サーヴァル王と蛇の守護神

下記の記事はWeb上の記事、Kings of Seshnela「セシュネラ王統譜」の抄訳です。翻訳の間違いの責任はzebにあります。(後にグローランサ人の記録として少々アレンジされた記事がStafford LibraryのMiddle Sea Empireに再掲されました。(訳注1))

サーヴァル王
称号:オルファルスケトOrphalsket伯爵、マルキオン守護戦士、後に聖なる大君主Sacred Overlordとも呼ばれた
統治:729-734
継承:家系不詳、しかしウルマルの直系でないことは明らか(訳注2)
サーヴァルの統治は「見えざる神」の力に対する裁きの結果であり、「見えざる神」の介入が世界の正義を守るために彼を救済したのである。

ウルマル[大公]の没後、魔道師の一派は、導師ピリーフPilifが次に王位に就くことを宣言した(原注1)。彼は「新たなる秩序」の学派の高僧で、極めて強力な魔道師だった。王国の多くの民が彼を支持したが、貴族の大部分が抗議し、多くの聖職者は判断を留保した。二年間、鋭い議論の応酬がなされ、最後にはマルキオン教会自体がピリーフの即位に反対し、セシュネラ貴族の中からふさわしい王となる一人を選ぶように要請する宣言を出した。

サーヴァルが選ばれ、推戴を受け入れた。賞賛される戦士で、国を憂えている行政官の一人であり、平民達に親しまれていた。彼はすでに騎士の儀式に「新たなる秩序」が参加する件で声高に反対の意を表していたため、この学派の敵意を買っていた。

魔道師達はすばやく決定的に行動した。サーヴァルを狩り立て、攻撃するために全ての強力な勢力を集中させたのである。全ての者が驚いたことに、サーヴァルは魔道師たちの行動から逃れた。サーヴァルは得られる限りの全ての者から味方する約束を取りつけて、罠を張りめぐらした。彼は任務に就いていない「血の修道師団」を急襲し、彼等を皆殺しにした。そしてその修道院を略奪し、燃やした。修道団の財宝を携えて、サーヴァルはサンデーラル市Sanderal(原注2)に逃れた。そこには彼にしたがう約束を守っていた民がいたのである。ピリーフも力に満ちて彼を殺すために急行した。

ピリーフとその不浄なる集団は全ての者が再び驚倒したことに敗北した。サーヴァルの軍はさらに少しの従う数を加えた。しかしそれでも、サーヴァルの「忠実なる十二人」(原注3)は、ピリーフとその配下の魔道師達に対抗するだけの実力を持たなかった。短い決戦の後、十二人の大部分が殺されていた。そしてピリーフは、激怒しておのが魔力で巨大化しており、「セシュネラ王権の力」なる存在を召喚する呪文を投射した。(原注4)

巨大な蛇が大地の下から首をもたげた時、空中を舞っていた魔道師達すら地面に叩き落とされた。この蛇はまるで冠をかぶっているかのように、頭の上にサーヴァルとその仲間達を載せていた。この生き物は全ての魔術を吸収してしまい、ピリーフと「新たなる秩序」の一団を呑み込んでしまった。そして地面の中に潜りこんで、後に一体の霊魂のみを残していった。「忠実なる十二人」は全て生きており、蘇生されていた。その後、彼等はひとり残らず敵を全滅させた。この現れた偉大な霊魂は魔道師達をどうやって抑えるかについてさらなる指針を与え、また姿を消した。

教えられた通り、サーヴァルは全ての禁止されていた儀式を用いて戴冠した。そのために上古の時代と同じように、「聖なる大君主」と呼ばれたのである。これらの儀式はそれが用いられる以前にすら、最も古い儀式として認められていたものであり、「初代王」フローラー(原注5)を聖別し、王位を授けるために用いられていたものとされていた。ある者はこれらが異教徒の儀式であるとして抗議したが、儀式は遂行されてしまった。(噂にもかかわらず、サーヴァル王が異教の儀式に参列した事実はなかった。)

また、サーヴァルは教会から「新たなる秩序」教団の残党を滅ぼすために特別な祝福を教会から授けてもらった。そしてこの作戦を残りの統治の間続けたのである。彼等の異教徒の儀式と反乱を目の当たりにした「新たなる秩序」からなるジルステラの派遣軍は条約Allianceを条件にとった陸軍と海軍の助けを頼みにした。しかし代わりに、「新たなる秩序」教団の側に調査がなされた。ジルステラ本土ですら教団は解散されて、その思想の内容も「見えざる神」の許容する範囲内におさめられるように明確にされた。

この出来事は哲学者達と聖職者、そして他のジルステラ指導者達の間に実質的な再審問(原注6)を起こさせるきっかけとなった。彼等の議論の結果として、それらの基準は新しい一揃いの使用可能な精神的指針として表されるようになった。ある種の魔術は禁止され、他の魔術はどのようにして許可される形にするか、その定義はどのようなものか言明された。(「新たなる秩序」学院の魔術とアイデアの多くは結局のところ「神知者」によって実行されてしまった。彼等のやり口と態度が最後に帝国全体の性質を規定することになったが、彼等の仕事はまだ数世紀後のことである。)

