ビゼルエンスリーブBiselenslib

下記はEnclosure誌に掲載されたGreg Staffordのダラ・ハッパ下層民に関する記事の翻訳です。翻訳の誤りの責任はzebにあります。


ビゼルエンスリーブ

ビゼルエンスリーブは神々の壁の百柱の神々のひとりであり、したがって起源の神々のひとりです。イェルムは彼女にヘンジャール地方の川を所有地として与え、彼女は多くの溝を掘り、オスリラ河とエリンフラース河をつなぎました。彼女は種を川岸に植えて、多くの葦が生えてきて陽光の元しなやかに揺れました。ビゼルエンスリーブはそれから自分の部族、ジャラの民(訳注1)を葦から編んで作りました。

ビゼルエンスリーブは良い連れ合いを求めました。全ての者が「起源の時代」にはそうしていました。ビゼルエンスリーブは多くの候補を見つけました。ロウドリル、エンヴェリヌスとディセーティが中でも一番有名な候補でした。イェステンドスは特にビゼルエンスリーブと契ろうと熱心でした、ビゼルエンスリーブにはねつけられて、イェステンドスはシュールエンスリーブ(訳注2)と暮らすことにしました。

ビゼルエンスリーブは高き神のひとり、「赤い」シャーガーシュを選びました。彼女は美しい玉座を作り、川岸に置きました。トゥールの葦に歌いかけ、茎は二本、高く伸びて玉座を空高くまで持ち上げました。シャーガーシュは多くの女神に求婚されていましたが、これらの女神たちの中でシャーガーシュの高みまで届く者はいませんでした。シャーガーシュは感銘を受けて、自分の腕輪をヘンジャールの地に置き、シャーガーシュとビゼルエンスリーブの婚礼の証しとしました。ジャラの民が集まって婚礼の寝床を彼らの女神とその夫のために作りました。大地が空と合したこの場所は、アルコスのシャーガーシュ神殿に拡張されました。

ふたりの最初の子供たちは双子の男の子で、ひとりは赤く、地表の上のあらゆるものを支配しました。もうひとりは緑色で、地の下のあらゆるものを支配しました。一緒に、ふたりは共同で都と住民たち、彼らの家族の者たちを支配したのです。

ビゼルエンスリーブはある時、シャーガーシュが他の女神と交わっているところを見つけました。そして愚かなことに、シャーガーシュが婚礼の誓いに誠実であるか、さもなくば彼から別れることを要求したのです。シャーガーシュはビゼルエンスリーブを退けて、彼を魅惑していたオスリラ女神を妻に選びました。ビゼルエンスリーブの聖なる像が彼女の古代の大寺院から歩み去ってしまいました。

ビゼルエンスリーブはシャーガーシュに叱責されて、恥辱のあまり葦の中に隠れてしまいました。ジャラの民は去り、飢饉が都を襲いました。赤の市長の妻は緑の市長の妻を食べてしまうと脅しをかけました。苦しむ都の民は彼らの神に呼びかけました。

シャーガーシュと配下の神聖なる戦士たちは、世界に降臨しました。沼地にいるビゼルエンスリーブを捕まえようとしましたが、決して成功しませんでした。彼らの努力は喜劇的でした。天の神々は沼にはまってしまいました。嵐の神々は煙で窒息しました。戦士たちは葦のなかで迷ってしまいました。シャーガーシュは激怒して、イェステンドスをつかみ、ビゼルエンスリーブを見つけるのに協力しなければ食べてしまうと脅しました。

(イェステンドスはスヴァリアの地から戻っていました。彼は淫らなシュールエンスリーブにはねつけられて、櫂で船をこいで、悲しみの歌を歌うことで過ごしていました。彼はある日、似たような歌を聞きつけました。そして歌の元を探し、隠れているビゼルエンスリーブを見つけたのです。彼女を見つけることができたのは、イェステンドスが水の近くの場所に慣れ親しんでいたからでした。少々の揉め事のあと、ふたりは婚礼のあやまちを聖なる煙で清め、ひとつになりました。ふたりはその後ずっと結婚したままです。彼らは今日のジャラの民の始祖です。)

イェステンドスとビゼルエンスリーブは一緒にシャーガーシュから逃げました。しまいにはオスリラ女神が彼らの元に来て、ビゼルエンスリーブに許しを求めました。誠実な約束と過去の過ちで、自分の引き起こした苦痛に対するつぐないを申し出たのです。ビゼルエンスリーブはこの告解を受け入れました。

償いの一部として、ビゼルエンスリーブ信仰はアルコスで再開され、ジャラの民は戻りました。しかし女神は都には戻りませんでした。彼女の聖日には、女神は数百もの、貧しい葦でできた寺院の中にある注意深く作られた聖なる巣に入ります。大河はいま一度その宝を擁するようになりました。それ以来、ビゼルエンスリーブの女祭たちはアルコスで催される大河の女神オスリラの儀式を見届け、供物の一部を受け取ります。

したがって、今日のアルコスではビゼルエンスリーブは独立した存在として信仰されていますが、大部分、「葦の民」や、貧民によってです。ジャラの民はオスリラ川やエリンフラース川の支流を含めて、水域を自由にうろつきますし、キジャラの民(訳注3)はけがれたダージーンの河川すら遡ります。

ビゼルエンスリーブは今日、本拠であるアルコスで大部分、「葦の民」や、貧民によって信仰されています。彼女はセアードからユスッパまでのジャラの民の主要な神格です。

訳注1:Jarra、葦の民。ダラ・ハッパ、ヘンジャール地方の下層民。保守的、非文明的で文盲
訳注2:シュールエンスリーブを大精霊として崇めるダージーンの民は、異邦人の目からはジャラの民と生活面で同じように見えるが、文化・歴史・言語・人種ともに完全に別の民族
訳注3:Kijarra、穢れたジャラの民。伝統的な生活(無文字・平和主義・葦でできた道具のみ使う)を離れ、(ルナーなど)外界の文明に汚染されている