天空の崩壊1

天空の崩壊
ある程度神代の天体になにが起こったかの記録はグローランサでも各文化で共通しています。しかしもちろん、一番関心があり、もっとも深く記録を行っていたのはダラ・ハッパの星見たちです。

下記の変化は、Glorious Reascent of Yelm p.88-89に依拠しています。

1)まず始まりは「天蓋の中心」(注1)の中天、太陽のまばゆく輝く天体がありました。いわゆる黄金の時代です。この時代、夜はなく、天の光が消えることはありませんでした。

ダラ・ハッパ人はこの天体をイェルムと呼びます。空は黄金色に輝いていました。

2)太陽から十個の天体が分離し、東西南北、北西・南西・北東・南東、極西・極東に広がりました。(注2)この中でルナーの教えで、現在まで生き残っているとされる天体はシャーガーシュのみです。

他にはブゼリアンとカルグザント(注3)ではなかったかとされる天体はありますが、現在のルナー帝国では天体としての存在は否定されています。

面白いのは、ルナーの赤の女神の化身とされている名前がこの中に二つ含まれていることです。(Verithurusa(s)とZaytenera(s)です。)

・この時代に昇ったその他の天体
*エンテコス(モスカルフ)

3)ウーマトゥム(Umatum)が天蓋のひび、「陥穽」から現れました。この天体は(私の考えですが)おそらく現在の「オーランスの輪」に似た天体の集合であったと思われます。(注4)ウーマトゥムは螺旋を描いて天の中心に迫ります。

4)ウーマトゥムの動きに引きずられて、十人のイェルムの子らはある者は地上に墜落し、またある者は惑い星の動きをするようになりました。

赤の女神の化身とされるヴェリスルーサは、おそらくこの時不規則な動きを見せるようになりました。グレッグの草稿にはウーマトゥムの反逆を真似るヴェリスルーサを非難するイェルムの神話があります。

5)シャーガーシュ(ジャクレクリンド)とウーマトゥムは何度も衝突し、ウーマトゥムはしまいには極北で大地に墜落します。このときから天蓋は南北に揺れ動くようになりました。

ウーマトゥム(ウーマス)の子らはケニリアの海から父親の武器を持って散っていきます。

・この時代に昇ったその他の天体
*ユーレーリア(マスターコス)

ついに嵐の時代がはじまります。

6)「禍の合Doom Conjunction」、オーラナトゥス(ウーマトゥム)や蝙蝠星がイェルムの天宮に攻め寄せます。イェルムは分解し、一部はビジーフとして西に沈みます。

残った精髄はアンティリウスで、これが嵐の時代のダラ・ハッパの守護神です。

7)ローリオン、天の川の竜が天界に攻め寄せて、空は青くなります。この時代に月の女神と目されるダラ・ハッパの天体はふたつ、VendaraとSedenyaがあります。トロウルたちはこの時代に天に昇った天体をAnnillaと呼び、パマールテラ人はSeratamalと呼びます。

これらの星のどれが青く、またいつ沈んだり、昇ったりしたのか、どれとどれが同じなのかは主張する者によって異なります。ルナーはこのうちのどれか、もしくは全てをLesillaと呼んでいます。

・この時代に昇ったその他の天体
*ロカーノウス

8)暗黒が近づくにつれ、星々はひとつずつ姿を消していきます。

最後に沈んだのがシャーガーシュでした。ダラ・ハッパの神話によると、この時シャーガーシュは世界を破壊します。

9)空に星が全くない時代がありました。オーランス人は「大暗黒」、ダラ・ハッパ人はカツクルトゥムと呼びます。
   

天空の崩壊2

以下の天体の動きに関しては、Glorious Reascent of Yelmの著者プレントニウスPlentoniusの政治的考えがかなり入り込むことになるので理解が難しくなります。

この人はコルダフ王朝の御用学者です。

10)徐々に空に星が戻ってきて、明るくなりカルグザントとシャーガーシュとダラ・ハッパ人に目される天体が星見たちに見つけられます。(注5)

このうちカルグザントは、当時ダラ・ハッパを支配していた騎馬遊牧民(ジェナロング王朝)の守護神として崇拝され、シャーガーシュは「殺し屋」、「奴隷使い」と呼ばれていたアルコス人の守護神でした。

このころ、青いメギツネの(ユールルダUlurda)星が天に昇りました。後にルナーが月のひとつとこの星を呼ぶまではほとんど重要視されませんでした。

11)Glorious Reascent of Yelmによると、カルグザントとシャーガーシュが天上の覇権をめぐって争ったとありますが、これが文字通り、天上で星が争いあったのか、それとも信者が争ったのか定かではありません。(私としては後者と考えています。)

シャーガーシュは南道(注6)に動きを制限され、カルグザントは依然として比較的勝手気ままに天上を動いていたことが示唆されています。

12)「曙」。この嵐の蛮族たちにとって、自分たちの神(オーランス)の優位性を示す出来事で問題なのは、ダラ・ハッパ人がこの年[太陽暦0年]を取り立てて重要視していないことです。

