暗黒と再生:イドジャルトス

その後、神々は評議会の席に座り、自分たちのうちだれが指導者になるべきか決めようとした。彼らは皇帝の暴政を避けるために、王を戴かずに、必要に応じて指導者を選ぶことを決めた。このことを心に決めて、神々は再びテュロスとオリアを自分たちを治める者に選んだ。二人は支配のための王笏と籠を受け取り、再び[発言のための]職杖が渡された。そして家畜たち(注1)を解放する役目を負う指導者が選ばれた。神々はイドジャルトス(注2)を選んだ。テュロスとオリアの新たに生まれた息子だった。

そして神々は再び聖歌をともに詠唱し、準備が整うと明るい色を伴って、ガン・エストーロ、「敵なる神」の居住地に進軍した。ガン・エストーロの玉座は黒い山岳で、五種類の人の育てる穀物と、八種類の家畜を捕らえていた[牢獄だった]。イドジャルトスは悪しき宮殿に突入し、中で「冷気の主」と戦った。イドジャルトスは傷ついたが、敵を殺した。その後イドジャルトスは死んだが、イドジャルトスが(死者の国への道への)道を開いたからこそ、そこから出てくる道をも見つけ、世界に自らの喜びを帰還させたのである。我々は今でもイドジャルトスを「良き牧夫」として信仰する。イドジャルトスは自らに従う沈黙の魂の群れを地界に導き、また戻ってくるのである。


注1:暗黒の間に、闇の悪神ガン・エストーロGanEstoroは全ての家畜と穀物を奪い、自らの宮殿に隠した。詳しくはEntekosiadのOrogeria:Purendiの神話を参照。
注2:Idojartos。「火を熾す者」、「灯火の運び手」。
注3:イドジャルトスは魂の案内者psychopompでもあり、惑星の「先駆星」と同視される。しばしばオーランス人の神話をおとしめるために使われるが、この神の神話とオーランスの神話は類似点がほとんどない(ダラ・ハッパでは先駆星を「若き神」Young Godと呼び、若い頃のイェルムであると考えることに注意)

Excerpt from Greg Stafford's Entekosiad