ストーム・ブル教徒の心理1

以下はAvalon Hill版Lords of Terror89ページから90ページの記事の抄訳です。訳の間違いの責任はzebにあります。「混沌感知」の呪いとウロックス教徒の感覚についての記事です。(また彼らの悲劇性についても)

ストーム・ブル教徒の心理
アルキブ・ジャハナス、ランカー・マイの「野の賢人」の記述した知識の集成本より抜粋。

この本はサーター・ジョンスタウンにおいて太陽暦1619年の嵐の季、真実の週、風の日に伝承の大家たちの長、シストロルムとランカー・マイの「剣持つ学士たち」の寺院のほかの賢人たちに献呈された。

私は文化や文明、種族の一般論をこしらえることには躊躇する者ですが、過去数年の間の調査によって、私は野蛮なウロックス教徒たちは賞賛すべき男女であり、その悲劇性において特有であると信じるに至りました。

貴方がおそらく軽蔑すべき、無価値な蛮人どもを罵倒する前に、私の結論は反駁できないものであり、「灰色卿」の名の下に、私の公平さは疑う余地のないことを言わせていただきたい!

ウロックス教徒に彼らの考え方について直接尋ねるのは最初のうち、必然的に不毛であります。私の予測通りでした。信徒が文明の地に戻ったときは静かで、超然として近づきがたい人としてです。より受動的な存在に戻ることができる前に混沌に対する、自分の滅ぼす努力について黙想するのです。いろいろな理由から、これが途方もない難行であることを悟っており、したがって運命論的で、気難しく、しばしば暴力的な人物であり、みんな避けようとするたぐいの者となります。

ウロックス教徒は休むことを好みません。ストーム・ブルの信徒、特に入信者やそれ以上の位にある者は何日もの間、睡眠の欲求に耐えることができるということを明記しておきます。狂戦士の狂乱は魂が封じられている肉体の殻から来る生理的な欲求を無視することができるのです。しかしこの性向は、後でこのような狂戦士の一団に随行した私にとって明らかになったように非常に危険です。私は彼らについて、より安全なリスクランドを離れて、手に負えない地であるドラストール西部の地に向かったのです。

これらのウロックス教徒はリスクランド人で、古代の城砦であった、コマー・クーランの空洞になった廃墟に住んでいます。(オーランス信徒のステッドの領主、「石の」レネコット卿はこの廃墟を「怪物の骨」と呼んでいました。)「凶運の土地」への進入に随行することを許してもらうため、私は聖王国の市場から運んできた食料や、エールや、数多くの薬草にいたるまでを贈り物として差し出しました。

中でも重要なことは、一週間以上を随行者として、助言者として、より重要なことには混沌に対する経験を持った敵対者としての私の価値を彼らに認めさせることに費やしました。(赤い顔の粗野な男のように見える)ストーム・カーンは私の混沌の知識に静かながら印象付けられ、結局のところ、しぶしぶながら、慎重に私を受け入れることに決めました。

一週間のあと、我々は「凶運の土地」の外皮を破り、「渇きの森」の付近に入りました。カーン達はこの国をはっきりと「見通す」ことができたし、なにが変わりやすく、なにが明白であるかわかったので、我々の道程は比較的安全でした。私は信徒の一人が汚染されたカビを攻撃したときに吸い込んでしまったカビの胞子を殺すために、薬草のオサフラを噛まねばなりませんでした。この種の胞子の根に由来する多くの致命的な感染から身を守るためでした。

触手を生やした樹木の下にあった邪悪な祭壇に達するまでに数時間を要しました。祭壇そのものが解体された野生の巨人の不恰好な胴体で、死体の残骸が乾燥して百万もの数のカビの芽胞を生やした半分腐った状態になっていました。

混沌とのいかなる出会いも完全なまでの恐怖でありました。ウロックス教徒はおぞましいスライム・ブルーが音を立てずに巨人の胴体の下のトンネルや巣穴からしみ出すことを知っていましたが、そうであることは彼らが地獄の穴に入り込みたいという熱意を強める働きをしただけのように見えました。こうして我々は入り口を発見し、降りていきました。

灰色卿に誓って、私はおびえる子供のようでした。闇の中でほんのちょっとの動きがあっただけでもしり込みしました。一時間の粘り強い調査の後、ウロックス教徒たちは自分たちの探していたものを見つけました。狂戦士のひとりが直ちにこの巣穴がセッドに属していることに気づいたのです。彼は警告の叫びを上げ(彼は物理的に痙攣を起こしていました。)苦痛の元に、

「うめき声をあげる異形のものどもの群れが俺達を襲ってくるぞ!」

という悲鳴を上げました。(長い時間の後に)我々がリスクランドに戻ると、くだんのウロックス教徒が言うには、

「俺がかつて俺のカーンと共に混沌退治に行ったとき、あるセッドの魔女長が俺のわき腹をずたずたにした。」

「それ以来、俺は「熱病の混沌Feverchaos」を他の混沌のかたちから、肋骨の古傷から走る、燃えるような感覚から見分けることが出来るようになった。」

他のウロックス教徒が言うには、

「セッドの混血のブルーを探り出すとき、俺の目は一番ひどいブルの風に当てられたように、刺すように痛む。」

さらに他の者が言うには、

「「熱病の混沌」にでくわすと、いつも俺は怯えた子供の泣き叫ぶ声を思い出す。」

私はこれらの肉体に現れるトラウマが、瞬間的にしか彼らを襲わないということを見て取りました。その効果は消えかけているかがり火に油を注ぐようなもので、完全に消え失せるまでに、短い間燃え上がるのです。

その瞬間の後、私の随行者達は破壊されたブルーの屍骸の上を歩きながら、熱狂に取りつかれました。私は彼らの速度についていく望みを捨てて、その場を浄化することに時間を費やしました。ウロックス教徒たちは地面の上の野生の巨人の胴体から絶えず滴り落ちる血液や呪われた滋養物を食べている、巣穴の中にはびこる恐怖の存在にひるむことがありませんでした。

奇形のものがウロックス教徒たちの上に降りかかり、くずにおおわれた化け物がよろめきながら彼らに向かっていきました。しかし彼らはためらうことなく進み、トンネルを通る烈風のように叫び声を上げていました。多くのウロックス教徒が喉が枯れ、血を流し始めるまで叫んでいました。私は一人のウロックス教徒が悲鳴を上げるブルーの腹を貫いたとき、怒りで泣いているところを見たのです。

私の心身ともにこのような拷問には耐えられませんでした。私は教徒たちにもうやめてくれと懇願しましたが、彼らは進行を続けました。そして実のところ、彼らが私の言うことを聞いていたとは思えません。彼らの無関心は計り知れないものでした。私は自分の魂がもうすでに「灰色卿」とともにあるのではないかと恐れました。

彼らは私の命を自分たちの命と同程度の価値とみなしていました。つまりほとんど価値がないか、全く価値がないものとして。私はこれら全ての倒錯の存在からもうすぐ彼らが背を向けることを想像しました。それなのに彼らはまだ進み続けたのです。全く自分たちの安全のことを考えていませんでした。

[つづく]