ヒョルト王6:ヒョルトとイヴァーン

下記はBook of Heortling Mythologyの一部の抄訳です。訳の間違いの責任はzebにあります。

ヒョルトとイヴァーン

イヴァーンはこれまで生きていた女性の中で最も偉大である。イヴァーンは我らの民の母である。

イヴァーンは偉大なる一族の子孫であった。アーナールダの娘イステナの血を引いている。この一族はデスデリーナが「皿の男」と結婚して、オン・ジョリ族の「古の砂洲」に移住するまで「大地の部族」の一員であった。戦いの中でデレンナは名声を得て、愚かしい「籠の壁」を作ったが、小さな船の数々も作った。すべてが暗かったとき、ヘレステーニはエンヴェリングの民の火の番であり、その地に人々は集まって火を見て泣いたものだった。ヘレスティーニの孫娘はジェレスで、氷の時代に人々を率いた。イヴァーンは「金髪」と呼ばれるジェレスティーニの娘で、ジェレスティーニはその言葉ですべての人を魅了したオレセーネの娘で、オレセーネは「跳ねる猫女」の娘であり、「跳ねる猫女」は「滑走する」ギナーラの娘、ギナーラはすでに話したジェレスの娘である。

「大暗黒」のときにイヴァーンはヒョルトと結婚した。冬の冷気が全てを破壊する前の最後の愛の花であった。両方が世界は破滅に瀕していると知っていたのに、ヒョルトはイヴァーンに求愛した。イヴァーンがヒョルトと結婚すると、最後の命ある精霊たちと神々が氷の中で婚礼に参加した。希少な「女王の花」が咲いた。

イヴァーンの夫が怪物たちと戦い、「世界の破滅」と対決するために出発すると、イヴァーンはひとりで暗黒の脅威から子供たちを守らなければならなかった。イヴァーンには妖魔どもと戦う力はなかった。彼女の力は平和と豊かさと与えることにあったからである。

天候は悪くなる一方で、濡れそぼつ血の雨は激しく吹きつける真紅のみぞれとなった。雪は絶え間なく降り続き、氷の這い寄る指先はすべてを覆った。イヴァーンとやせこけた一団はひどく苦しんだ。イヴァーンは多くの仲間を夜の生き物たちに奪われ、氷の王は詩を吟する子供を送ってきて民を凍えさせ、炉の炎は消え、氷の魔は荒野からやって来て牛を襲った。

氷柱がステッドの屋根から大きく伸び、氷の巨人が茅葺きを壊すと、老人たち、女たち、子供たちはステッドから離れることを強いられた。イヴァーンは荒野で民を率いた。イヴァーンは持てるだけ持つように民に命じた。民はまだ残っている全ての食糧と、生き残っている羊や豚や鶏を運んだ。

荒野でイヴァーンは民が暗黒の恐怖を生き延びるのを助けた。混沌に立ち向かって戦う代わりに、イヴァーンは隠れることと逃げることに技を用いた。一団はさまよいながら洞穴や洞窟に隠れた。冷気が羊を殺し、豚は深い雪の中で姿を消し、「吠える狼」どもが鶏を喰らった。多くの民が飢えたが、イヴァーンは生き残りの民に根菜や木の根や木の実を集めて雪の中食べ物を見つける方法を教えたのであった。

あらゆる時にイヴァーンと民は目に見えるものと目に見えないものを含めて、怪物どもに狩り立てられ、取りつかれていた。「影の指」が近寄ってきて多くの者を硬い氷の中に凍りつかせた。「黒い亡霊」は全ての者に悪夢を見させたし、マリアの霊は野営地の上をうろついていた。「吠える狼」はイヴァーンの野営地を取り囲もうとした。イヴァーンは飢えた民に籠を作って、氷の傾斜を滑って逃げることを教えた。

「飢えた死者」が来ると、イヴァーンは彼らを言葉で破壊した。すべてが氷と雪で覆われてどんな食べ物も見つけられなくなると、イヴァーンは自分の一部を差し出して食べさせた。それで子供たちは飢えることはなかった。

しかしすべてはさらに悪化し、怪物たちと寒さは酷くなるばかりだった。イヴァーンの一団は人数をひとりひとり失っていき、イヴァーンの友人たちや僕たちや、はては一族までも失っていった。最後にはひとりになって、イヴァーンは自らのあまりにも多くを生き残りたちや子供たちに与えてしまったため、疲れ果て、丸くなって休むための場所を見つけた。