ストーム・ブル教徒の心理2

「もうやめろ!」

私は泣き叫びました。しかしカルトの者たちは私の懇願を無視し、さらに深く深く潜っていきました。もうひとたびの襲撃で、この時は人間とブルーが我々を覆う影から共に襲いかかってきました。しかしウロックス・カルトの者はこれらのスライムどもを気安く引き剥がしました。

私はもうこれ以上歩くことが出来ず、前にも後ろにも進めませんでした。パーティーの残りの者が闇深くに消えていくにしたがい、死んだウロックス教徒の遺体の後ろに隠れました。(彼の魂はもはや肉体を必要としませんでした。)私はその後ひどい疲労から眠りに落ちたのだと思います。

(確信はありませんが)眠りはよく言って不安に満ちたものでした。どれくらい長く眠っていたのか知りません。しかし私が目覚めたとき、パーティーは勝利して戻ってきていました。彼らは楽しそうではありませんでした。

その魂がブルの訪れを待つことができるように、ウロックス信徒たちは松明を死んだ英雄たちのために灯していました。私たちは「新たなる幸運への冒険Hazard of New Fortune」に戻り、「光の井戸」という宿屋までブル信者たちに随行しました。(この宿屋は「邪悪なる帝国」への中立性から、「灰の渡しの」ソレンや、そのイサリーズの信徒のお気に入りの宿屋です。)

ウロックス信徒たちは酒を飲み、

「少々居心地が良くなったが、もう一度退治のために戻らなければいけないだろう。」

以外のことはなにも言いませんでした。彼らの顔は悲痛で、目は赤く染まり、多くの者が絶え間なく咳をしていました。ブル信徒たちが言うには、

「俺たちの病気は動機ではなく、流儀に過ぎないのだ。」

実際、その時私が感じたのは、彼らは初めてドラストールに入った時となんら違って見えないということでした。私は自分の「光持ち帰りし者」としての祝福を利用してその地域のチャラーナの女祭を呼びましたが、女祭からは、なんら病気は見られないとの話でした。

ブル信徒たちのためにさらにエールと食べ物を注文し、温まった胃の腑や軽くなった頭で、私の質問に対して口を開く気になってはくれまいかと希望しました。言わせていただければ、効き目はありましたが、狂戦士たちはいまいち反応しませんでした。

嬉しいことに、彼らは自分たち個人個人の異なる種類の混沌を感知する能力について話しました。これらの混沌の種類について特に挙げるべきなのは(マリアやセッドの信徒から成立する)「熱病の混沌Feverchaos」、(「渇きの森」や、ドラストールの「裂ける毒ガス」や「雨雲避けの毒」から成立する)「裏切りの混沌Betraychaos」、そして「変容する混沌Shiftingchaos」です。一番最後のものは混沌の諸相を持っている「赤の月」の信徒たちや、グバージを信仰するブルーのような、あいまいで陰険な混沌のための用語です。

これらの感知能力は肉体的に、時には感覚的に彼らに影響を与えます。ある者は強烈な痛みを古傷に感じますし、他の者が感じることのない、ものを見たり、臭いを感じたり、聞くこともあります。最悪の「感知」は肉体から来るものです。ウロックス信徒には特定の種類の混沌から、責めさいなむような痛みを受ける瞬間があるのです。

したがって、ウロックス信徒は想像しがたい心の底からの本能的な激怒に駆られます。カーンたちにとって、痛みは触媒であり、単純で荒々しいが、効率的なストーム・ブルによって授けられた魔術なのです。私はストーム・カーンに尋ねました。

「新しい種類の混沌に遭遇したらなにが起こるのでしょうか。」

答えはぶっきらぼうなものでした。

「そいつは学び、記憶するだろう。そいつにはそれが混沌だということは判るだろうが、その形を把握することはできないだろう。しかし、混沌が深い傷を負わせれば、そいつは憶えるだろう。ブルの御名において、そいつは忘れないだろう。」

つまり混沌から受けた苦境や、被害や、傷にもよりますが、信者は流血する傷を受けるかもしれないし、四肢の切断を思い出すかもしれません。彼らの感知能力はウロックス神から信徒に課せられた、生の、思考能力を必要としない欲求なのです。

数時間の緊張した対話を続け、宿屋に居る者たちからの不安な、時には非難に満ちた視線を受けた後、私は出発を決めました。ブル信徒たちの哲学は私が元考えていたような、粗野で無感覚なものではなく、彼らが悲劇的な人格であると考えている自分に気づきました。

実際、私は彼らが巣穴の中に私を見捨てていったことを許していました。そして彼らの流儀について知る特権に恵まれたと考えたのです。そこには私が期待していたような、共感はなんらありませんでした。そして私にはその理由がわかっていました。彼らが自らに強いている退行は、実際彼らをトロウルの胃袋の強さに変えているのです。

「混沌は絶対的なものだ。」とは私が帰還のため、出発しようとした時に聞いたストーム・カーンの最後の言葉です。

「赤の月の連中はあまりにも何度もエントロピーの力をいじり回してきた。こんなことは誰にも許されない。世界はものすごい速さで堕落している。「恐怖の王たち」が急速に虚無の果てから世界へと近づいてきている。」

「俺は俺の命のために恐れ、俺たち全ての者のために恐れている。それでも俺はあらゆる混沌の顕現を滅ぼすことを止めないだろう。たとえ混沌が俺の人生のいかなる時にもつきまとおうとも。」

私が宿屋から歩み去ると、ものがぶつかる音とテーブルがひっくり返されたようなカタカタいう音が響き渡りました。その後、剣が鞘から抜かれる音を聞きつけました。

私は別れた仲間たちが彼らなりの非友好的な流儀で、自分の面倒は自分で見られるという知識から、安全であると信じて去っていきました。私の想念は嫌悪や反感に根ざしたものではなく、敬意や、むしろ豊かな賞賛の気持ちに由来していました。

数日後、私はフォーベックからあのストーム・カーンと配下の者たちが件の宿屋と、そこで飲んでいた者全員を壊し、ぶちのめしたことを伝えられました。私の同僚がうろたえたことに、私は声高く笑いました。そして神の無法なる子らのために、ストーム・ブル神に感謝を捧げました。

この文書を「思念の王」ならびに不屈なる「砂漠の嵐の神」の名の下に保証いたします。記録が保たれますように。