ヤー・ガンYarGan1

ヤー・ガンとはペローリア神話でのいわゆるアクマですが、エンテコシアドに散見される神話を読むと、どのようにそういう役割があてがわれるようになったのかいろいろ面白い想像をめぐらせることができます。

嵐の時代は太陽神の死で、天地がひっくり返り、水が大地を侵略した時代でもありました。

青い肌の民は神代・歴史時代を問わずグローランサのあちこちにいますが、種類はさまざまです。

この時代にペランダに侵略してきた青い肌の民は人間と似ていましたが、水の神々の血をもひいていたようです。

その後ヤー・ガンなるものがやってきて、この青い肌の民を征服したのです。

ヤー・ガンは初めてペランダで都市を作りました。そして魔道士Sorcerersを都市に招き、しばしば人肉を食したことになっています。

魔道の民というのは、神教や呪術の文化の民からは魂なき輩ということになるので、どうしても悪役とならざるをえません。

また、いわゆる専門の魔道士というのは無神論者なので、さらに評判は悪くなります。ヤー・ガンの国は論理王国と呼ばれていたとか。

(神話は主観的なものだし、ヤー・ガンを肯定的な意味で崇める民が生き残っていないので公正な意見というものはこの場合存在しません。)

ともあれ、ヤー・ガンはケンデソスKendesosというところに都を作り、周辺の民を奴隷化しました。また、ヤー・ガンは地の底にいる「与え、奪うもの」エストーロEstoroという存在を崇めていたという話が伝わっています。

(こいつが後にカルマニアの悪の神、二元論の闇、ガン・エストーロGanEstotoということになります。しかしこの段階では非常に原始的な荒ぶる神としての側面しか姿を現していません。)

周り中から嫌われましたが憎まれっ子世にはばかるの期間がかなりあったようです。ヤー・ガンは魔法の槍を持っていて投げると百発百中だったとか。ひとにらみするだけで敵を病気にしたとか書いてあります。(Ent P.51-53)

ペローリアのめぼしい神話の多くで、ヤー・ガンをやっつけて箔をつける話がありますので、逆に言えば、それだけネームバリューがあったわけです。

下の例は、ヤー・ガンをやっつけて箔をつけた神々のリストです。

・(ダラ・ハッパ)ウルヴァイリヌス皇帝(Arganum GROY p.29)
・(ウォリオン)バイソス(IvinZoraRu Ent p.82)
・(ペランダ嵐の時代)ジェルノティア(King Blue Ent p.54)
・(ペランダ灰色の時代)レンダーシュ(Kiyargan Ent p.87)

また、ガン・エストーロを敵役とする神話はアリールのオロジェリア神話にもありますので、これもヤー・ガンの神話に含めてよいかもしれません。

それぞれの神話で、ヤー・ガンの役割が微妙に異なっていることを調べるのもなかなか興味深い。

(たとえば、バイソス神の神話ではヤー・ガンは死んで命を与える植物の神としての役割も果たしています。)

ヤー・ガンYarGan2

グローランサの魔道社会=一神教の系譜がはじまったのは比較的あたらしいと考えて良いと思います。(神知者の時代)

現実の世界でも、ユダヤ教キリスト教イスラム教が唯一神を崇める宗教として成立したのは創始者からかなり経過してからでした。

さて、唯一なる神に対置する存在として否定するものがありますが、現実でも敵対宗教のご本尊であることが多い。(そしてたいてい信者は死に絶えてしまっている)

ペローリアの地でこの敵対者に当たる存在がヤー・ガンと言って良いと思います。

ペローリアで一神教ゾロアスター教一神教と呼んでいいかといえば議論がありますが)に近いカルトといえば、カルマニア人の宗教です。

カルマニア人は土着のペランダ人のパンテオンを自分たちの西方伝来のパンテオンに取り込みました。

グレッグ・スタフォードはあまりカルマニアにはタッチしていませんので、ガン・エストーロがガネサタルスGanesatarus、魔王として祭り上げられることになったことは、Nick Brookeの考えが主体になったのでしょうが。

ともあれ、このようにしてカルマニアのパンデモニウムが形成されたのではないかと推測できるわけです。

[参考文献](ルナー・カルマニアの)魔道と苦行