バイソスの神話1

ケフ・タヴァルとエス
エススは「緑の女神」アルクの娘でした。ある日のこと、エススが乙女の花輪をつくるために花を集めていると、大きくて美しい雄牛が流れをわたって草を食んでいるのを見ました。その雄牛は輝くようなミルク色をしていて、エススはあまりの美しさに触らざるを得ませんでした。雄牛はとても人に馴れていたのでエススにじゃれました。地面を転がり、エススの手を舐めたのです。雄牛が背中に乗るように求めると、エススはためらわずに受け入れました。エススが雄牛の上に乗るやとたん、雄牛は走り始め、エススの祝福された土地から、遠く離れた地へと逃げました(注1)。

エススの友達は雄牛の背に彼女がいるところを見たとたん、エススの家族に伝えました。エススの兄たちは槍と石をとって追跡に向かいました。しかし雄牛の逃げ先はデディ・ヴァカ・ルの棲んでいるハドゥ・バカ(注2)だったのです。青い肌の民は追跡しようとするエススの兄たちを待ち伏せしていたので、彼らは恥をかいて逃げました。

美しい雄牛は自分の民の中では神である、ケフ・タヴァルKefTavarでした。ハドゥ・バカの中にあるエムフェンデンの島で、ケフ・タヴァルは人の姿になって、エススに言うには、

「あなたを天上から見て、どんな犠牲を払おうとも降りていき、ただ、あなたが真の存在であることを確かめるために触りたいと思いました。」

エススが言うには、

「あなたの行いは美しい、私があなたならば同じことをしただろうと思います。なぜならあなたは今の世でもっとも顔立ちが美しく、価値のある方だからです。」

そして二人はエムフェンデンの島で愛を交わしました。ふたりのおかげでこの場所はユーレーリアの「十七の背中」のひとつとなりました。死がうろついていた時代、愛の女神はこれらの地に隠れたのです(注3)。

ケフ・タヴァルはエススを自分の民のもとに戻しました。エススはそこでその他の全ての女性にまさる扱いを受けたのです。彼女は自らを誇り高く持していて、自分の夫とともに暮らしました。彼女はその地では「牛飼いの女(注4)」と呼ばれる星でした。

ケフ・タヴァルとエススは二人の息子と二人の娘を儲けました。


注1:エススの「緑の原」はウェンダリア(ペランダの古名、オローニン川流域)にあったと思われる
注2:HaduVaka。「冒涜の洪水」。淡水海Sweet Seaのこと。当時は怪物のような神が水底に棲んでいて、青い肌の民(DediVakaRu)を僕にしていた
注3:Seventeen Hideouts。世界中にあるユーレーリアの聖地のひとつという意味か?これらの聖地はどのような地図にも載っていない
注4:Herdwoman。どの星かは訳者には不明。モスカルフ?