ピューレンディ2

ケンストラータは考えました。

「俺は息子なしでは生きていけない。」

ケンストラータはこの災いを解決するため、自分の「生命の贈り物」(訳注3)を使うことを決意しました。ケンストラータは聖なる地で自分の長柄を地面に突き刺し、「創造主」に談判するために登っていきました。

ケンストラータは「満たされし望み」(訳注4)が問題を解決することを教わりました。もしケンストラータが正しい歌を歌い、正しい行動をすれば、ケンストラータを愛しているすべての者が、必要なものを送ってくれるということを教わったのです。

ケンストラータは[長柄から]降りると、「上方の神々」に対する完全な信頼のもとに、聖なる儀式を行いました。儀式の結果、一頭の鹿が現れて、ケンストラータは素早く、苦痛を与えずに鹿を殺しました。ケンストラータは儀式を正しく執り行い、鹿の皮をはぎ、下ごしらえをしました。次にアライグマが現れて、それもケンストラータは殺し、また準備を行ったのです。他にも獣がやってきて、「大いなる祝宴」を催すのに十分なだけの食べ物が集まるまで続きました。

十分[肉が]集まったので、オロジェリアとケンストラータは全ての生き残りを、腹を満たし、喪われたふたりの息子を偲ぶ大いなる祝宴に招きました。

すべての者が祝宴に来ました。オロジェリアとケンストラータを愛していたため、またピューレンディがいなくなったことを淋しく思っていたため、また飢えていたためです。

みんなが集まり、あいさつの言葉の後、食べ物が運ばれました、オロジェリアとケンストラータ以外のすべての者が恐怖したことには、祝宴の豊富なご馳走の全てが、他でもない、殺されて、調理された男の子であることに気づいたのです。

しかし恐怖や衝撃、悲嘆や敬意から、誰もそのことを話題にしませんでした。それでも誰も食べようとしなかったのです。

オロジェリアとケンストラータは招いたすべての者に、

「どうぞお召し上がりください。」

と勧めましたが、お客たちはそれでも固まったままで、祝宴の主人たちになにも言えませんでした。ついには、影の中から、ガン・エストーロが現れたのです。ガン・エストーロは火の穴からの煙の柱の中から姿を現しました。ガン・エストーロは客達を臆病者と嘲笑い、「真実を告げる者」を呼び出して、オロジェリアとケンストラータになにが起こっているのか告げるように命じました。

「真実を告げる者」は口を極めて謝罪し、その後、告白しました。

「私たちのために調理された食べ物は全てピューレンディの切り分けられた身体に他なりません。」

オロジェリアとケンストラータは初め信じようとしませんでした。そして祝宴に来た者全てになにを見ているか尋ねました。オロジェリアとケンストラータに訊かれると、他のすべての者がその通りであると言いました。ついには、二人にはそれと分からなかったのですが、仲間たちの知恵を信頼し、オロジェリアとケンストラータは真実を受け入れました。

しかしオロジェリアとケンストラータは衝撃を受けませんでした。その代わり安堵とやさしい心を示したことで他のすべての者に衝撃を与えたのです。その後、ケンストラータは、自分が「創造主」の御許まで登り、どのように偉大なる力を得たか語りました。そしていつの日か、ケンストラータが創造主の食卓で前菜(訳注5)として供されることになることも告げたのです。この話で、残りの者たちは、この出来事に関して大いなる恐ろしい洞察を得たのです。

それ以来、ケンストラータを信ずる狩人たちは愛情をもって獲物に祈りを捧げるようになり、狩りに出かける前にはしばしばすすり泣きます。しかし狩人たちはとても熟練しており、槍を投げる腕にはためらいがありません。またどんな獲物も切り分けることができます。そして狩人たちが食べようとしない唯一の場は、葬式のときなのです。

訳注1:ピューレンディ(白い尾の鹿)についてはAnaxial Roster p.64(生息地:フロネラとペローリア) を参照のこと
訳注2:GanEstoro、後にカルマニア神話のGanesatarus。
訳注3:Life-gift。一度にしか使えない強力な魔術。これらの神話では、多くの神々は自分の不老不死の生涯の中で一回だけ使える力を持つ
訳注4:Eriapanoss、Desire Fulfilled、合一、愛、共感の力
訳注5:entreeアントレ、how he would be served as an entree upon Creator's Table

Excerpt from Greg Stafford's Entekosiad