インゴルフの失敗

インゴルフの失敗

マングース版の設定にはいまだ登場していませんが、「竜の友」インゴルフIngolf DragonfriendはEWFの英雄のひとりです。King of Sartar(グローランサ年代記)およびHistory of the Heortling Peoplesに登場します。

グレッグ・スタフォードが彼を取り上げるのは、ドラゴンの道がいかなるものなのか、またグローランサで解脱とは何を意味するかをもっとも表現しているからでしょうか。

この人はEWFの方法論にしたがってドラゴンになることを目指した神秘家のひとりです。しかし、失敗します。

グレッグ・スタフォードの元設定によると最終的に解脱(EWFではこの状態をオルヴェインOrveneと呼びます)に成功したEWFの神秘家は「天翔ける」オブデュランObduran the Flyerただひとりであり、他の派手な行動をした連中はみな道半ばで伝統主義者団に殺されるか、1042年にドラゴニュートに暗殺されます。

失敗した神秘家たちはそれぞれ異なる執着を持っていたために失敗したのですが、インゴルフに関しては、その執着は、周囲の人々に向けられていました。

EWFが分裂し始めたとき、インゴルフは弱者の嘆きに心を動かされました。

ドラゴンの道は、修行によって大きな力が得られますが、その力は目標の解脱に達するためのものであり、使ってしまうと力は喪われてしまいます。インゴルフはあと一歩のところでしくじってしまいました。

EWFの首脳達は889年に「ドラゴンの道を促進する信仰Accelerated Dragon Worship」を開始しました。

これは首脳達をいわばドラゴンの神として民に崇拝することを強要するものでした。解脱を目的としながら、首脳達を現世にかえって縛り付けるこの動きに反発する動きが強まり、離反する者はインゴルフの元に集まって庇護を求めました。また、古の道への回帰を主張する「古の伝統主義者」の動きが強まり始めた時代でもありました。

インゴルフはこれらの者たちを守るために(善意のために)何度もドラゴンの力を使わざるを得ませんでした。今日でいうターシュ地方のコルドロス島で、インゴルフは何度も英雄アラコリングの攻撃を撃退しました。

また内争に巻き込まれたため、クラグスパイダー率いるハリキーヴのトロウルたちの攻撃を受け、アルコスの狂戦士たちを撃退しました。

最終的にインゴルフの属していたヴィンドリ族は滅ぼされ、インゴルフは翼を使ってラリオスのヘストヴェン地方に親族と共に隠棲します。そこでしばらく平和に暮らしましたが、インゴルフの力は戻りませんでした。

というのは、黒いドラゴンがやってきてインゴルフを呑み込んだからです。

この後、インゴルフがどうなったのかははっきりしません。グレッグの草稿によると、彼はまた輪廻の輪には捉えられたものの完全な失敗ではなかったようです。彼の弟子達はみなドラゴンの姿を得ることに成功しましたが、最終的には1042年に皆殺害されました。