神々のひとつ目のあやまち

神々のひとつ目のあやまち

男の神々は怒っていました。祖母女神(訳注1)が自分たちを創ったとき、劣ったものとしたからです。
「不満の騒音」、「雷鳴」が集会の場までやってきて、言うことには、

「大いなる母(訳注2)が俺たちを作ったとき、子供を産むことをできなくした。そのせいで俺たちは使い捨ての存在になった。」

俺の言うことをきいて、新しくやり直せと言いました。

女神たちは辛抱強く聞いて、聖なる寄り合いを開き、衆議一致しました。神々の要求することは受け入れることができないということでした。

怒った神々は最も賢く、もっとも忍耐深い「輝く顔」(訳注3)のところに行きました。

「金切り声」が「輝く顔」を呼び出して言うことには、

「俺たちは間違いを正して欲しいと祖母女神に嘆願したが、はねつけられた。不満だ。」

「俺たちは夢見(訳注4)にも助言を求めた。そして鹿やチーターのように跳び回った。天空を歩き、「九つの館」を訪れた。黒い川を泳ぎ、新たな術を求めて遠く広く探した。

しかし満足できない。」

「以前は、女達のいうことを聞いていて、なんの問題ももめごともなかった。

しかししばらく経って、女達が多くの子供を連れてきたが、そのことで満足は得られなかった。

俺達は重要な存在になりたいのだ。しかし大いなる母は拒絶した。だから俺達は怒っている。」

「輝く顔」が言うことには、「まあ待て。魂の調和は中正にあるのだ。そして祖母女神やその長老たちに命令して何かをさせることは誰にもできない。」

「あんたはわかっていない。」「金切り声」は言いました。

「あんたは自分が劣った存在であることがわかっていない。そして女神ができることがあんたにはできないんだぞ。」

「私には分かっている。そして知っているが、それで腹は立たない。私の基準はそういうことにはない。」

しかし男たちは性格上「雷鳴」に似ていたので、「雷鳴」と一緒に去り、不平を鳴らし続けました。

ついにはゴレンタルがなにか特別なもので、独自で自分達のものだけのものを作るべきだと提案しました。

そうすれば自分のことをましな存在と感じられると思ったのです。

しかし「雷鳴」はむしろ女神達より自分がえらい存在だと思いたかったのです。

祝宴を催して自分達になにができるかしゃべり続けました。そのため、自分の根源そのものが男性として分離されていること(訳注5)に気づかなかったのです。

そのため、自らの土地の神秘の中に入っていく代わりに、自分が住んでいる館そのものを変えようとしました。

そこで「よろこびの声」が自分達の願望を言葉にあらわしました。
「女達の誰もできなかったことをやろう。」と言いました。

「俺達は自分自身になるのだ。」

これは神々にとって新しいことのように思えました。

しかし今やそう認識してしまったうえに、自意識を新たな力や道具と勘違いしてしまったのです。

もちろん男がたいていのときそうであるように、彼らは半分だけ正しかったのです。

どんな女性も男性のように「分離」することはないので、男神たちは、ついには自分が望んでいた独特な存在になったことを知りました。

神々が人間の男達にこのことを話すと、男たちは気質にしたがって同意しました。

「それでは、」「絵を描くだけ」は言いました。

「さらに木を登る一歩を進めよう。我々は自分達を抽象化するのだ。」

そして抽象化はそれほど悪いものではありませんでした。

なぜなら神々の「抽象化」は「分離」していることを除けば、我々の抽象化とたいして違わなかったからです。

神々が人間の男達にこのことを話すと、男たちはほぼ全員が同意しました。

そして彼らは「凡人」と呼ばれるようになりました。

「よし、」ある神はさらに言いました。「もっとやってみよう。次は俺たちを重要にするのだ。」

そうすることによって彼らは道を誤りました。そして最初の「あやまちの神々」が別れていきました。

そしてこの愚行は結局のところ、彼らの性質で、彼らが感じたり認めたりしないで重要性を与えてきたこと、それ自体が彼らの本質の一部であるということになったのです!

これらの神々は人間達のところに行き、この教えをもたらしました。多くは加わりませんでしたが、加わった者は「自己中心的な者」と呼ばれるようになりました。

「さらにもう一歩できる。」「あともう少し」は言いました。
男の気質として常にお互いに出し抜こうとしているからです。

「俺達はもっと高みに立てる。単に重要であるようにふるまうだけでなく、「もっとも重要で唯一である」ようにふるまうのだ。

それから俺達は外に行き、世界の万物をこの尺度でとらえるようになるだろう。」

今や、自分の幻想によって自分の本質から離れてしまい、この神々は愚行から悲劇へと進んでしまいました。

この神々がこの計画を人間達のところに持っていくと一部は受け入れました。このような者たちは「論理家」と呼ばれるようになりました。

彼らは今や深刻な脅威ですが、それは「自然界」に全くつながりをもたないからです。

彼らは特に西方で人気があり、魔道士と呼ばれています。

「そしてもう一歩だ!」「内巻き渦巻き」は言いました。

「これからは俺たちは自分の基準で計れないものは、全てあざ笑いおとしめることにしよう。」

彼らはすでに自分の不自然なやり方に狂わされていましたし、このような神々に従った人間は「不完全なる者」と呼ばれました。
全ての主だった者は皆出て行ってしまっていたものの、小神たちはまだ終わっていませんでした。

「そしてさらにあるぞ。」「目的が全て」が言いました。

「俺たちはこれを唯一の道とし、他の者をあざ笑うだけでなく、強制的に他の者がいうことをきくようにしてやる!」

この神々がこの考えを人間達のところに持っていくと多くの者が受け入れました。

彼らが最初の「破壊する者」たちで、古の世界を破壊したのはこの者たちでした。

ふたりの神が同時に話そうとしたとき、たちまちお互いに怒鳴りあい、争いを始めました。

彼らのしもべも当然同意せず、暴力はさらに当たり前のものになりました。これが彼らの性というものです。

しかしほぼ全ての男が一度は「不完全な道」について考えていたことがあったために、また「論理家」を許容する意志があったために、「凡人」はもはやはっきりとした行動がとれなくなりました。

「論理家」や「不完全なる者」や「破壊する者」は「凡人」の間でリーダーとなりました。

凡人の性として新しい考えを持つ誰にでも従ったからです。

「論理」と「不完全性」と「破壊」は短い間に限って大きな成功をおさめました。

なぜなら全ての「凡人」が結局のところ奴隷にされたり殺されたからです。結果として、彼らは支配されたままでした。

そして我々は浅知恵や感じることなしの行動や「大いなる母」の意識を持たずにいる世界で暮らすようになりました。

これが神々の最初のあやまちでした。

訳注1:EthElsor。祖母女神
訳注2:MaElsor。大いなる母、もっとも偉大な母
訳注3:Brightface。ディコーリア地方の太陽の神性
訳注4:Urvangar。Dream Seerの意。
訳注5:VogTestized。VogMaradanがUlEriaから分離したことで世界がはじまった。

Excerpt From Greg Stafford's Entekosiad