暗黒と再生:儀式が行われた後

怯えるバロヴィウスの都の民は自分たちの神であるケト・テュロスに「神の審理の儀式」を行った。この時は、ヴェロルティナの言うとおりのことが起きた。ケト・テュロスは捧げ物と儀式のおかげで眠りから覚醒し、自分を呪縛していた冬の敵を追い払うことができた。

長い時が過ぎた後、ケト・テュロスは再び眠りに落ち、民は[ヴェロルティナの]信条にしたがって祈祷をおこなった。しかしケト・テュロスは答えを返さなかった。田畑は裸のままであり、[腐肉食らいの]赤いネズミはライオンのように大きかった。

民は集結して、「贖罪の儀式」のために山と犠牲(注1)を積んだ。彼らは10頭の白い雄牛、20頭の黒い牝牛、100頭のいろいろな色の雄牛と50頭の羊、100羽の赤い雌鶏と10羽の黒い雄鶏、25頭の牝豚、1頭の長い湾曲した牙を持つ猪を殺し、燃やした。

ケト・テュロスは応えなかった。この儀式でなんの返事も来なかった。なんの応えもなかったとき、ケト・テュロスの信者は全員信仰を捨てた。神は眠っていた。神の聖所は壊れた贈り物で埋まっていた。神の力は失われていた。静寂が支配した。石女の女たちはすすり泣いた。

ケト・テュロスの信者たちは他の場所に行った。ウルガンスの都の民は、自分たちが自由であると宣言した民のひとつだった。その後、ウルガンスの民はワンドロスという名前の自分たちの市長に対して、彼が神であるかのように祈りと生贄を捧げた。しかし彼らは全員ディジジェルム(注2)に食われた。バロヴィウスの都自体、穴に落ち込み、民の一部は郊外に住んでいる親戚に会うために登って脱出した。しかし大部分の民は死んだのである。

ひとつを除く、全ての他の都市もみな滅びたが、なぜなら「ヴェロルティナの教え」によって、自分たちが望むどんな神でも信じる神にできると信じたからであった。この考えは間違いだったのである。

ハーグの都では、女祭ディヴェーリア(注3)が納得していなかった。炎が踊りだすとき、ディヴィーリアは他の者が逃げ出した時でも留まった。ディヴェーリアはもう走れなかったのである。ディヴェーリアは、灰がまだ熱を持ち、民がすこしでも生き残っていたら、自分の死んだ「生命の神」と接触する機会が残っているのを感じていた。ディヴェーリアは壊れた火を熾す棒と手が滑るのを防ぐ帯(注4)を取り、男たちも女たちも、手を決して休めなかった。掌が固くなり、肩が痛み出すまで彼らは不休で棒を回し続けた。彼らは自分たちをできうる限りこのことのために捧げ尽くし、極限まで、「生命の神」に対する信仰を投げ出そうとしなかった。

多くの民が訪れて、彼らをあざ笑ったが、その笑いは幽霊に取り付かれたその時代のハーグの都で聞かれた唯一の笑い声だった。ディヴェーリアたちは、二人の者が消耗のあまり死んでも回し続けた。

しかし73と半分の数の週(注5)の後、「掌で火を熾す者」たちの粘り強さは報われた。ディヴェーリアはある日のこと、熱を感じ取り、一筋の煙が渦を巻いて昇っていくのを嗅ぎ分けた。優しい息吹と甘い火口でディヴェーリアはもう一度点火し、生命の閃光は燃え上がり、育てられて炎となった。ディヴェーリアは炎で松明に火をつけ、松明は再びデネグ・エルスキ(注6)となった。灯明は明るく燃え上がった。大いなる祭壇の炎は紅炎となり、そうしてエルスキ・テュロス(注7)は目覚めさせられた。エルスキ・テュロスは最初火花を飛ばし、次に吠え、最後に歌った。民もまた歌いかけ、これが我々が今も歌う「炎の歌」である。

テュロスは自分の聖なる都の民を守護し、調和とともに民と生き、民とともに生き続け、民を悲惨な世界から守った。テュロス神がいたから、他の場所には全く神がいなくとも、ペランダの都市のなかでハーグのみが暗黒の恐怖を生き延びたのであった(注8)。

注1:hecatomb
注2:digijelm、ダラ・ハッパ語でいう「地獄の悪鬼」。トロウル族のこと
注3:ヴァレーレによるともう一人の赤の女神の信奉者
注4:Palmster、火を熾す錐を手で回し、弓を使わないことを示している
注5:73.5週間。514.5日であり、ゲーラの逆ピラミッドの階段の数と同じである
注6:DenegErski、生命の炎
注7:ErskiTuros、「灯明を持つテュロス神」
注8:ハーグの都の(後の?)破壊はいくつかの互いに矛盾した物語の中で語られている。

Excerpt from Greg Stafford's Entekosiad