グローランサの海洋

下記はTales of the Reaching Moon 10号の記事の抄訳です。翻訳の誤りの責任はzebにあります。

グローランサの大洋Oceans

グレッグ・スタフォード筆

「既知世界」の大部分は水で覆われており、水面には棲んでいるものがいない。しかし、水中には生命が満ちている。

描写
浮かぶ菱形の形状をしたグローランサの大地は、水に囲まれている。古代の大洋「スラマック川」は、世界の外周で常に循環している。スラマックの支流は大地の中に入り込んで、大洋をいくつかつくっている。世界の中心には、「マガスタの渦」が世界の水流を巨大な、底無しの渦潮のように呑み込んでいる。雨雲は大気中を通って水分を運び、天空へともたらし、地面の上に振り注ぐ。幾つもの川がくまなくほとんどの地表を横断している。水は遍在するのだ。

真水を貯える場所は川や湖である。塩水を運ぶ場所は大洋と海である。多くの人がこの二つの語句を互換性を持つものとして用いているが、グローランサでは、より適切な使い方として、「大洋ocean」は水を湛える部分の一部が、底無しであるものだけに適用される。何故なら、大洋は世界の外縁の上をも流れているか,(マガスタの渦のように)虚無へと流れて落ちていくかのいずれかであるからだ。海seaは巨大な塩水の場所で、陸地の海岸を濡らしているが、底無しの領域に直接的な繋がりはない。

大洋と海の多くには潮の流れがあり、「凶運Doom海流」と呼ばれる。この海流はスラマック川から流れ出し、反時計周りに流れがある「マガスタの渦」へ、もしくはその周辺へと向かう。これらの海流は、水の底を大抵の時期は流れているが、時々、これらの潮流は海底から水面まで顔を出し、荒れ狂う。膨れ上がって激怒し、大洋の海面を、水の上に現れる山のように、或は巨大な蛇の背中のように通り過ぎる。このような流れに捕まえられた船はどんなものでも、速やかに「マガスタの渦」へと運ばれる。船の乗員が堅固な意志を持ち、良い指導者がいて、幸運でなければ、脱出不可能である。

神話的歴史(魚人の物語)
水は陸地が現れる前はいたる所を覆っていた。「深淵」の底から現れた賢明な古の諸存在は、創造を繰り返して、自分達の子孫達が充分食物を得て、みずから面倒を見られるようにした。
陸地はスパイク(楔)と呼ばれた「宇宙山」が、海の底から浮かび上がってきたことから始まる。この宇宙の山は「地表世界」を生むまでに巨大になった。この最初の陸地は、完全な立方体の形状をしており(訳注・頂点を真上と真下にして)、「地表世界」へと入り込み住み着くのに適した、釣り合いの取れた正方形の基盤を保っていた。

川が地表を這い回り、大地を潤すために上流へと流れて行った。川は限界のない大洋から力を引き出していて、谷に流れ入り、丘の周りに巻きついた。

陸地は堕落するまでは良いものであった。その後、海は自分の子供達を助けた。混沌が侵入し、世界を破壊すると、「大地」の中心が崩壊し消え去った。世界にある川の全てが自分達一族の源である祖父を助けるために逆流した。海が裂け目を耕し、虚無と邪悪を洗い流した。マガスタは生命を生み出す水で「虚空」を満たした時、世界を救ったのである。

海の水面
グローランサの大洋の海面は、経験に富み、勇敢な者にとってさえ、災いに満ちており、危険である。「凶運の流れ」、海の怪物、敵意ある魚人や、時々現れる海賊などの全てが航海を妨げる。

その上に、グローランサ世界の大洋は中心に向かって傾斜しており、端は皿のようになっていて、さらに急勾配である。船が無事に逃れられる海域は、「帰郷洋」と呼ばれている。「凶運海流」はこの海域でもっともありふれたものとなる。(長らく失われたままのウェアタグ人のドラゴンシップを除けば)どんな船も逃れることが出来ない水域は、「マガスタの渦」と呼ばれる。この渦は凄まじい轟音をあげる渦潮であり、全てのものを中へとのみ込む。渦の底は死者の国にある水の深みである。

海の深み
魚人族は、陸上の民に海の深みについて多くの事を主張する。この世界の事について聞く人々の大部分が、これらの話が余りにも突飛なものであるがゆえに、話を信じない。しかし、魔術的手段によって、確認された事実が幾つかある。また、数世紀の間接触もない、ルードックとアウオリが、同じ事で同じような嘘をつくことの方が信じ難い話である。これらの事実は、最も教養があり、知的な海の生物によって一般に信じられているという事実であるということを銘記するべきである。類似の事実と、裏付けの証拠となる断片が人類に最も友好的な知的種族である、海の精霊、「父なる鮭」や古代ウェアタグ人や、鯨や海豚の何種類かと対話することによって今日まで確認されてきた。

大部分の海の生物にとって、海面の上にある全てが「食物」と呼ばれる。アウオリ族に良く知られた哲学体系によれば、これは、三種類に分類される。水の中に落ちたものである「固い食物」と川から流れ入った残骸や、太陽の光や、船乗り達から捧げられたマジックパワー等である「柔らかい食物」、そして後述する「湿った食物」である。多くの魚人はダーリアスとフラマンスが大洋を創造した後に作られたものは全て、海の民、トリオリーナの敬虔な信者に食べさせるためのものであると信じている。

