フォンリット

以下はMissing Lands p.62以降の抄訳です。訳の間違いの責任はzebにあります。

フォンリット

「私は{都市の名前}の都から来た強大なる{主人の名前}の奴隷である。貴方の主人は誰か、よそ者よ。」

地域の描写
フォンリットは喜ばしい亜熱帯の気候の地域である。植生は豊かだが、エルフのジャングルになるほど繁茂していない。フォンリットの主な区分は、アーファジャーン、カリーシュトゥ、バナンバ、モンドロ(訳注1)である。

住民
フォンリットには主にトラブ(Torab)と呼ばれる青い肌の民と黒い肌の民の混血が住んでいる。上流階級は信じられないくらい裕福で権力を持っているが、貧しい民は無慈悲に重税をかけられ、貧困のあまり魂を抜かれた奴隷となっている。

文化
フォンリット文化。アーファジャーンの民は独特だが、奴隷制度にそれほど支配されていないからであり、その文化はカリーシュトゥと比較すると興味深い相違点を見せる。

アーファジャーンの奴隷でない民の間では、社会は二つの宗派に分けられる。その家族の母親がツァニャーノ(革新派、訳注2)かボルガディ(守旧派、訳注3)の家系のいずれであるかによる。革新派は態度が開明的で、奴隷が結婚することを許し、(まれにだが)自由を買うことを許し、限定されてはいても、宗教的な選択権を享受する。守旧派は獰猛かつ無慈悲であり、「生きることは苦しむことだ」が彼らのモットーである。そして彼らは自分たちを、奴隷に対するのと同じように執念深い基準で裁く。いくつかの都市はひとつかもう一方の宗派で支配されているが、大半は党派で分割されている都市である。

言語
フォンリット語。カリーシュトゥ語、アーファジャーン語、モンドロ語。バナンバ語はラスカル地方(訳注4)の大部分で使用されている。ティノコス語はティノコスの地(訳注5)で好まれる言語である。

政治形態
奴隷制

軍隊
フォンリットの諸都市は最低でもひとつの部隊が駐屯している。彼らの指揮官に隷属していて、その指揮官自身は複数の支配団体に隷属している。パマールテラでは普通のことだが、質のよい馬は輸入を必要とし、騎兵は珍しい。

それぞれの都市国家の支配団体は専門的な護衛隊を保有していて、たいていの場合精選された、自由で、高い給料の支払われている外国の傭兵であり、特殊な魔術に熟練している。

戦場での魔術の大部分は侍従に支援されている少数の強力な魔術師に委ねられている。ほかの魔術部隊は神殿の司祭の少数のグループで構成されている。

宗教
アーファジャーン人の間で最も重要な神性は政治的な導入によるものだが、「輪縄の」ダーリスター(訳注6)である。この神は《強制》の呪文を大司祭であるジャーンに提供し、ジャーンはさらに自分の《強制》下にある者達にこの呪文を提供できる。呪文の効果は投射した者が生きている間持続する。

大地の精霊や、漁業の精霊や祖霊崇拝、都市の神々は数多くいる。強力な宗教は特定の都市ではさまざまな形で国家的に支援されている。サーロ市(訳注7)ではオーランス、エベッシャル市(訳注8)では「見えざる神」、インゴルトゥ市(訳注9)では「兄弟神」(外国人にはフマクトとゾラーク・ゾラーンと呼ばれる)がそのようなかたちで信仰されている。司祭階級は不可避的に腐敗していて、これらの都市の派閥のひとつを占める。

著名人物
アスタマニクス(Astamanyx)
アーファジャーンのジャーン。昔はテシュヴァソロス(訳注10)という小さな都市の支配者に過ぎなかった。彼は反乱の中でカリーシュトゥの資金に支援され、決定的なときには艦隊に支援されていた。

オヴゴルマンギス(Ovgormangis)
公子を自称している。この反逆者はバルエリ(訳注11)、モンドロの未開地帯にある邪悪な慣習で知られる都市にいる。アスタマニクスに簒奪された父のジャーンの位を奪回するため、反乱を扇動している。

エネルガストル(Energastor)
「賢哲女(訳注12)」と呼ばれる。「革新派」の指導的な代表である老女。彼女は彼女の平和と肥沃と解放のメッセージで栄える聴衆の一団がいる、「革新派」の一族の土地をよろめきながら巡っている。

