コリマー部族:鮭を呼ぶ男エンジョーシ

グローランサの魅力は人の生活と神秘が密接に結びついていることですが、神々に始まり、半神とも見まごう錚々たる英雄たちが続き、氏族の創設者たちのようなささやかながら魔術の世界の中で成功と神秘をともに修めた民話の主人公のような者たちが最後にいます。

コリマー部族の伝説の中で出てくるエンジョーシはその一例です。(他の例として「ヒオルドの子ら」の始祖と「白鳥の乙女」の物語もありますが、ここでは挙げません。)

コリマー十代の王、ロスタコスの時代に怪しい男エンジョーシがいくつか部族を訪れて、「鮭を呼び戻す」ヒーロークエストを支援して欲しいと部族の王たちに持ちかけました。

Hero Questのルールブックにあるようにグローランサではヒーロークエストは共同体の支援があって行われる、見返りも大きいが、危険も大きい、異界に対して行われる賭けです。(この出来事は例によってKing of Dragon Passに出てきます)

「万物界Everything World」には神々の戦い以来、三界の魔術と存在が交じり合っています。神教が優勢のドラゴン・パスにも精霊界や魔道界の力が局地的に強いところがあります。(前述のターンディサイの精霊の森などがよい例です。)

水と海の領域でも、北のリバー(エンギジ)が神界の水、北東のクリークが精霊界の水であるのと同列で、ストリームが精髄界の水であることはエンジョーシの魔術の由来を考察する上で困難になりますが、わかっていることだけ挙げていきます。

以下はまりおん殿の川下りの記事です。
新ドラゴン・アトラス:クリーク・ストリーム河下り - まりおんのらんだむと〜く+


ファラオが大蛇を殺して以来、クリークストリームリバーCreek Stream Riverは東北からコラリンソール湾に流れ込んでいたのが進路を変え、エスロリアのライソス川と合流してコラリンソール湾に流れ込むようになりました。この時、ストリームを遡ってクジャータンの泉近くまで卵を産みに来ていた鮭は来なくなったのです。

エンジョーシが持ちかけた話とはこうでした。

「もし王とその部族が私を援助してくれるなら、ストリームに鮭を呼び戻してみせましょう。」

すでに南のバルミール部族の王はこの申し出を断っていました。しかしロスタコス王はエンジョーシを支援することを決め、エンジョーシは儀式を執り行いました。その儀式とは呪術的にエンジョーシ自身が「鮭の父」に扮し、海からストリームを遡行して、コリマーの当時の南東の境であった「七つ滝」を飛んで、ストリームの源流にたどり着くことだったのです。

もし当時(1476年)のコラリンソールから「万物界」の川を遡行したのなら、ノチェットの都の汚濁の近くからライソス川を泳ぎ、新川を通ってファラオの沼地の怪物たちをかいくぐります。その後「獣の谷」の住人と草飼う民の住むところを抜けねばならず、時には上流のアップランド沼沢地から流れてくる混沌のものをもやりすごさなければなりません。

沼地に入ったところで東に向かい、ストリームに入ります。今度はダックの居住地を通過しなければなりません。また途中の考えうる限りの災難や敵対する者の困難、最後にストリームの「七つ滝」を飛び越えなければならない。(神々の戦いやEWFの時代の川を遡行したのかもしれませんが、その場合別の危険が待ち受けていたでしょう。第二期の時代の川の状態は「ドラゴンパス地方地理誌」に描かれています。(日本語版「年代記」220〜225ページ))

にもかかわらず、エンジョーシは成功し、鮭たちはつられて遡行するようになりました。

ロスタコス王は喜んで、エンジョーシが支持者を集めて氏族を創設するのを許しました。これがエンジョーシ氏族で、コリマーの領土の東南を占めるようになりました。

ロスタコス王の時代に、ついに「変成者」サーターが現れて暗殺者を白蟻に変え、ロスタコス王と彼の家族を助けました。王国Principalityの時代がやってきたのです。

グレッグの手描きのコリマーの地図です。