神代2

・さらに後代の発展

千二百年昔、プレントニウスはアナクシアル王朝の歴史を明らかにした。そして先立つ十万年のイェルムとムルハルツァームの治世をも描写したのである。数世紀もの間、ダラ・ハッパの数多くのカルトのさまざまな啓示は、早期のアナクシアル皇帝の治世に起こったものであり、離船者たち(訳注2)のその後の消息であると見なされていた。

この神話的な歴史の構造が知識人に疑われたり、革命家たちに挑戦されたりすることはなかった。ヴァラーレの啓示ですら、プレントニウスの示した時間的な大枠に挑むものではなかったし、後のルナーの研究による攻撃をも耐え抜いてペローリアの神代における標準的な記録として残った。

ヴァラーレ・アッディのもっとも重要な発見はダラ・ハッパにおいて受け入れられている事実に先だつ、膨大な先史時代に関する啓示であった。ヴァラーレは注目に値する期間、神代における体験をいつごろ自分がしたのか、正確に年数を数えることは無理にしても、適切な時系列として理解しようとした。ヴァラーレが遭遇し経験したその他の神話は、儀式を通じて新たなかたちの前後関係で考えることができる材料をヴァラーレに与えたのである。

ヴァラーレは自然と、ルフェルザ自身と同じく自分の経験が連続した出来事として把握した。そしてもちろん、あとに続いた数百人もの啓発者たちもそのように考えたのであった。

その一方で、多くの「旅人」たちが、「七階梯」がみんな考えているほど、固定されたものではないということをすぐに見つけた。特に、人々は個人個人特有の欲求と傾向、もしくは霊感の形にもよるが、[化身]ラーショラナがほぼあらゆる時に登場していることを心に留めた。

啓発を求めてハーグ(訳注3)へ旅する「旅人」は、そこに通じる道を見つけはするが、「啓発を行う者」(訳注4)は時には自分を示すのに他の仮面を用いるのである。「七階梯」は全体としては従わなければならないが、前後関係において、啓発が起きる場所はさまざまなのである。

ヴァラーレと似て、エティーリーズはもうひとりの「生まれながらの者」(訳注5)で、ルフェルザの道をたどったが、ヴァラーレとは異なるものを見出した。エティーリーズは自分固有の魔術と、技を使ってこのような調査につきものの、恐るべき危険から身を守り、神代を調査するのに役立てた。

ティーリーズ自身が「旅人」たちが通り過ぎる「オロジェリアの避難所」がいつも同じ時にあるわけではないということを見つけた。ルフェルザの狩りの星空における道は、「星の時代」を通っていて、この時代はプレントニウスの区分における「第四の時代」(訳注6)でもあった。この時代は現在の第二千年紀の始まりであり、[大女神]セデンヤの力の強大な渦でもあった。それでも、エティーリーズは時に、神聖なる避難所の周囲にある地に、いかなる以前の文明の痕跡も見つけられないことがあった。

ついには、エティーリーズは、自分がムルハルツァーム皇帝以前の時代にいるということを確信し、意識を持つ以前の状態にある、後にウェンダリアの民として認識された膨大な数の民を見出したのである。ナヴェーリア女神の元の事績は、より古の時代に起こったものと見なされるようになり、その他の神話における啓示も、より古代の出来事と見なされるようになった。

このようにして、初期の探索と発見の熟成によって、副次的ながら規則を持つ、巨大なルナーの年代学が結実したのであった。

訳注1:ペランダ神話。大暗黒を火を熾すことで終わらせた者たち
訳注2:debarkers。洪水のあとアナクシアルの命に従わず、箱舟を早いうちに離れていた者たち
訳注3:Hagu。ペランダ神話。掌で火を熾す者palmsterたちがテュロス神を目覚めさせた霊的な場所。もはや物質界には存在しない。
訳注4:ラーショラナ
訳注5:Natural。生まれながらにして啓発を理解する者
訳注6:「シャーガーシュの時代」。オーランシーの神話体系では「大暗黒」から「銀の時代」にあたる。