マシュタサムMashutathum、血統不明
  9. ケルヴィヌスKervinus、血統不明
  10. コルダフ自身

注3:アナクシアル皇朝の皇帝。GROYのアナクシアル皇朝の記述についてはぴろき殿のサイトを参照のこと
注4:Dispenser of Horses、(在位イェルム暦111,186年〜111,193年)別名ヴィラマクラダViramakradda。ジェナロング朝のリンリディ系の皇帝?「嘘のなかの真Lies With Truth」ケスティネンドスKestinendosの息子
注5:Dendeneus、ダラ・ハッパ帝国コルヴェントスの皇子、ムルハルツァーム皇帝の孫。アナクシアル皇朝より前の時代の神話の登場人物。オヴォストOvostoに「十の試練」で出し抜かれ、皇位を奪われることになった
注6:十の公子の一人だが、血統不明
注7:ダラ・ハッパ人。この場合はアルコス人を意味する
注8:Eusibus、Glorious Reascent of Yelmの記述によると、異名は「丘の上の者Upon Hilltops」(在位イェルム暦111,204年〜111,215年)。アルコスの皇帝としてオヴォスト(非正統)の儀式で即位したが、コルダフの説得で退位した。(以後、「レガリアの守護者にして放浪軍の統領」)Martin Laurie氏によると、シャーガーシュの英雄カルトのひとつである
注9:弓と冠はともに月の都メルニッタMernitaと関連が大きい。ルナー帝国以前の伝説によると、この都ではセデンヤと呼ばれる偽の太陽が信仰されていた
注10:Deumalos、イェルムの息子(神代の惑星)のひとり。「神々の壁」の第一層の7番目。Master of Soverignty
注11:アナクシアル皇朝、ヴァニオラメト皇帝の記述を参照のこと
注12:トロウルの神話をあてはめると、ゾラーク・ゾラーンの功業のひとつ
注13:名前からしてDeshkorgosを連想させる
注14:Kestinoros、アナクシアル皇朝の皇帝だが、その怪しい出自については鮎方殿の記事を参照のこと
注15:Bright Eagle Lord。暗黒時代および灰色の時代のケスティナーディ(リンリディ)の支配者たち。彼らについては同じく鮎方殿の記事を参照のこと
注16:マニマトとダージーン、ダラ・ハッパの関係は非常に錯綜している