オーランスのアーナールダへの求愛

Orlanth's Wooing of Ernalda
以下は以前言及した、Wyrm's Footprint (同人誌Wyrm's Footnoteの良い記事を集めたもの)の82ページの記事の抄訳です。翻訳の誤りの責任はzebにあります。



オーランスと大地(話の中では女神アーナールダとして登場する)の関係について、楽しい話がある。この話はどのようにオーランスが農地の区分けを行うようになったか(もちろんこれは我々が推測するとおり、大地の女神の権利でもあるわけだが)を説明している。しかし実のところ、耕作が営まれている地域ではオーランス人の族長の権利となっているのである。

世界が若かったとき、ウーマスの息子たちは自分達のものとなるだろう驚異を選び取ろうと大地を歩き回っていました。無邪気な子供だったオーランスは豊饒の大地から色あざやかで、刺激的な生命が萌え出るのに魅惑されました。オーランスはアーナールダに会いにいって、自分が大地を求めていることを告げました。

アーナールダ:「私の大地をお求めですか?嬉しがらせて下さいますね。未来の世界の王よ。土と土が生み出す宝をお望みなのですね。わが君、貴方は賢明でいらっしゃる。貴方は寛大でもあるのでしょうね?」

オーランス:「「腕広げて迎える」オーランスが俺の名前の一つ。全ての神々が俺の気前の良さを讃えるだろう。特に貴方、豊かな上に美しい貴方にこれを贈ろう。俺の「牛うなり」(注1)だ。貴方が俺を求めるときに鳴らすがいい。 俺は貴方のものだ。」

その後、オーランスはもらった贈り物を持って兄たちのところに行きました。しかしオーランスの兄たちがよく見ると、もらった土地の草花は折れたり千切れていましたし、あちこちの方向に散らばってしまっていました。嵐の神々は土地をもてあそぶのに飽きて、オーランスに投げ返し、彼のもらった価値のない贈り物を嘲笑しました。裸の土地からはなにも出てこないことに気づくとオーランスは怒って、アーナールダのところに向かいました。

オーランス:「嘘つき!裏切りに満ちたトリックスターの女!どんな身持ちの悪い女だろうと、奴隷女だろうと俺をこんな風に扱うべきではない!俺は嘲笑われ、辱められ、欺かれた。俺は怒り猛り、強く、暴力に満ちている。貴方に俺の力を見せてやろうか?」

アーナールダ:「ああ、最も力強く恐るべきご主人様、創造の王にして恐怖をもたらす者よ。お慈悲を下さいませ。私に償いをさせて下さい。私の土地と交換にふたつ贈り物を差し上げます。貴方様は公正でいらっしゃいます。贈り物の価値を認めてくださいますね?」

オーランスは不公正だと思われるのは望まなかったので、価値のない、不毛の大地を返すのと引き換えに、二つの贈り物を受け入れることを認めました。アーナールダはまず、「牛うなり」をオーランスに返しました。そしてオーランスは確かに自分に相応しい贈り物だということで喜びました。

次の贈り物は大いなる女神の肉体の愛で、単純ですが非常に恍惚となり、オーランスはこのようなものがこの世にあるとは信じられないほどでした。驚異の念に打たれ、びっくりしてオーランスは兄達のところに戻りました。他の嵐の神々は再びオーランスを嘲笑いました。

「カモにして愚か者、女の策略はお前の頭を決してまともには働かないようにする。お前が返した価値のない贈り物を見るがいい!考えなしに取引するとはどこまでも単純なことよ!」

兄たちの言葉は正しいように思えました。というのは裸だった土地は再び豪奢な実りを出していました。この時はところどころでは以前よりさらに実り豊かでした。以前に木が生えていなかった高地や、草が生えていなかった乾燥地がありました。オーランスは激怒し、うなり声をうならせ、雹を降らせながら、再びアーナールダのところに稲妻のごとく向かいました。

オーランス:「情なき嘘つき!「欺く者」にして「愚か者に乗ずる者」よ!俺の心は変わり、俺の目は開くだろう。もし貴方が俺を再び欺くならば。貴方が俺から取ったものはつまらないものではない!俺は奪われた。貴方が「奪う者」だ。」

アーナールダ:「強大なる主、「震撼させる者」にして「打ちのめす者」よ。貴方は私を悪用なさいます。貴方は不公正でいらっしゃる。私は貴方の命じることをいたしました。嘘はついておりません。私がそれほど不正ならば、大地が私を祝福するものでしょうか?貴方は道理が分かるだけ賢明でいらっしゃるでしょう?」

オーランス:「俺は多くのものを見た。貴方が俺に与えたもの全てにおいて、俺の手に入ったものは貴方の手に入ったものより少ない、貴方がくれたもの全ては貴方が言ったものではなく、俺と俺の所有するものにとって役に立たないものだ。俺は自分の目の前に黒い怒りの的を見ている。」

アーナールダ:「偉大なる神、「一族の守り手」よ。御心の怒りをどうか晴らしてください。ご覧下さい!この土地の驚異の半分は貴方のものです!貴方の雨、実り多き驚異は私の美を広げるでしょう。信じてください。この富を永遠にするのを手伝ってください!」

オーランス:「偉大なるご婦人、豊かな胸を持つ者よ。あまりにも多くの策略を俺によこし、俺はあまりにも多く欺かれた。俺に名誉をくれ、俺に正義をくれ。嵐の神の怒りは致命的だ。」

アーナールダ:「お慈悲を下さいませ、偉大なる神よ。再びご覧下さい!私の実りのため貴方の助けを必要としております。身を守るため貴方を必要としています。私の幸福のため貴方の存在を求めています。私は弱く、助けを必要としています。私は貴方のものです!」

オーランスはまだ慎重で、始めのうち拒絶しましたが、アーナールダの力の発露を見て、留まることの価値を認めました。少し後に、オーランスは自分の運命を受け入れました。アーナールダとオーランスは自分達の宗教における婚礼の誓いを設定し、互いに誓い合いました。

オーランスの兄たちがオーランスを嘲笑うと彼は無視し、自分の妻の甘い秘密のうちに避難したのです。

(注1)牧童が使う楽器。転じてオーランスの吹きすさぶ風の音