ルナーの祝日4

帝室儀式(年末)

・Under the Red Moon掲載の記事とほぼ同一の記事がIssariesサイトにあります。

赤の皇帝は聖祝期の最初の週(訳注1)、帝国と宇宙を護持する儀式を行います。

この儀式は危険です。ルナーは生と同じくらい死にも敬意を払っているからであり、儀式が死の勝利で終わる可能性もあるからです(訳注2)。

当然のことながら死が勝利するのは哲学的、思弁的なことを別にすれば普通のルナー市民は歓迎しません。

皇帝はたいていの場合、儀式をグラマーで行います。首都の広大な円形競技場の中央、「時の記念碑」という七層のピラミッドで皇帝は「年度の再生の儀式」を行うのです。

赤の皇帝と側近、教導師たちとごく一部の選ばれたものだけがピラミッドの段の上で儀式に参加します。数千もの大衆が競技場に集まって儀式を見届けます。

祝賀の最初の六日間、皇帝とその側近は六つの方角(訳注3)の代表から贈り物(訳注4)を受け取ります。

五日目・六日目は当たり前の世界がその回りをめぐる見えざる世界を祝うのです。

七日目曙に皇帝は「年度の杖」をお披露目します。これは皇帝が毎年手で彫るもので、翌年の計画や展望、策略をその中にこめるのです。

七日目の日没に天上からの使者が光の鍵を皇帝に渡し、皇帝の体は分解します。「年度の杖」は皇帝が戻るまで、中空に浮いたままになります。

皇帝の親しい側近のみ杖を取り巻いて魔力の助けを皇帝に送ります。真夜中、儀式がうまくいくと大衆は皇帝との接触を失い、気を失います。(訳注5)皇帝が姿を消している間どうなっているか知る者はいません。(訳注6)この儀式の間、わずかな間違いでも翌年の大凶となりうるのです。

しかし、たいてい皇帝は戻ってくるので、完全な吉兆として終わります。

訳注1:ルナー暦では聖祝期の最初の週は年末
訳注2:この点、ほとんど常に敵に勝利するオーランスの儀式とは異なります。
訳注3:東西南北と天界・地界
訳注4:贈り物は、実質的な貢納の事もあれば、象徴的なジェスチャーの場合もあります。ホーン・イールと赤の皇帝マグニフィクスが初めて出会ったのはこの儀式の最中でした。ホーン・イールはドブリアン君主領を父に献上したのです。
訳注5:原文のとおりだと皇帝が戻ってくるのは七日目の日没だがこれはおかしい。おそらく八日目の夜明けか
訳注6:エギたちに報告しているとの説があります。