はじめて太陽が昇ったといいますが、太陽といえるほどこの時代に光を発する天体はなく、夜と昼はまだまだ不分明でした。

おそらくこの時代に、太陽と目されていた天体はカルグザントだったのかもしれないし、「先駆星」(注7)だったのかもしれません。ヒョルト人はこの星をエルマルと呼んでいました。

最初のうち、「先駆星」とカルグザントは完全に黄道の反対側を動いていました。すなわち片方が沈むと、片方が昇っていたのです。しかし徐々に二つの距離は縮まっていきます。

13)「くつわの合Bridle Conjunction」、Glorious Reascent of Yelmにおいて、[太陽暦111年の]もっとも大きな謎がこの出来事です。というか、プレントニウスは、この年に初めてアンティリウスが昇ったと主張しています。(注8)

この年、カルグザントと呼ばれた太陽が先駆星に蝕を受けました。私の推測ですと、先駆星がカルグザントと蝕になり、二つの星が重なったまま沈みました。

そして(どれだけ時間を置いたかはわかりませんが)太陽(プレントニウスによると、アンティリウス)が昇りました。この時から昼と夜ははっきりと別れるようになり、先駆星が昇ったとき、空は暗いままになりました。(注9)

14)「イェルムの再昇天」、この出来事は正直、天体に変化があった出来事ではありません。

御用学者のプレントニウスは、コルダフの即位を、イェルムの帰還としたかったのでしょう。

といっても、太陽に変化はなかったものと思われます。

それにFortunate Successionでは、イェルムの再昇天を、コルツァネルム大帝の治世の「太陽停止」(375ST)であるとしているようです。いずれにしても、いつイェルムが昇ったかは、ダラ・ハッパ人以外の民が関心を持ったことはないのでしょう。

注1:この天蓋の中心がスパイクなのか、Yuthubarsなのかは議論の余地があるところです。

昔のGlorantha Prosopaediaでは黄金の時代、天空の神々は自由に動き回っていたと書かれていた記憶があります。

しかし、黄金の時代をStagnant Ageと呼ぶオーランス人や、秩序を愛するダラ・ハッパ人らしい考えとは言えないと思います。神知者の挿入した考えではないでしょうか。

注2:イェルムの十人の子らのダラ・ハッパ名は「神々の壁」の第一層の2番から11番に列挙されています。

問題なのは、Glorious Reascent of Yelmに載っている十の天体の名称が、おそらくこの十神のいずれかに照応していることを示唆しているものの、シャーガーシュを除いてはっきりとは示されていないことです。

注3:カルグザントは、騎馬遊牧民の太陽神です。カルグザントとイェルムの天体は、かつてはっきり分かれていたのであり、カルグザントはイェルムの子らの一柱であったと、ダラ・ハッパ人は主張しています。

そしてなにが起こったのかは、見方によって異なります。

注4:この「ウーマス、大いに天宮を騒がせる」のオーランシーの視点の神話は、Thunder Rebels p.142に載っています。

そしてウーマスを騙したとされる「白き神」Zenfelこそがゼイテネラスではないかと思われます。

注5:オーランス人のいう「銀の時代」。この時代は徐々に星は戻ってきたものの太陽といえるほど明るい天体はなく、夜と昼の区別ははっきりしませんでした。

注6:南道がどういう軌道を描くのかはルナー帝国の時代になるまで分からなかったという話です。つまり、カルグザントはそれ以上に不規則な動きをしていたということでしょう。

注7:この現在もある惑星の謎について列挙するのは今回はやめておきます。ただ言える事は原作者のGreg Stafford自身、意図的に先駆星とアンティリウスを混同させようとしているということです。ちなみに天体のルーンは両方とも同じ形をしています。

この時代の太陽を肯定するダラ・ハッパ人はアンティリウス、もしくは先駆星と呼び、否定するダラ・ハッパ人はカルグザントと呼ぶのではないでしょうか。ちなみに、Broken Council Guidebookの年表では、太陽暦0年に昇った太陽はアンティリウスであると書いています。

Bridle Conjunctionについて調べたい方は、Glorious Reascent of YelmのPage 42(Anarchy Yearの記事), Page 57(Lightforeの記事), Page 83(Young Godの記事)を参照してください。はっきり言ってますますわけが分からなくなること間違いなしです(笑)。

注8:この嵐の時代の守護神の名前が太陽に付けられたのは、アンティリウスがイェルムの先触れであるという、ダラ・ハッパの神学に基づいているのでしょう。

注9:おそらく、騎馬遊牧民は、この出来事を、逆にカルグザントが先駆星、もしくはアンティリウスを飲み込んだ出来事として記憶しているのでしょう。「くつわの合」とこの出来事を呼ぶのは、カルグザントが馬神だからです。