ドラゴンキル Dragonkill!

ドラゴンキル
第二期末期、ワームの友邦帝国は迷走と内乱を続け、いつしか、ドラゴンズ・アイの超王は人間たちに教えた秘密が正しく使われていないと判断しました。1042年、突如としてユーフの地の人間たちのうち、竜の心を持つ有力者は全員暗殺され(注1)、また下の者も突如として古ワーミッシュ語を理解できなくなりました(注2)。

突然できた権力の空白に北方の三国では争いが始まりましたが(注3)、1100年ごろ、カルマニアのハラン大王、ダラ・ハッパ皇帝クマルドロス、セアードの「召喚者」シャルヴェナタルス王は共通の敵を滅ぼすために休戦し、「英雄たちの召集」が行われました。この軍勢は無敵の黄金の群れ、もしくは真性黄金部隊と呼ばれました。この軍勢には多くのイェルマリオの志願兵が含まれていたようです。

プラックスでは牙傑ジャルドンが全部族を召集しました。北・東・西の三方からケロ・フィンの地に攻め入ったのです。(注4)この軍隊の目的は、単にドラゴニュート族を従えるだけでなく、滅ぼすことでした。ドラゴニュート族の巣に攻め入り、竜たちの輪廻の卵を破壊しようとしたからです。(注5)

1120年のことです。文学的な表現を許せば、突如、山がうごめき、立ち上がり、それが無数のドラゴンであることが判明したのでしょう。最初に夢ドラゴンが群れをなして襲来し、次に真正ドラゴンが目覚めました。(心の弱い者は見ただけで発狂しました。)そして虐殺が始まりました。これは戦争ではありません、戦争というには彼我の戦力差が大きすぎました。想像をおぎなうため、少々オノマトペを付与します。

夢ドラゴンたち:(ザワザワザワ)ギャオオン!
イェルマリオンたち:今こそ我ら命を捨てる時!
真正ドラゴン:(グシャッ!)

まず「三頭の旋回飛行」がはじまりました。ゆっくりと三頭のドラゴンが黒ウナギ川一帯を周回し、焼き払いました。この時はまだ、破壊は徹底的ではありませんでした。

現在のところ、この時に出現し、存在が確定している怪獣、いや、真正ドラゴンは二体です。赤竜、黒竜です(注6)。

赤竜にはクリサ・ヨールKrisa Yorという名前があります。この竜がドラゴンキルでもっとも活動的でした。この竜はオルムズゴーン渓谷を巣にしていて、このときもこの地から飛び立ち、ケロ・フィンに向かい、この山を数回回りました。軍隊を破壊し、都市を焼き尽くし、時たま呑み込みました。(このとき滅びた都市のひとつがハーナ・ガムーンHarna Gamoonです。)その後西北に飛んで、燃える溶岩の線をまっすぐ残していきました。これが「溶岩の道」です。
赤竜:(ガブリ!ムシャ!ムシャ!)
オーランシーたち:ウギャッ、ギャー!

黒竜にはドラスダウDrathdawという名前があります。(注7)この竜は巣としている黒竜山脈から飛び立ち、スリュム部族およびイアロス部族を全滅させ、ドラゴン・パスの大都市のひとつを死滅させました。
黒竜:(ゴオ、ゴゴー)
プラックス人たち:ギャッ、ウギャッ、ギャー!

「焦土Scorch」はドラゴンキルの最後のしめくくりでした。十二頭以上のドラゴンが翼と翼を接するように陣形を組んでケロフィネラからセアードに飛び、周囲を徹底的に焼き尽くしました。これが起こった後、その一帯はしばらくの間草一本生えませんでした。
ドラゴンの群れ:(ボボボ、ボボー!)
ダラ・ハッパ人たち:ヒイイイイイ!!!

「牙の」ボスタニソスのように食ったドラゴンの歯に変身したとか、ドワーフ鉱山の王、イシディリアンに奴隷になるかわりに匿われたとか、アンデッドと化した(ディレクティ)、元々不死の呪いを受けている(ジャルドン)などなど、生き延びるために魔術を駆使した人々を除けばほぼ全員生き残りませんでした。ごくごく少数の生き延びた兵士は故郷に恐怖に取り付かれたまま帰り、ドラゴンの恐怖を国々に伝えました。

この出来事の後、「死線」の南、「十字架線」の北の地はドラゴン・パスと呼ばれるようになりました。わずかな生存者も土地を捨てて難民となって落ち延びました。ドラゴン・パスの住民は非人間だけになり、周辺の民はすべからくドラゴン恐怖症(注8)となりました。


注1:青い月のトロウルの暗躍、この暗殺で、遠隔のインゴルフの弟子たちすら命を落としました

注2:King of Sartar、ミナリアの記憶喪失(Minarian Memory Removal)と呼ばれる現象。突如としてドラゴンのように話し、考える能力が「まるで個々の頭から抜き取られたように」失われた。

注3:「戦争の三世代」。すでに「三兄弟」の時代の団結は失われ、三国は山岳の戦いやアルコシアード戦役で大いに争っていた。

注4:百万は誇張にしても、三方の軍勢を合せると五十万以上の未曾有の軍勢でした。「一なる老翁」などドラゴン側を援助する勢力も多少残っていましたが、結局のところまったく援軍の必要はありませんでした。

注5:オーランス人によれば、ドラゴンたちは周辺の国々を挑発し、大ごちそうを計画したということになっています。

注6:ドラゴン・パスのボードゲームのユニットのうち、緑竜は第三期の半ば、茶竜は英雄戦争まで目撃されません。

注7:この竜はクラグスパイダーの盟友で、インゴルフと何度か争いました。

注8:Fear Dragonの特徴。ゆえに17C現在でドラゴンの術をまた求めている者は狂人とみなされます。

Reference: Tarsh In Flames(article:"Notes on the History of Tarsh" by Greg Stafford), Anaxial Roster (article:"Dragon, True"), King of Sartar Japanese Edition(邦名「ドラゴンパス年代記」記事:"忘却について")