歴史
時の始まりでは、この地域の住民は単なる「青の民」であった。ほとんど忘れられていたアートマル帝国の生き残りであった。彼らは壮大な船を所有し、不具の神々を信仰し、カタツムリや脚のない虫や魚を食べたが、獣や鳥の肉は食べなかった(訳注13)。

500年ごろ、ラスカルの地から北へ移住してきた者たちがこの地に入り込んだ。彼らの指導者である「冷酷なる」と呼ばれるガランゴードスは、青の民の古来の伝統を革新し、古代の儀式を彼らに敵対させ、隷属化に置くか殺した。ガランゴードスは自分の兄弟に殺された。ガランゴードスの十七人の兄弟姉妹たちは兄弟殺しを切り刻んで処刑し、国を自分たちで分割した。それ以来、フォンリットの全土は敵対しあう多くの団体に分割される地域である。

帝国の時代、カリーシュトゥは海上戦略的な重要性から、活動の一大拠点となった。すぐに「中部海洋帝国」がカリーシュトゥの政治と経済を支配するようになり、カリーシュトゥの文化にも影響を与えた。「神知者」の教義にある「自由な者は誰もいない」は奴隷制の意味自体を改変し、地域の奴隷制の伝統をより悪意の少ないものに変えた。今日では、フォンリットの奴隷の一部は蛮族地帯の農奴より自由である。

「大閉鎖」はフォンリットの沿岸を一掃した。942年には、船舶は岸に打ち上げられ、沈没し、波で破壊され、怪物たちに襲われ、魔術で爆発した。カリーシュトゥでは「水柱」が昇り、いっさいの島嶼部と本土との交通を遮断した。そして「川波」は数マイルも海から内陸へ海の敵を入り込ませ、流れ込んだ。944年には「水柱」が発生場所から跳ね飛び、内陸の地域や島々を水浸しにして、死者の艦隊が破壊活動を行い、恐怖を撒き散らした。1112年の「烏賊の週」のようなその他の破壊は継続したが、多くの最悪の暴力は955年には止んだ。

「大閉鎖」の間、唯一の重要な出来事は「イラニアの跳躍者たち」の侵略による大規模な民衆の移住で、特に1320年から1325年の間に顕著だった。地域のルードック族は「イラニアの跳躍者たち」を倒すための島嶼部と本土の重要な情報伝達に寄与した。

1587年、アーファジャーンと同盟したヴァデル人の艦隊がカリーシュトゥを攻撃し、征服した。彼らの支配は短かったが、それは1594年にヴァデル人は「オエンリコ岩礁の海戦」で滅ぼされたからである。

1613年、カリーシュトゥの艦隊は現在のアーファジャーンのジャーンが即位するのを援助した。彼はその後、信頼を裏切り、カリーシュトゥに戦いを挑んでいる。

訳注1:Afadjann:フォンリット北西部、ポイシダ海峡周辺の沿岸地域、フォンリット二大勢力のひとつ。Kareeshutu:フォンリット北東部、島嶼地域、フォンリット二大勢力のひとつ。Banamba:フォンリット南部、ラスカル沿岸。Mondoro:フォンリット南西部。半島の内陸地帯。
訳注2:Tsanyano
訳注3:Bolgaddi
訳注4:Laskal。フォンリットはパマールテラの半島だが、半島と大陸の間の海がコーラル湾であり、対岸がラスカルLaskalの沿岸である。
訳注5:Thinokos。ティノコスはフォンリット東岸の区域だがその住民は文化的にはまったく異なっており、むしろマスロ海沿岸の民と同系である。
訳注6:Darleester the Noose
訳注7:Sarro、後続の地誌の記事を参照
訳注8:Ebbeshal。後続の地誌の記事を参照。同人誌Four Scrolls of Revelationにはこの都市の快楽主義的マルキオン宗派が詳しく描写されている。
訳注9:Yngortu、後続の地誌の記事を参照
訳注10:Teshvashoros、後続の地誌の記事を参照
訳注11:Barueli、後続の地誌の記事を参照
訳注12:Sister Philosopher
訳注13:Peter Metcalfeは第一期のフォンリットにはJraktaliなる混沌に支配される文明があったと考えています。(「グローランサの神々」にはセラーンSelarnのカルトの短い描写にそのような記述があります。Lords of TerrorによるとJraktalは神々の戦いでパマールテラに侵攻した混沌の神です。)私は根拠としては薄弱だと思っていますが・・・