脚注1「導師ピリーフが次に王位に就く」:「不変の書」は魔道に身を捧げている者が王になることを否定しており、マルキオンの法に対する背信であった。

脚注2「サンデーラル市」:今では「甘き勝利の大聖堂」がウルマル公爵の司令の陣のあったところにある。大聖堂の周囲にある静謐な林は導師ピリーフが前進するごとに急速に生い茂った樹木である。巡礼の者は「戦の巡礼地」にある森をさまようことで過ごす。記念碑から記念碑へと渡り、起きた戦いについて学び、研究から得られた教訓について黙考するのである。

脚注3「[サーヴァルの]忠実なる十二人」:「忠誠の十二の詩」は善良なる男たちの犠牲の下に生まれたものである。もっとも興味深いことには、十二人の中にはふたりの女性が含まれていたことである。ひとりはサーヴァルの婚約者であるエラゼメラであり、もうひとりは伝説的な「剣の女」なるオフェリアであり、あらゆる協定において「騎士なる女性」の定義を行い、世界における居場所を認めさせた女性である。[この性別の役割の厳密性の破壊は「腹立たしいディレンマ」を生み出した。後の数世代もの教会の者を混乱に導いたのである。彼らは女性を「室内に押し戻そう」としたのである。しかしサーヴァルに由来する伝統の神聖さは彼らの望ましき勝利を妨げたのであった。]

脚注4「セシュネラ王権の力」:ピリーフは自らの力を強めるために召喚を行った。自分の動機が正直で誠実だから、魔力の増大を得ることができると信じたのである。しかしどちらも違っていたのであった。

脚注5「初代王」フローラー:フローラー王はセシュネラ初代の王である。彼は内戦を防ぐために、ブリソスを出て行く平和の民の移民を導いた。彼は主に、無私の王位への義務を体現した者である。[フローラー王はフレストルの父であり、息子によって見つけられたカースト制を破壊する「喜び」の道を受け入れた。民は都合よくフローラーの半分異教的なやり方を忘れ、フローラーの土地の女神、セシュナとの婚礼と、彼から続く王朝はよくて半ば人類ではないということを忘れ去ってしまった。フローラーの子孫は「蛇王朝」と呼ばれたが、彼らは足の代わりに蛇の胴体を生やしていたのであり、いかなるマルキオン教の伝統からも生まれない強力な力を有していたのである。

脚注6「再審問」:この秘密会議(コンクラーヴェ)は「マルキオンの時代」以来、集まった最大の賢人の集まりのひとつと今ではみなされている。(多くの「新たなる教団」の魔術やアイデアは結局のところ神知者によって実行されてしまった。彼らの流儀や態度が結局のところ全帝国を特徴づけることとなったが、そうなったのは数世紀後のことであった。)


訳注1:元々のKings of SeshnelaのWeb上の記事は中立的な(非グローランサ的と言ってよい)記事ですが、新たに出版されたMSEの王統譜はアルシュ・フォーラのゲルフージェというジルステラ人の著者によって「サロヴァンの皇帝伝」に基づいて編纂されたことになっています。

原注というか脚注は、原典に基づいていますが、脚注自体ゲルフージェが書いたことになっており、きわめて原著者の主観に基づいた説明になっています。

訳注2:サーヴァルの即位時代を簡単に説明すると、セシュネラは第二期始めの内乱・分裂ののち、弱体化してラリオスの暗黒帝国の支配を受けました。セシュネラはジルステラの上陸してきた解放軍に「解放されて」独立を果たしたのです。(もともとジルステラはセシュネラの移民の国なので、卑近なたとえを恐れなければ、第二次大戦でアメリカに解放されたイギリスのようなイメージです。)この時代、セシュネラに王権は断絶していました。解放から、50年たっています。

サーヴァルは以後ハリフォール王がルアーサの手で滅びるまでの古セシュネラ王(帝)国王朝全ての始祖です。(アンマック・スヴァガッド・ミグロス・イロトスなど「海と陸の皇帝」は全員彼の子孫です。)Web記事には載っていませんが、MSEの記事の方にはサーヴァルの祖先について記述があります。(異教の獅子神の子孫ではないのかという仄めかしともとれますが)以下がMiddle Sea Empireで付記されたサーヴァル王の先祖の一覧です。
サーヴァルは曙の時代の伝説的な英雄、大ダモールの偉大なる血統である。以下は曙以来の二十七人のサーヴァルの祖先である。「塔の」ダンダモール、ヴォラレストール、ダノラール、メレサーヴァル、「黄金の男」ダンサーヴァル、「偉大なる従士」ダンダモール、「鷹狩り士」ベロナナヴォール、フレクサーマル、マロスタール、ダンラル、メベスタン、「荒野の」ダンサーヴァル、「若い方の」メベスタン、グロドレストル、「誇り高き」メベスタン、ドロサーヴァル、「偉大なる騎士」ヴォラレストール、「二度生まれし」ダンダモール、ダンサーヴァル、「ラリオスの」ダンドモール、「継承者」メベスタン、「幸運なる」ダンサーヴァル、「でぶの」サーヴァル、「収集者」メベスタン、「辺境の」エヴィスダモール、「剣士」サーヴァル、「湿原の主」ダンダモール。
グレッグの第一期の記述によると、大ダモールなる第一期の存在はマルキオン教の布教をあくまで妨げた地方の半神だったそうです。