不変の書と預言者2

下記はWorldofGlorantha Mailing Listにおけるやり取りの抄訳です。Jamie "Trotsky" RevellはHeroes of Malkionの著者です。Peter Metcalfeはグローランサ知識のグルのひとり。翻訳の責任はzebにあります。[]内はzebの意訳です。

Terra(zeb):最近、日本のファンの間で議論が持ち上がっています。マルキオン教の預言者についてです。

下記のグレッグの2007年1月[間違い:本当は3月]の発言を見てください。

「したがって私はロスカルムのイレンサヴァル[Irensaval、ロスカルム人の至高神]の信徒が「不変の書」を拒絶していることを、ドラゴンパスにフィンブルの冬が来た[初版のドラゴン・パス年代記King of Sartarに記述のない、Orlanth is Dead!の出来事]ことや、その他もろもろの変更と同じように見出したのである。」


三つの質問が出ました。
Terra[質問1です。]:第二期の神知者はフレストルを預言者と認知していたのでしょうか?(不変の書にはフレストルと「喜び」について言及がありません。)MRQの設定では、フレストルは神知者の預言者と書いてありますね。


Jamie:私が知る限りでは、神知者はフレストルを預言者と認めていました。−もしくは少なくとも彼をたわごとを言う異端の輩とはみなしていませんでした。イレンサーヴァルの信者は彼らのようではなかったが、全てのフレストル信徒はイレンサーヴァルの信者ではありません。

Terra:むむ、よく分かりません。第三期のロスカルムの民は新フレストル派で、イレンサーヴァルの信者ではないのですか。彼らの預言者はマルキオンとフレストルでは。

Jamie:ロスカルム人と[ジュノーラの]「純潔教会」は両方ともイレンサーヴァル信者で、フレストル派でもあります。城塞海岸の民はフレストル派ですが、イレンサーヴァル信者ではありません。ゆえに、「中部海洋帝国」はイレンサーヴァル信者(現代のロスカルム人の祖先)を好みませんでしたが、全てのフレストル派を憎んでいたわけではありません。(彼らの多くは現代の城塞海岸の民の祖先です。)

Jamie:フレストル自身がイレンサーヴァルの信者ではありませんでした。イレンサーヴァルの信仰はトマリス[Tomaris]に始まります。Lord of the West:Volume 2が出版されれば、ロカール派に敵対する異端のリストが載っています。二分類があり、フレストル派異端とフロネラの地の異端(イレンサーヴァル信仰を意味する)は同じではありません。−しかしロスカルム人は両方の範疇に入ります。

Jamie:貴方が「新フレストル派」の語にロスカルムの「理想主義派」を意図しているのなら、ロスカルム人は全員イレンサーヴァル信徒です。これがロスカルムの宗教の真髄です。

Terra:我々が混乱しているのは「第二期」の正道への回帰運動[Kionvara Movement、「正しき力」の運動]が「十字軍」の儀式を、暗黒帝国と戦うために用いたことです。

ジルステラの「回帰運動」の支持者は「不変の書」の原理主義者でした。宗教の狂信者が「本に載っていないこと」を用いることを冒涜だと考えなかったのでしょうか。

Jamie:常に誰かが反対する可能性はあります。見方を変えて言えば、不変の書が特定してフレストルのことを非難しているわけでもないのです。解釈の自由が存在しました。このことはイスラム教で言う行いの分け方と比較できます。

すなわち「啓示された行い」、「薦められるべき行い」、「認められた行い」、「禁忌」です。[イスラム教の正しい訳語は分かりません。情報希望]

フレストルは第三の分類、すなわち「認められた行い」の範疇に入ります。これはイスラムでは、主にコーランに肯定も否定の意見も書かれていないことに関して引用されます。

彼らは「認められた行い」を好んでいませんが、そういう行いを止めさせるために活動することもありません。

Jamie:「喜び」の教えに敬意を払う神知者の態度は、「喜び」がファーブリス[Ferbrith]、第二の御業の「神」と交流をおこなう手段であったからかもしれません。この行いはマカン[Makan]に正しくしたがうほどふさわしくはないにしても、許容されるべき行いでした。マカンの不変の書における啓示はファーブリスにたいする以前の啓示に優越するものでした。したがって貴方が「不変の書」より秀れた教えを知っていると主張しない限り、貴方は神知者に大目に見られたということでしょう。

