ハロノ・皇帝・イェルムとその死

オーランス人の神話には「火の部族」と呼ばれる敵の集団が登場します。その首領が「皇帝」と呼ばれる存在です。

この部族は歴史時代でいうところのペローリア地方のダラ・ハッパ帝国と同視されていますし、その首領はダラ・ハッパの主神にして太陽神の名前イェルムと同視され、実際同一の存在として扱われます。しかし「皇帝」がイェルムと同じでなかった、もしくはそうと知られていなかった時期というものが存在します。

下記はGlorious ReAscent of Yelmに載っているグレッグの書いたダラ・ハッパ神話とオーランス人神話の習合の記述です。

「再昇天」におけるオーランス
http://d.hatena.ne.jp/illuminate33/20090417/1239985453

(ハルマストの「光持ち帰りし者の探索行」のあとでは実際そのとおりだということです。グローランサのヒーロークエストの現実に対する影響と、グローランサにおける「真実」がなにかというのはここで触れることはしません。)

Esrolia: the Land of Ten Thousand Goddessesによると、エスロリア神話にはハロノ(Harono)と呼ばれる皇帝に近い存在が出ています。エスロリアが神代ヴィングコット族の中心地であったところを考えると、むしろこちらの方が「皇帝」の原型には近い可能性が高いのでしょう。

またオーランス人のオーソドックスな「競い合いContest」の神話だと、「皇帝」はオーランスに武器の勝負で騙し打ちみたいな形で殺されていますが、それとは異なり、戦場でオーランスが「皇帝」もしくは太陽神を討ち取る神話も存在します。これはヒョルト人の神話では「滅火野の戦いBattle of Extinguish Field」と呼ばれています。

推測ですが、戦場で太陽神を討ち取る神話は、ほかの文化圏の影響である可能性があります。ひとつは上述のエスロリア神話で、ノチェットにおける「第二の戦い」でハロノはオーランスとコーディグに討たれたことになっています。

もうひとつはセイフェルスターの神話で、太陽神イーヒルム(Ehilm)を嵐の神エルラト(Erulat)が「戦の中の戦Battle of Battles」で討ち取ったことになっています。

http://moondesignpublications.com/page/safelster-first-age

上記の異型の神話は、もしかするとこのようなほかの文化の神話の影響の所産かもしれません。