神々のみっつ目のあやまち

神々のみっつ目のあやまち:
季節というものがない時代、人々には悩みごとがありませんでした。そしてある時男たちが目覚めたのです。これからお話しするのはどのように目覚めが起こったかです:

踊りがありました。いつものように、作物の収穫を祝う踊りでした。その頃からすでに我々は確実に作物が育つように、踊っていたのです(訳注1)。

「槍持つ者」ヴォゲステスという男がいました。この男ははぐれ者でした。彼は他の男のように体に色を塗ろうとしませんでした。そして人々が踊るときはいつも加わろうとしませんでした。彼のふるまいで誰かが動転することはなかったし、いつも彼を踊りに招きいれるため、なだめたりすかしたりしました。

月(訳注2)が沈んだときに、踊りが始まりました。そしてこのときの踊りはもっとも危険でしたが、それはあまりにも多くの神々が降臨していたからです。

それぞれのさだめられた踊りによって、いかなる危険な存在に対しても備えがしてあることになります。だから水は流れ、また風は吹き、輝く空は確固として存在していたのです。このようにすることで、「仮面をかぶった神々」(訳注3)と踊るのは容易になっていました。しかしこの時は「色なき者(訳注4)」が現れてひとりの男にとりついたのです。

月が沈んだその夜、「色なき者」が体を乗り出し、ヴォゲステスの足の裏から入り込み、とりつきました。そしてヴォゲステスは他の人々が踊っているところを見ました。踊りは向かいの谷で行われ、遠く離れていましたが、あたかも踊りの場にいるようにヴォゲステスは踊りを見ることができました。

このときヴォゲステスは世界を見てひどい衝撃を受けました。なぜならヴォゲステスは知る限りのものの全ての苦しみをはじめて目にしたからです。無数のウサギたちが欠けた頭蓋骨をさらし、割れたオーグナーの卵のかけら、数え切れない数の緑色の潰れたブドウの実がありました。

「少女神(訳注5)」を切り取る神々の手の中のナイフを感じ取ったのです。彼は女神の血が地面に落ちるたびにすすり泣きました。これまで誰も感じることのなかった感覚でした。

ヴォゲステスは藪の中に飛び込みました。三日の後には飢えましたが、狩りで獲物を殺すことも、草花の実を摘むこともありませんでした。そのものに苦痛を与えることを恐れたからです。

ヴォゲステスはその後、飢えて苦しみつつ自分の民の下に戻りました。ヴォゲステスが最初に会ったのは彼の家族でした。そして彼らは何か間違ったことが起こったことを知りました。「夢見」(訳注6)は彼のもうひとつの目で観察し、ヴォゲステスを荒野に連れて行きました。

ふたりは何週間も一緒にいました。ヴォゲステスが近づいてくる獣を見つけるたびに指差し、「夢見」はその獣に名前をつけました。そして獣の正体を明らかにしたのです。その後、「夢見」はヴォゲステスを人々のもとに連れ戻しました、この時は「満月の踊り」の時でした。

この時、ヴォゲステスがその場にいて、「色なき者」は再び彼を目覚めさせるためやって来ました。この時、ヴォゲステスは精霊を彼の元に呼び出すための歌を歌いましたが、それらの精霊の名を他の者は誰も知りませんでした。

しかし、その場にいる男たちの全員が理解し、死を認識し、生きるために殺さなければならないという自覚から恐怖で凍りつきました。それ以前は誰も気にしなかったことでした。キツネがウサギを食べるのと同じだったのです。

しかし今や「嘆く者(訳注7)」が言うには、

「私に見えるのは彼らの骨、そして骨の上に憑いているのは幽霊たち。幸運な場合でも不幸ですすり泣き、うめいている。不運な場合、ひどく傷ついている。」

「花咲かす女祭(訳注8)」が男たちに尋ねました。

「なにが起こったのですか。なぜ踊りの自分たちの役目を果たそうとしないのですか。」

男たちは説明しました。

「苦しみがあるから踊ることはできない。」

「花咲かす女祭」は心配し、言いました。

「もしあなた方が踊りの役を果たさなければ、世界はばらばらになってしまいます。」

彼女は頼み、懇願し、ついには命令しました。しかし男たちは彼女の命令に従いませんでした。

ヴォゲステスはその後、全ての傷ついた男たちを連れ去り、彼らの最初の頭となりました。彼らは自分たちの崇める「黒い山」へと向かいました。そして山の側面に大いなる神殿を掘りました。そしてその洞窟で自分たちが恐怖で怯えることのないように、「死」の神の信仰を始めました。

しかしその試みはうまくいきませんでした。この男たちは「迎え入れる女神(訳注9)」にはなれませんでした。彼らの儀式はこれまで単なる義務だった単純な仕事を美化する働きをしただけでした。

この男たちは自分たちの神々の言いたいことを正しく理解することができませんでした。

神々は言います。

「死は存在する。」

これらの男たちはその代わりに考えました、

「死は良いものである。ゆえに死は多い方が良い。」

それからは彼らは狩人でなく、殺し屋になりました。そして彼らの神々もまた殺し屋になりました。

これが三つ目のあやまちでした。

訳注1:We danced even back then to make sure the plants grew.
訳注2:この時代に月は知られており、昇ったり沈んだりしていた。(後に忘れられた。)
訳注3:強大な神々も仮面をかぶっているので、人間が交流するのが可能になっていると考えるべきか。普段の踊りの儀式に現れる面子としては「内なる炎」、「怪物の男」、「金切り声」、「輝く顔」がいたという話。
訳注4:WelPolo, Without Color
訳注5:DenegEria
訳注6:Urvangar、Dream Seer。AroTurruのシャーマン
訳注7:TannuVanus, Mourner
訳注8:JenForo, who sings and whose words become flowers
訳注9:DerMaElsor, Goddess of Taking Back like orgasm

Excerpt From Greg Stafford's Entekosiad