貴方が信じる古い預言者の教えはその時代は最良でしたが、後から出てきたより良いものに取って代わられたということで。

Terra;貴方の書いていることは正しく思えます。私の記憶が正しければ、ファーブリスは「第一の御業」の「神」で、「第二の御業」の「神」はキオナ[Kiona]ですが、Middle Sea EmpireとRevealed Mythologiesで記述が違っていたような。

Jamie:いや、私が言いたいのはファーブリスが「第二の御業」を行った「神」であり、つまりファーブリスは「第一の御業」の時初めて現れたということです。したがってマカンこそ「第一の御業」の神ということになるわけです。

[つまり、ActionはNumberが少なければ少ないほど神聖さで優越すると言うことですね。]

Peter:イレンサーヴァルは至高の存在です。彼は他のマルキオン教徒の至高の存在と、プラトンの「創造主」がアリストテレスの「第一の動作者」やストア派犬儒派ピタゴラス派やその他の派の神と異なっているのと同じくらい違っています。

フレストル主義は至高の存在に近づこうとする形而上的信仰で、現実のスーフィ主義に似ています。至高の存在の具体的な実体は大して問題ではありませんが、マルキオン教の教会のいくつかはこの信仰に対して敵対的です。

ロスカルムの国教はフレストル派の教団で、フレストル派の教導の元に、イレンサーヴァルの御許に民を導くという国是を自認しています。


Terra[質問2です。]:ロカール派はより古来の、神知者以前の「より理想的な」マルキオン教への回帰を試みています。しかし、「中部海洋帝国」以前の、彼らにとっての「理想」の歴史上の時代とはなんでしょうか?我々が混乱しているのは、ロカール派がフレストルを預言者と認めていないことです。

Jamie:それは本当です。彼らの見方からすれば、フレストルはなにもかも台無しにしました。彼らはおそらく神知者が十分フレストルを非難しなかったと考えているのでしょう。


ロカール派にとって理想の時代は、「マルキオンがマルコンウォルに追放されて、第五の御業で死ぬまでの[神代の]時代」です。ロカール派が騎士階級を持っているのに、[神代の]マルキオンが騎士階級を持っていなかったのは、ロカール派以外の他の民にとって議論の対象になるかもしれませんね。

Peter:私が思うに論理王国のマルキオン教徒は騎馬の民や騎手がいたようなので、ロカール派の騎士階級はその伝統に由来するのかも。

Terra:ううん、まだ、納得しがたいところがあります。リンドランドの公爵[鉄槌王ベイリフェス]がフレストルの「十字軍」の儀式をアスゴランの戦いで使っているからです。

Arcane Loreの61ページだと、セシュネラのアンマック王が、十字軍の儀式をフレストル自身による対面と審査を受けた者以外に禁止しています。

それとも、ベイリフェスとマードンがアンマックの禁止を打ち破るだけの魔術を使ったのでしょうか。

Peter:もともとのTales誌の記事は、フレストルが論理王国の十字軍の儀式を再発見したと書いてあるので、ロカール派は十字軍の儀式を、フレストルと彼の全ての罪深い行いを断罪しながら用いることができたということでしょう。(フレストルが十字軍の儀式を再発見した事実は、ロカール派の学者をとまどわせ、ロカール派の十字軍の輩の誘惑の種となっているでしょうね。)

アンマックはただの王だったので、ベイリフェス王はアンマックの改革を自分の王の権威の下に拒絶するのに十分なだけの権威を持っていたのではないでしょうか。

Peter:私なら大してこの十字軍の記事は気にしませんね。Arcane Loreは古い記事の寄せ集めで、RQの第三版なみに古い記事から取られたものもあるのですから。

[Jamieも知らないし、大して重要とはみなされていないということですね。日本では事情が違う。アトリエサードのHeroWarsにも十字軍の記事の断片が記載されていました。(121ページ・「訳注:マルキオンとフレストル」)日本のグローランサの異端思想(笑)ということですか]


Terra[質問3です。]:17世紀のグローランサで、ロスカルム以外にフレストルを預言者として崇敬している民族はいますか?

Jamie:もっともよく知られているのは、城塞海岸の「正統主義」フレストル派ですね。ガルヴォスト派や、ジュノーラの「純潔教会」や、その他の群小の教会もフレストルを認めています。

Peter:ヴァデル人。城塞海岸の民。ラリオスの民のいくたりか。フォンリットやテシュノスに十字軍の前哨地が存在しているかも。

古代の伝統にこだわって精進し、やぶれかぶれに援軍を欲しているような・・・・