ヘンドリック王5(大いなる跳躍)

ヘンドリックの大いなる跳躍[太陽暦432年]
ある日のこと、一度として同じ場所で二晩過ごしたことのないヘンドリック王が伝言を受け取った。スロントスに大軍が上陸しており、この軍は邪悪な魔術師や無神論者の群れで構成されていて町を襲っているとのことだった。王は言った。

「最高の知らせは敵が互いに滅ぼしあってくれることだ。この知らせは我々を休ませようとする策略に違いない。火を消すのだ。黒い森に戻る。」

その後、王は伝言を受け取った。その異国の軍勢は帝国の同盟者や軍隊だけを滅ぼしている。「悪しき口の」ガガークの率いる魔術師達や軍はこの軍と戦うために去ったということだった。王は言った。

「これは策略だ。すぐに他の敵が我々を悩ますために現れる。我らは徹夜で移動する。」

その後、王は伝言を受け取った。その異国の軍勢はフマクトを信仰する偉大な剣士に率いられていて、彼とともにいるのも、オーランスを信仰する数多くの兵団であるということだった。王は言った。

「我らは今年、敵がいなくて怠惰になった。だが間抜けではない。シンガンは五人の「剣」をもう殺している。馬を換えよ。「泉」に行ってなにが起こっているかよく観よう。」

「エルの泉Er's Pool」で王は「光持ち帰りし者」ハルマストが軍隊の中にいるが、司令官や首席の神官ではないところを見て取った。ハルマストは将軍の卓で「農夫の席」に座っていた。王は言った。

「なぜ誰ももっと早くこのことを私に言わなかったのだ。「剣」を、「槍」を、「投槍」を集めるため角笛を吹き鳴らせ。「ラーンステイの七つの隊」は聖歌を歌い始めよ。そして「跳躍者」デストールニスキス(訳注1)に「隊」に加わるよう言うのだ。」

軍隊が集まると、「ラーンステイの七つの隊」は全軍が「泉」に飛び込んで、「光持ち帰りし者」ハルマストがいるところに着地できるようにした。(訳注2)ヘンドレイキ族の軍勢はナイサロールの騎兵隊を倒す最高の好機に姿を現した。そして「カクストルプローズの合戦」で「不壊の剣」の剣匠アーカットにオーランス神の贈り物である勝利を献じたのであった。「ラーンステイの七つの隊」が消耗で倒れると、十人の「揺り動かす者たちMovers and Shakers」と呼ばれる者たちは、衝撃で固まっており、そうすることを誓っていたオロロストのアリンゴールに殺された(訳注3)。

ヘンドリック王は勝利の栄誉を受け入れたが、アーカットの下に留まらなかった。ヘンドリックは軍隊をエスロリアと「大いなる高原」に導き、そこで彼らは「エズカンケッコの牙」(訳注4)に迎えられた。しかし「クリークストリームの渡し」で、ヘンドリックは部下達と別れ、ホワイトウォールに行って感謝のために犠牲を捧げた。ヘンドリックは自分の民と土地を指導し、守るために南方に向かった。しかし、ヘンドリック王は志願兵がアーカットを支援するために行くのを許した。そして有名なヘンドレイキ族の「緑の槍隊」や、オロトンギや、「ハルマストの子ら」が自分の故郷から遠く離れた地で武功を立てた。

ヘンドリックは故郷に留まった。そしてはるか北方に戦争は去っていき、彼の民は安全だった。ヘンドリックはラーンステイ団を「三度の突撃Three Dashes」のため、一度だけ戦場に送ったが、それ以外はゆっくりして自分の家族や僕たちと過ごした。

「平和の楽しみは私が永遠に求めるものだ。」ヘンドリックは言った。「私はたのしんでいるよ。」

ヘンドリックは自分の家族に囲まれて、寝台で亡くなった。ついには眠って目覚めなかった。ヘンドリックの遺体はラーンステイ団の墓石であるマスターケトMastarketに運ばれて、火葬された。遺体が砕けると、灰は骨壺に入れられて、ラーンステイ団に渡され、彼らなりの処置をおこなった。

[ヘンドリック王の物語 終わり]

訳注1:Destorniskis、ラーンステイ団の者か
訳注2:瞬間移動で軍隊をヒョルトランドからスロントスに移した。消耗しきるのはもっともと言える
訳注3:この記述の意味は不明。オロロストは古代のドラゴン・パス都市。揺り動かす者たちはマーラン・ゴアを想起させる?
訳注4:Ezkankekko's Fang。出来事の内容は不明

Excerpt from Greg Stafford's "Durengard Scroll" in History of Heortling Peoples