大洋は、水平面上の層を、光が水の深みを貫く分量により境界とされる。水質の透明さはこの分割法では重要であり、濁った水では光が届く水の層は、浅い所までである。霧の深い海も、概して光を通すより薄い層と、比較的少ない数の生物しか保たない。

上層は、最も生命に溢れており、「上の海High Sea」である。「上の海」は海面に終わる。水の上は、不自然な生物や、卑しむべきウェアタグ人のみが冒険する所である。この層では、食物連鎖が依存している、藻類やプランクトンが繁栄している。そしてここには海の生命の大部分が暮している。その深さは水温と風量、水の暗さと光の量における季節ごとの変化の上でいろいろである。基本的に、空気呼吸する魚人族はこの層の中では、魔術を使ったり、発光現象を利用したりすることなしに、視覚を発揮できる。そのために、この層は「上の海」の層であると確認できる。

この層は光が通る層でもある。グローランサの平均で、我々は100メートルから200メートルをこの層として考える。大洋の海底がこの光を通す上の深度に収まる場合、我々は浅瀬、大陸棚を知っている事になり、アウオリにとってここは「湿った食物」の場所である。ある種の海の生物は、大部分の魚人を含む全ての空気呼吸する生物を「湿った食物」と見なす。大陸は「湿った食物」に取り巻かれており、これらの幾つかの浅瀬は陸地の住民に、これらの海の存在を認識させる付近の陸地を欠いている事で知られる。この領域は非常に生命に満ちており、水の中だけでなく、海底も珍しい生き物が溢れている。珊瑚や、甲殻類や褐藻類、海草と様々な海の生命で覆われているのだ。

「上の海」は人類が想像し得る以上の生命の宝庫である。「神知者」は数百の空気呼吸する海の生物の種類と、数千の魚類と甲殻類の種類、数十から数千もの奇妙な器官を持った粘着質の骨の無い生命体の種類における目録をつくった。

次に続く層は、「中の海Middle Sea」もしくは「ナイアードのNiiadic海Sea」である。水の世界においては、この領域こそが「普通の」場所である。それにもかかわらず実際、大部分の魚人はこの領域を信仰のために訪れるのみである。この区域は上層から来た全ての「食物」が目指す場所であり、ここから生物は神々や精霊達に食べられるためにのみ、降下して行く。この深さの範囲は「上の海」の底辺(100メートルから200メートルに始まり、)1000メートル付近で終わる。

最後の層である底知れない奈落は、「深淵The Deep」と呼ばれる。この領域は光が無く、未知の世界であり、海の秘密を保っている。ここにはウンディーヌ王や、トレイナ等、偉大なる精霊達がいて、ニーラットやワチャーザ等、神々や女神もいる。そして彼等に仕えるトリトン族がいる。マガスタやマンシー、ナテイアと、偉大なる神々のみが、真に理解し難い神々の存在する「到達不可能の水」における神秘的な奈落へ向かう、ここよりもさらに深い所の秘密を握っている。

大洋の魚人族
魚人族は七種族グローランサの水界に住んでいて、自分達自らを「七種の血族Kindred」達と呼んでいる。彼等の能力値は別の場所(グローランサ動物誌Glorantha Bestiary)に記述されている。彼等の様子と分布は以下に簡単に説明する。

ドゥエルラン:この生物については良く知られていない。全ての魚人族の中で身体的に最小である。ある学者達は彼等が全く「七種の血族」に関係なく、何か異なる種類の悪意ある海の生物であると主張する。この学者達に拠れば、七番目の「血族」に該当するのは青エルフ族(訳注・マーソイ)だとする。ドウェルランは「蟲の海」にのみ住んでいる。

グナイドロン:巨大な怪物のような魚人族。全ての大洋の奈落に近い深みに住んでおり、海面に出てくる事は稀である。大部分の船乗りはこの存在を海の怪物であり、魚人族と考えない。しかし彼等の部分的に人間型の上半身や明らかな知性により、学者達は彼等を魚人族に分類する。

ルードック:二種類の「大種族Kindred」の一つ。彼等は時々人間と協調し合い、明白に敵意を見せる事は稀である。彼等は非常に広範囲に住み着いており、マスロ海、マーシノ海、トガロ洋に棲んでいる。「東方諸島」やディナル沿岸には二つのよく組織されたルードック魚人族の王国がある。

マラスプ:二種類の「大種族Kindred」の一つ。彼等は大抵水面に住んでいる生物には敵対的であり、巧妙に欺こうとしたり、沿岸諸国に正面から攻撃を行おうと企む。彼等は大部分、「茶色の海」とダショーモ海に住んでいる。

アウオリ:セイウチの種族。彼等は太って弛んだ皮膚を持った魚人族で、驚くべき事に人類に友好的であるが、酷く秘密主義でもある。彼等は「西方洋」とバンザ海にのみ住んでおり、この水域ですら滅多に現れない。

イサッバウ:忌わしく醜い魚人族で全ての船乗りを憎んでいる。彼等は全ての大洋に現れるが、運が良い事に滅多にいない。

ザブダマー:奇妙な魔法的生物で、彼等の女性は美しいが、男性は醜い。彼等は「霧の海(訳注・カハール)」から来るが、時たま他の所へも旅をする。彼等は常に「霧の海」を故郷として戻って行く。