オロジェリアとケンストラータ1

下記はルナー帝国のアリール地方(17C現代のドブリアン君主領)につたわる神話です。ペランダの神話に共通する神々が登場しますが、この地方の特色も色濃く残っています。

主人公のひとりのオロジェリアは、月の女神の化身の一つとルナー帝国に主張されていますが、原住民たちはこの考えを否定しています。

オロジェリアとケンストラータ
ある日、よそ者たちが女たちのキャンプを訪れました。ケンストラータはこの狩人のリーダーでした。赤い毛皮を着て、オロジェリアのキャンプの誰よりも背が高く、奇妙な彫り込みのある「長柄」の得物を持っていました。

ケンストラータはオロジェリアに会えてとても喜びました。

「俺は貴方がうわさの通り偉大であると願っている。」

ケンストラータの言うことには、「俺はやりがいのある挑戦を求めているのだ。追跡の技にかけては、俺についてこれる者は誰もいない。」

ケンストラータは誇りました。「誰もがやたらに多くの道具と武器を持ち運び、長い追跡の足を遅らせる。俺に必要なのはこの「長柄」だけだ。そして俺は地上を歩く生き物ならどんなものでも捕まえられる。」

オロジェリアは彼の大言壮語を最初面白がりました。

「よそ者が私たちのところで狩りの腕を自慢するのは珍しいことではありません。」オロジェリアは言いました。

「私はここに来る前にサーベルタイガーを殺した男たちに会いました。しかし長鼻獣や突き刺し獣に出くわしてからは、彼らは素早さでのみ思い出されるようになりました−逃げ足で!」

ケンストラータは長いこと返事する前に考えました。

「俺は若者だったときに、母の野営の敷物のうえに座り、父の雷石を使ってサーベルタイガーを殺した。」ケンストラータは言いました。

「だからとりたてて大したこととは思えない。しかし貴方が俺を長鼻獣のところに連れて行くときには気をつけることにしよう。」

彼の言葉はオロジェリアを喜ばせました。オロジェリアは狩人たちを野原に連れて行きました。獣を見たとき、男たちの何人かは恐怖で口も利けなくなりました。獣がこっちを向いて狩人たちを見つめたとき、恐れる者は皆逃げ去りました。

ケンストラータは、長鼻獣が襲ってこないことに気づくと、部下の者たちに命じました。男たちは大きな落とし穴を掘って、とがった杭を穴の底に植えました。その後狩人たちは風上に向かい、ケンストラータは自分の長柄を使って火を熾しました。野を狩人たちが焼き始めると、長鼻獣や他の獣はパニックになり、落とし穴に殺到しました。落ちて死んだのです。さらに、落とし穴は火が燃え広がるのを食い止めて、獣の肉の料理の役も果たしました。

ケンストラータたちは獣の全てをオロジェリアの母神に、友好と歓待の礼として捧げました。家族のみなが肉をたらふく食べて、獣の皮で多くのテントや新しい服を作りました。

「難しくはなかった。」ケンストラータは言いました。

「それに俺の速さを証し立てることはなにもしていない。」

オロジェリアは言いました。「素早いということでしたら、長脚獣を探すべきですね。」

ふたりはこの獣を探しに出ました。ケンストラータは追いついてこの獣を捕らえました。しかしオロジェリアはそうしなかったので、技比べで初めて負けました。捕らえようとするのを止めようとはしませんでした。彼女は自力で前やったように長脚獣を捕らえようとしたのです。しかし捕まえることで自分に得るものはなにもないように思えたのです。その後、オロジェリアは長脚獣狩りをしなくなりました。

ケンストラータはまだ満足していませんでした。「俺は一番大きい獣と一番速い獣を狩った。頭の良い獣はなにかいないか。」しかしオロジェリアは戸惑いました。彼が言っていることはもしかするとただの大言壮語でなく、事実なのではないかと考えたからです。

「雌ギツネですね。」とオロジェリア。「一番頭が良い獣です。しかし捕まえたものは誰もいません。」

「やってみよう。」とケンストラータ。

Excerpt from Entekosiad by Greg Stafford

[つづく]