バイソスの神話3

正しき神、バイソス
バイソスはケフ・タヴァルとエススの息子であり、ケレウスの年若い兄弟でした。

ケレウスはバインドルの王の称号を唱えました。ケレウスが年老いると、王の愛する踊り子たちが誘拐されて、人食いの神であるヤー・ガンに生贄にされました。ケレウスは彼らを解放するため、戦士たちと親族たちを派遣しましたが、彼らもヤー・ガンの血みどろの儀式の中で殺され、踊り子たちを解放することに失敗しました。

バイソスは恐れて、復讐と、同族たちの魂を解放することを誓いました。バイソスは自分とともに行こうとする全ての民を集めて真鍮山脈の東の地に向かい、ウェンダリアと呼ばれる湖の国に入りました。ここには冷酷で悪い種族であるデディ・オローニン(注1)が住んでいました。彼らは自分たちの主人をまねて身体を青く塗り、領主たちがするのと同じように、農夫たちの頭となろうとしていました。しかし彼らはそれでも奴隷であり、自分の種族の裏切り者だったのです。

エルヴ・オロニウス(注2)という名の王がこの地を統治していました。エルヴ・オロニウスはバイソスの民に、

「お前たちの持っている全ての家畜を渡し、農夫や奴隷として定住せよ」と命じました。

しかしバイソスは拒絶し、ヤルトスの地(注3)で大きな戦いがあって、バイソスが勝ちました。バイソスと配下の者たちは敵を彼らの館まで追跡し、必要ならば火をかけました。これらのオローニン人どもの多くが死にましたし、さらに多くの者が逃走しました。

勝利が確実になると、バイソスは自分の部族の白い雄牛を生贄にしました。そしてその皮を自分の宮殿(注4)の土地を測るのに使いました。土地を測り、守護神を埋めて、境界石を置きました。彼らは最初の年に良く働いて、他の民の助けに回りました。

その土地に住んでいた民の全てが飢えていました。オローニン人どもはこれらの民を常に怯えて飢えているようにしていたのです。彼らはバイソスの獣たちと民を食べたいと望んで、もう少しのところで戦いを挑もうとするところでした。しかしバイソスはこれらの飢えた民に、

「獣たちから一回きりより多くの食べ物を手に入れるにはどうすれば良いか、教えてあげましょう。この方法は神々がそうするように望んでいる方法なのです。」と言いました。

最初に、彼らは雌牛から乳をしぼり、牛乳を飢えた民に与えました。牛乳の一部はチーズにされました。このような方法で食事を与えられたので、飢えた民は、神々のぜいたくが自分たちにやって来たのだと考えたのです。

バイソスは自分の姪たちと甥たちに、この地にやって来て、この土地の司祭や女祭となることを頼みました。彼らはそうして、聖なる器をウェンダリアの地で住むためにもって来ました。彼らは聖なる石に、ファルスやカプト(注5)を置いて、大いなる雄牛のために聖なる囲いを立てました。彼らは鋤を祝福し、去勢牛の群れにくびきをかけて、男たちは畑を耕しました。そして畝に大麦の種を蒔いたのです。見ている民は、飢えてほとんど死体のようでしたが、なにをやっているのか全くわからず、畝に蒔かれたものが食べられるかどうかも判りませんでした。しかし彼らはペラの種を見たことがこれまでに一度もなかったのです。

注1:DediOronin。文章のとおり。
注2:ErvOronius
注3:Yartos。今日も知られる、オローニン湖南西のそれほど有名でない聖地
注4:バイソスの宮殿。今日でも儀式の場である。普段は単なるはだかの丘陵だが、儀式の時は聖なる牛が戻ってくる
注5:Phallus、Caput。聖陽や聖頭。豊穣の象徴